監督2作目にして最高傑作

 

 

評価:★★★★★

 

 

名脚本家の橋本忍の「複眼の映像」という著書に、公開当時に「ジョーズ」を野村芳太郎と一緒に鑑賞した後の会話が書かれている。

野村芳太郎が「これからスピルバーグの映画はもう見る必要ないですよ」「ジョーズが最高で、これから先は何を撮っても、これ以上のものはもう出来ませんからね」と言っていたと書かれているが、まさに我が意を得たりとおもった。
 

公開されて50年近く経過した現在でも、自分にとってのスピルバーグの最高傑作はこの「ジョーズ」である。スピルバーグは今日まで多くの傑作・佳作・秀作を監督しているが未だに「ジョーズ」を越える作品を作っていないと思う。

 

 

成功した要因は

・低予算でリアリティのある人工サメの模型を作ることができなったことを逆手にとって、なかなかサメを出さないサスペンスの演出
 

・原作では大きなウェイトを占めていたフーパーとブロディ夫人の昼メロ要素をバッサリ切ってしまった見事な脚本。


原作者のベンチリ―もゲスト出演

 

・ジョン・ウィリアムズの「ゴジラ」を彷彿とさせる単調な旋律を繰り返しながらサスペンスを高めていく印象的なテーマ音楽。
 

・当時は中堅から若手だった主役3人の見事な演技。

 

 

演出、脚本、音楽、演技、すべてがうまく融合した傑作。

 

 

 

 テレビ映画の「激突」で正体不明のトレーラーに追われるという同じシチュエーションの傑作を撮っていたが、本作ではさらに演出力がグレードアップしている。
 

サメを段階的に露出していく演出や、時々挿入されるショッキングな場面(船底から突然現れる死体)、打ち込んだ樽の数や海への引き込まれ方でサメ狩りの状況を説明してしまうなどスピルバーグの演出は監督2作目とは思えない。

 

 

最初の襲撃ではサメの姿どころか血も見せず、サメに引きずりまわされる女性を映すのみ



 

次の襲撃では血飛沫にまみれて沈む子供の姿を、それを見つめるブロディ署長の有名な“めまい”ショット(被写体のブロディは変化せず、背景のみが引いていく)



 

夜のサメの捕獲騒動では壊れた桟橋が追いかけてくるのみでやはりサメの姿は魅せず


 

海開きのシーンでは子供のいたずらのシーンを挟んで、その後のボートに乗った青年が襲われるシーンで初めてサメの姿が映る

 


 

音楽の使い方もうまい。海の中からの視点での撮影でサメの視点の場合はジョン・ウィリアムズのあのテーマ曲を流し、それ以外のいたずらなどの場合はたとえ水中からの視点であってもテーマ曲を流していない。

 

 

有名なセリフ2つ

You’re going to need a bigger boat


 

Smile,you son of a bitch!


 


 

劇場公開時に満員の映画館で鑑賞。

最後のブロディがサメを仕留める大爆発の場面では公開当時の映画館で拍手喝采だった。

 

 

カラー124

 

【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替)ユ二バーサル

【原題・英題】JAWS

【制作会社】リチャード・D・ザナック&デヴィッド・ブラウン・プロ

【配給会社】ユニバーサル

 

【監督】スティーヴン・スピルバーグ

【脚本】ピーター・ベンチリ― カール・ゴットリーブ

【原作】ピーター・ベンチリ―

【制作】リチャード・D・ザナック デヴィッド・ブラウン

【撮影】ビル・バトラー

【音楽】ジョン・ウィリアムズ

【編集】ヴァ―ナ・フィールズ

【美術】ジョセフ・アルヴィス・Jr

 

【出演】

ロイ・シャイダー:マーティン・ブロディ署長

ロバート・ショウ:クイント

リチャード・ドレイファス:マット・フーパー

ロレイン・ゲイリー:ブロディ夫人(エレン・ブロディ)

カール・ゴットリーブ:メドウズ

マーレイ・ハミルトン:ボーン市長

ジェフリー・クレイマー:ヘンドリックス

スーザン・バックリーニ:クリシー

ジョナサン・フィレイ:キャシディ

クリス・レベロ:マイケル・ブロディ

ジェイ・メロ:ショーン・ブロディ

テッド・グロスマン:入江のボートの男

ピーター・ベンチリーTVレポーター