ピーター・セラーズの4役で観たかった!
評価:★★★★★
キューブリックにしては珍しく映像過多にならず、質的にも成功した作品。
<ストーリー>
米軍基地の狂った指揮官ジャック・リッパー准将(スターリング・ヘイドン)がソ連に対する水爆攻撃を命令する。
基地に派遣されていた英国空軍のマンドレイク大佐(ピーター・セラーズ)の説得にも耳を貸さない。
ソ連には核攻撃の報復用の「皆殺し装置」があってこれが作動すると人類が全滅してしまう。
大統領(ピーター・セラーズ)や閣僚、タージドソン将軍(ジョージ・C・スコット)が対応に追われるが、コング少佐(スリム・ピケンズ)の1機が迎撃をすり抜けてしまう。
会議室での前半の部分は少しダレるが、後半の核戦争が起こる前提でどうやって生き残るか、誰を残すかなど、具体的な生き残り案で突如登場するストレンジラブ博士(ピーター・セラーズ)が出てきて、とたんに面白くなる。
ピーター・セラーズはストレンジラブ博士と空軍基地にいる英国のマンドレイク大佐、アメリカ大統領と3役を演じているが、当初の予定では水爆に乗って落ちるコング少佐も演じる予定で当時のパイロットのヘルメットをかぶっているスチール写真が残っている。
このコング少佐もピーター・セラーズが演じて4役やれば面白かったのに。
コング少佐の衣装のスチール写真もあり
Wikipediaに書いてあるピーター・セラーズがコング少佐を断った後にジョン・ウエインへのオファーがあったという話は本当か?
名優ジョージ・C・スコットの百面相も面白い。ちょっとオーバーアクト気味の演技がこの役には合っている。
スターリング・ヘイドンは名演だし、セラーズの代役でコング少佐を演じたスリム・ピケンズも好演でキャスティングは大成功。
ピーター・セラーズの代わりにコング少佐を演じたスリム・ピケンズ
何故か、途中からカーボーイハット
最後、ストレンジラブ博士が車椅子から立ち上がって「総統!私は歩けます!」と叫ぶピーター・セラーズの怪演がすべてを持っていってしまう。「We’ll Meet Again (またお会いしましょう)」は皮肉が聞いている。
言うことを聞かない右手
勝手にハイル・ヒットラー
「総統!歩けます」
当初。ラストは会議室で壮大なパイ投げをして終わる予定で、撮影もされたがボツ。映像はないがスチール写真は残っている。
パイ投げシーンのスチール
素晴らしい最高作戦会議室のセットは「007ゴールドフィンガー」でゴールドフィンガーの巨大なアジトのセットを作ったケン・アダムス。
「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」「バリー・リンドン」「シャイニング」などストーリーを語るよりも映像表現で見せることの多いキューブリック作品にしては珍しく、優れた脚本や俳優の高い演技力で完成度の高い作品。
参考までに、爆撃機の乗務員用の遭難キットの中身は
45口径自動拳銃1丁、弾薬箱2個、非常用圧縮食料4日分、薬品箱1個(抗生物質、モルヒネ、ビタミン、覚醒剤、睡眠薬、精神安定剤)、小型のロシア語会話辞典、聖書、100ドル相当のルーブル紙幣、100ドル相当の金、チューンガム9個、性病予防具一式(!)、口紅3本(!!)、ナイロン製靴下3足(!!!)
モノクロ93分
【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替)
【原題・英題】DR. STRANGELOVE: OR HOW I LEARNED TO STOP WORRYING AND LOVE THE BOMB
【制作会社】コロムビア映画
【配給会社】コロムビア映画
【監督】スタンリー・キューブリック
【脚本】スタンリー・キューブリック ピーター・ジョージ テリー・サザーン
【原作】ピーター・ジョージ
【制作】ヴィクター・リンドン
【撮影】ギルバート・テイラー
【音楽】ローリー・ジョンソン
【編集】アンソニー・ハーヴェイ
【美術】ピーター・マートン
【プロダクション・デザイン】ケン・アダム
【メイク】スチュアート・フリーボーン
【出演】
ピーター・セラーズ:マンドレイク/マフリー大統領/Dr.ストレンジラブ
ジョージ・C・スコット:バック・タージドソン将軍
スターリング・ヘイドン:ジャック・リッパー准将
キーナン・ウィン:バット・グアノ大佐
スリム・ピケンズ:キング・コング少佐
ピーター・ブル:サデスキー大使
トレイシー・リード:ミス・スコット
ジェームズ・アール・ジョーンズ:ゾッグ少尉
ジャック・クレリー:スタインズ
ポール・タマリン:ゴールドバーグ少尉