ゲームの場面は迫力があったが、
日本人の描き方が屈辱的

 


 

評価:★★★☆☆

 

70年年代にテレビ東京で放映されていた“ローラーゲーム”という娯楽スポーツがあった。

東京ボンバーズは大人気で、子供たちはローラースケートを買って、ヘルメットもかぶらずにローラーゲームごっこをしていた。

そんなご時世だったので、この映画は期待が大きかった。

今は無きテアトル東京という超大型スクリーンの劇場で見たがゲームシーンは結構迫力があった。

 

 

 

<ストーリー>

西暦2018年、飢え、環境汚染、人口増加の危機もなく、戦争、犯罪なども存在しない。物質的には満足した人類は、闘争心のはけ口をローラーボールという残酷なゲームに向けていた。ジョナサン・E(ジェームズ・カーン)は、ヒューストン・チームのスーパー・ヒーローだった。

ゲームは鉄フックのついたグローブで重装備した各々10名のプレイヤーで争われる。重さ10キロの鋼球が発射され、そのボールを拾って自チームのマグネット・ゴールにシュートしたとき得点となる。その間、選手はキック、ボディ・ブロー、空手などあらゆるラフな手を用いて敵選手を妨害する。肉が裂けた死傷者がトラックに横たわるのはしばしばという残酷な競技だった。

ジョナサンは最高の待遇を得ていたが、かつて企業の命令によって、妻エラ(モード・アダムス)と離婚させられていた。彼はエネルギー部門の管理者バーソロミュー(ジョン・ハウスマン)にすべてが管理されていることの疑問をぶつけていた。

前々から彼の人気の凄まじさに危惧を感じていたバーソロミューを始めとする管理者たちによって、ジョナサン抹殺の命令が下った。

ヒューストン・チーム対東京チームの試合が、日本で行われた。試合は凄惨をきわめ、ジョナサンの親友ムーンパイ(ジョン・ベック)が倒れたが、試合はヒューストンが勝った。

ヒューストン対ニューヨークの決勝戦は、無制限でお互いが死ぬまで戦わなければならない。死闘の末、生き残ったのはジョナサンただ一人だった。(映画.COMより抜粋)

 


 


 

 

リドリー・スコットの「グラディエーター」を見て、真っ先に思い出したのが、この「ローラーボール」だった。

 

2作品の共通点として

   人気のスポーツ(競技)とそのヒーロー

   過激な戦闘を好む観客

   ヒーロー(人気者)を苦々しく思う権力側の人間

   そして、ヒーローを陥れるために権力側が様々な策略を講じる

舞台が古代ローマ時代と未来世界という違いはあるが描かれている内容は同じような気がした。

 

 

最初のバロック調の音楽を背景に試合の準備を進めていく場面は良かった。

そして、この映画のタイトルのフォントが素晴らしいデザイン。

センスのいいフォントデザイン  
 

 

黙々と試合の準備が進められていく

 

 

 

CGが無い時代で体を張った演技とスタントは迫力があった。

 

10キロの鉄球が射出されてゲームスタート

 

 

 

ラフプレイもOK

 

 

負傷退場するとランプが消える

 

鉄球インでポイント

 

 

 


最後の試合は壮絶(死屍累々)


 

 

満身創痍で生き残ったジョナサン


 

ゲーム以外の場面が長くて暗い。

単純な娯楽映画にしたくなかったのかもしれないが、権力側にもホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、リチャード・ハリスなどを配置して権力側の葛藤や悩みを描けていた「グラディエーター」に比べると、ジョン・ハウスマンという実力派俳優をキャストに迎えていてもこの試合以外の場面はうまく描けているとは言えない。


重鎮ジョン・ハウスマン
 

 

印象に残っているのは主人公のジョナサン(ジェームズ・カーン)と社長(ジョン・ハウスマン)がジョナサンの引退について話し合っているシーンと並行して描かれる、パーティに参加しているセレブな人々が野外で大木を銃で撃って次々と燃えあがる大木を見て笑っている場面。この無邪気に気が燃える様子を楽しむ人々の娯楽や欲求不満のはけ口としてローラーボールというゲームがあるのだ。

 

 

木を撃って燃やして喜ぶ人たち
 

 

しかし、日本人がこれほど屈辱的に描かれている映画も珍しい。

背が低いことを散々馬鹿にされる、激しいスポーツなのに何故かメガネ。格好悪さの極みのユニフォーム(わかりやすい黄色)、貧相な応援(空手スタイル、安い旗や鉢巻き)、帽子の風の刺繍(神風)、和室サウナの割烹着の服のマッサージ嬢(ソープランド?)、空港や会場内で柵に群がる民衆はまるで檻に入った動物のよう。

 

檻の中の動物のような日本人


ザ・ソープランド

 

着物もどきのデザイン


「風」は神風?
 


眼鏡率高し。激しいスポーツなのでコンタクトレンズにした方がよいのでは


ジョナサンの相棒のムーンパイに対するラフプレイ(完全に悪役!)


タイトルロゴの恰好よさと対極の手書き感満載の“ゴール”
 


 


 

 

ファッションや建物のデザインなどもいかにも70年代から見た近未来で貧困なのが哀しい(設定の2018年はとっくに過ぎてしまった・・・)

 

間取りが悪そう

 

 

このパーティシーンのファッションセンスは笑うしかない

 

 

ジェームズ・カーンは単なるアクションスター以上の演技を見せていて好演。

モード・アダムスはこの当時007などでも人気があったが、モデルとしては一流だったかもしれないが、女優としては演技力も存在感も今一つだった。

 

キャリアのピーク時のジェームズ・カーン


演技力もなく個人的にはビジュアルも魅力ないモードアダムス
 

 

 

 

 

カラー125

 

【鑑賞方法】ブルーレイ(字幕)キングレコード

【原題・英題】ROLLERBALL

【制作会社】アルゴンキン・フィルム

【配給会社】UA

 

【監督】ノーマン・ジェイスソン

【脚本】ウィリアム・ハリソン

【原作】ウィリアム・ハリソン

【制作】ノーマン・ジェイソン

【撮影】ダグラス・スローカム

【音楽】アンドレ・プレヴィン

【編集】アントニー・ギブス

【美術】ジョン・ボックス

【衣装】ジュリー・ハリス

 

【出演】

ジェームズ・カーン:ジョナサン

ジョン・ハウスマン:バーソロミュー

モード・アダムス:エラ

モーゼス・ガン:クレタス

ラルフ・リチャードソン:ライブラリアン

パメラ・ヘンズリー:マッキー

ジョン・ベック:ムーンピー