個性が異なる2大スターの競演

 

 評価:★★★★★

 

公開当時、アクション・スターのイメージが強いスティーヴ・マックィーンと個性的な演技派俳優のダスティン・ホフマンの共演は意外だった。

 

二人のフィルモグラフィーを見ると全く異なる経歴を歩んでいることがわかる。

 

スティーヴ・マックィーンは1960年代前半に「荒野の七人」「大脱走」などで頭角を現し、60年代後半には、西部劇スターの印象を決定づけた「ネバダ・スミス(1966)」、アカデミー賞にノミネートされた「砲艦サンパブロ(1966)」、カーチェイスで有名な「ブリット(1968)」、意外にスーツも似合った「華麗なる賭け(1968)」と映画スターとしてピークに達するが、ニューシネマの時代になると数年間は作品に恵まれず、この前年のサム・ペキンパー監督の「ゲッタウェイ(1972)」でやっと復活したばかりだった。

 

キャリアのピーク時のマックィーン(格好いい)

 

一方、ダスティン・ホフマンはデビューが遅く、「卒業(1967)」で主役を演じたのは30歳、小柄で二枚目でない個性派俳優はマックィーンと異なりニューシネマの波に乗り「真夜中のカーボーイ(1969)」で「卒業」に続いてアカデミー賞にノミネート。その後も「ジョンとメリー(1969)」「小さな巨人(1970)」と作品ごとに異なる役柄に挑戦し人気が急上昇、そしてホフマンも1971年に「わらの犬」でサム・ペキンパー監督作品に出演している。

 

 伊達メガネでなく、ちゃんと遠視の度が入った眼鏡  をかけているので、目が大きく映る 。(刑務所ないで賄賂が効いて待遇が良くなると眼鏡もグレードアップしていくところが細かい)
 

ともに1970年代前半にサム・ペキンパー監督作品で主役を務めた二人だが、あまりに異なるキャラクターを演じてきており、“二人の共演がうまくいくのか?”と鑑賞前は不安もあったが、二大スターの共演は成功し作品自体も大傑作だった。

 

 

意外だったのはマックィーンがホフマンと対等以上に好演していたことで、老けの演技もよかったし、ホフマン扮するドガとの友情も泣かせる。

もちろん、脱走劇ならではのアクション・シーンも魅せてくれる。


 

この作品で演技的に頂点に達したマックィーンは次作の「タワーリング・インフェルノ」で宿命のライバルのポール・ニューマンとの勝負にも勝ち、真のNo.1スーパースターとなったが、その後は持ち込まれた「地獄の黙示録」や「遠すぎた橋」などの大作を蹴って「民衆の敵」「トム・ホーン」「ハンター」という地味な3本の作品を残して若干50歳で癌で亡くなってしまったのが残念。

 

対するダスティン・ホフマンも強度の遠視のメガネをかけて常に口が半開き、最後の老境では頭のてっぺんが禿げ上がり、およそ従来の映画スターでは考えられない役作りだった。

ダスティン・ホフマンはこの作品の後も薬中芸人「レニー・ブルース」、長髪でヘビースモーカーの新聞記者「大統領の陰謀」、陰謀に巻き込まれるマラソンランナー「マラソン マン(1976)」などを演じ、1979年の「クレイマー、クレイマー」でアカデミー賞を受賞する。

 

ダスティン・ホフマン七変化


左上から「卒業」「真夜中のカーボーイ」「小さな巨人」「レニー・ブルース」

「パピヨン」「大統領の陰謀」「トッツイー」

 

 

 

<ストーリー>

胸に蝶の刺青があることからパピヨン(スティーヴ・マックィーン)と呼ばれる男が殺人罪でギアナの刑務所に収容される。

収容所へ移送される囚人たち

 

船で脱走不可能な島に遅られる

 

 

そこには偽造犯で金持ちのドガ(ダスティン・ホフマン)もいた。

パピヨンは不屈の闘志と体力で脱走を試み、ドガは金とコネで何とかこの地獄から脱出しようとしている。
 

パピヨンは脱走資金調達のためドガのボディガードを引き受ける。

ドガを殺そうとした囚人をナイフで倒して罰を受ける

 

ドガの賄賂で軽労働に回してもらおうとするが、あいにくドガの偽造犯罪の被害者が看守にいて重労働に回されてしまう

 
 
そしてここから、パピヨンは脱走に次ぐ脱走、決してあきらめない。

 

脱走先で出会う個性的な人たち


同性愛者のマチュレット

 

船に案内してくれる謎の顔面刺青男
 

ハンセン病患者の集落

 

原住民の集落で半裸の女性といい雰囲気

 

 

脱走して捕まると2年間、独房に入れられる。


before

空腹でゴキブリも食べてしまう

 

after

 

 

その後、ひたすら脱走を繰り返しては捕まり、最後は激しい潮流のために脱走不可能と言われる悪魔島に送られる。

悪魔島で年老いたドガとの再会をはたすが、パピヨンの脱走への執念は衰えていなかった。

すっかり爺さんになってしまった2人

 

 

 

暑苦しく不衛生なジャングルでの過酷な労働、囚人同士の友情や争い、脱走シーンのスペクタクル。まさに男の熱気ムンムンという感じだった。

 

ドルトン・トランボの反骨精神にあふれた脚本、フランクリン・J・シャフナーの重厚でリアリズム重視の演出、刑務所の見事な再現セット、有名なジェリー・ゴールドスミスの美しいメロディと多くのすぐれたスタッフ、キャストによって永遠の名作になった。

 


 

ブルーレイのメイキングでは撮影時は存命だった原作者のアンリ・シャリエールも登場。

撮影中はまだ存命だった。

 

 

老けメイクは結構、アナログ的でした。

 

 

 

そして、いろいろご指摘のあるラストですが、私はヤシの実の袋の下にダイバーがいるなんてことはないと信じています。(どうしてブルー系の服を着なかったんだ!)


 

 

【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替)キングレコード

【原題】PAPILLON

カラー151

 

【制作会社】レ・フィルム・コロナ

【配給】東和

 

【監督】フランクリン・J・シャフナー

【脚本】ダルトン・トランボ

【原作】アンリ・シャリエール

【制作】ロベール・ドルフマン フランクリン・J・シャフナー

【撮影】フレッド・コーネカンプ

【音楽】ジェリー・ゴールドスミス

【編集】ロバート・スウィンク

【美術】アンソニー・マスターズ

 

 

【出演】

スティーヴ・マックィーン:パピヨン

ダスティン・ホフマン:ルイ・ドガ

ロバート・デマン:マチュレット

ウッドロー・パーフリー:クルジオ

ドン・ゴードン:ジュロ