娯楽映画の王道を行く楽しい映画

 

 

評価:★★★★☆

 日本では珍しいミュージカル映画の成功例。

東京オリンピックの年に公開されているので、劇中に東京オリンピックのポスターや完成して間もない首都高速道路も出てくる。


後方に東京オリンピックのポスター


 

完成して間がない首都高速の下を歩くフランキー堺と高島忠夫

 

 

 

 

日本の映画の観客動員数はピークを過ぎていたが、60年台前半の東宝娯楽映画は面白い作品が多い。

 

 

<ストーリ>映画.comより抜粋

今日も朝から牛乳一本でハッスルしているのは、出世のためならどんなことでもするガッチリ型の山川(フランキー堺)だが、同じ独身寮にいる中井(高島忠夫)は、そんなことより朝寝坊をした方が性に合うのんびり型のサラリーマンだ。この二人の勤める東和観光は、ライバル会社極東観光を押えて、オリンピックムードに便乗しようと必死だ。社長(益田喜頓)が、外遊するという話を聞いた山川は、自己のPRの絶好の機会と、万才屋なる奇ばつなアイディアを出した。景気の良い歌と踊りの見送りに、大よろこびの社長は、宣伝効果満点と羽田を発った。一方中井は、“若い頃、世話になった恩人の令嬢へ”と社長から頼まれて、紅子(浜美枝)のアパートへ訪ねたが、彼女が社長の愛人と知って驚いた。そんな頃山川は、サラリーマンが出世するには三つの方法がある。第一条は社長の娘と結婚すること、第二条労働組合の幹部になること、第三条社長の弱味を握れ、と中井を尻目に、出世戦術に忙しい。そんな時、社長と一緒に、娘の陽子(雪村いづみ)が帰って来た。アメリカ流の合理主義を説く美しい陽子の出現に、早速山川は、お茶漬屋の田舎娘の良子(中尾ミエ)はそっちのけで、陽子の御気嫌とりに夢中だった。しかし陽子の目にとまったのは、純情でロマンチストの中井であった。ビジネス中心主義の陽子の心に、いつか恋がめばえていった。極東観光との競り合いも、泥試合になりそうな東和観光では、あいかわらず山川がハッスルしているが、いまや、陽子と結婚ムードの強い中井の方が、サラリーマン出世作戦のレールの上にのりそうな気配だ。

 

 

フランキー堺が起床してから出勤するまでをテンポよく描く冒頭から楽しい。この頃のフランキー堺は太めの体に似合わず動きが軽快。フランキー堺の部屋のギミックも面白い。壁に収納するベッド、つり革は出てくるし、ほかにも面白い収納がたくさん

 

部屋にはエキスパンダーやつり革がある

 


ドアが前開きスタイルの「てんとう虫」ことスバル360が可愛いい。

 


 

この後にタイトルが始まるが、道路の落書きをフランキーの車のイラストが進んでいく所にスタッフ、キャストが書かれていたりしてこのタイトルもセンスがいい。

駅に向かってバラバラの字が進んで駅前で整列
 

 

ミュージカル場面は邦画とは思えないほど完成度が高いが、集団で踊る場面でのやや統一感がなく動きがバラバラなのが惜しい。

 

大人数だとちょっと動きがばらつくのが惜しい

 

 

あとフランキーの踊りが腕を下に突き出すパターンばかりなのも、もったいない。(あれだけ動けるのに)

フランキー堺の踊りはこのパターンばかり

 

 

 

圧巻は8分間にわたって東和観光のオフィス内で繰り広げられる「アメリカでは」

広いオフィス内を大勢が踊りながら、いつの間にかオフィスの模様替えを行い、どんどんカラフルになっていくのが面白い。

 

 

 

 

ここでの細かい演出は圧巻

 

フランキーの灰皿ドラム


 

机と椅子が片付けられた後のお約束コント

 

出前持ちのバク転

 

 その他、雪村いづみがホテルの部屋で唄う場面での鏡を使った効果や、その後、ホテルの庭で雪村いづみが「アメリカでは」、高島忠夫が「タクラマカン」を掛け合いの形で歌うシーンで最後は雪村いづみが「タクラマカン」を歌う形で高島忠夫に恋する心情を表現しているところもうまい。最後に恋が芽生えた二人に炎がかぶる粋な演出など見どころがいっぱい。


 

 

舞台となる観光会社のオフィスやフランキーや浜美枝の住んでいる部屋、中尾ミエの働く居酒屋など村木忍による美術セットのデザインが素晴らしい。

 

 


 

 

 

 

主演は動きがキレッキレッのフランキー堺と東宝娯楽映画では宝田明にならんで若手の主役級だった高島忠夫のコンビ。

 

ヒロイン役の雪村いづみは、歌はうまいしセリフ廻しもハッキリしているし、アメリカ帰りのやり手というキャラクターも合っているのだが、中尾ミエのキュートさと浜美枝の美しさにちょっと食われ気味。

 

中尾ミエは決して美人ではないが愛嬌のある田舎娘に扮しキュート

キュートな中尾ミエ


後にボンドガールとなる浜美枝はゴージャスな美人でこの頃から日本人離れしている。

眼福の浜美枝


踊る姿もキマッテル

 

 

なんでも語尾に「さ」がつく有島一郎は絶妙のタイミングでボケが入り、靴を踏まれた時の足を抱える動きが意外に若い。益田喜頓は服装がおしゃれで中盤で見せるステップも軽快。この2人のベテランは最高の演技。

おしゃれで踊りが上手い益田喜邨

 

植木等のゲスト出演は楽しいが、このシーンがなくても十分に面白いので不要だと思う。

 

 

 

 ラスト、フランキー堺、高島忠夫、雪村いづみ、中尾ミエの4人が飛び上がってストップ。THE ENDが出てからの落下する終わり方も良い。

 

こんな楽しくて元気がもらえる映画も珍しい。


 

 

【鑑賞方法】DVD 東宝

【英題】YOU CAN SUCCEED TOO

カラー100

 

【制作会社】東宝

【配給】東宝

 

【監督】須川栄三

【脚本】笠原良三 井出俊郎

【制作】藤本真澄

【撮影】内海正治

【音楽】黛敏郎

【編集】黒岩義民

【美術】村木忍

 

【出演】

フランキー堺:山川善太

高島忠夫:中井剛

雪村いづみ:片岡陽子

有島一郎:大森課長

浜美枝:服部紅子

中尾ミエ:三田良子

藤村有弘:東和観光総務部長

ジェリー伊藤:マクレガー

益田喜頓:片岡信吾

沢村いき雄:バジャール

十朱久雄

宮田羊容

二瓶正也

植木等(クレジットなし)