リアリティのある淡々とした描写が怖い
評価:★★★☆☆
ケネディ暗殺事件を扱った映画では1992年に公開されたオリバー・ストーンの「JFK」が有名だ。
「JFK」はエンターテイメントとしては楽しめる作品だったが、陰謀側のトミー・リー・ジョーンズやジョー・ペシらがいかにも“魑魅魍魎”という感じだったのと、原作者のジム・ギャリソンと監督のオリバー・ストーンの熱意や主張が前面に出すぎていてあまりリアリティを感じられなかった。
「JFK」の20年ぐらい前、同じテーマを扱った作品があった。
本作「ダラスの熱い日」の主演で陰謀側の人物を演じるのはバート・ランカスターとロバート・ライアンで、両者ともいぶし銀の演技派で本当の諜報機関の黒幕っぽい雰囲気。
バート・ランカスターは眼鏡をはずして目ヤニをふき取るしぐさが多く、髪の毛の天然パーマぶりがすごい。
クセが強すぎる「JFK」のトミー・リー・ジョーンズとジョー・ペシのコンビよりも、バート・ ランカスターとロバート・ライアンのコンビの方が、いかにも知的な策略家という感じでよかった。
その他に、石油王にウィル・ギア、狙撃チームのリーダーにエド・ローターが出演している。
寝癖が凄いバート・ランカスター
実生活では超リベラルな思想を持つと言われているロバート・ライアン
ロバート・ライアンのセリフで「20年後の人口は70億で、ほとんどが茶色か黄色か黒だ。彼らは飢えているが愛し合う。子孫がヨーロッパ、北米に群がる。ベトナム戦争以後は南アジアは我々が制御できる。20世紀末には人口を5億5千万人にできる。」というのがあったが、この恐ろしい白人至上主義!
脚本は赤狩りで有名な「スパルタカス」「パピヨン」のダルトン・トランボ。
暗殺の準備の描写も淡々としていて、実際のモノクロのニュースフィルムを違和感なくうまく取り入れているので半分ドキュメンタリーのような感覚で見れる。
カラーのオズワルドは別人でソックリさんなので顔が違っていても違和感がないところも上手い。
オズワルドのしゃべり方を真似して、印象操作のためにビラ配りや、銃砲店・中古車屋・射撃場でわざと目立つトラブルを起こすソックリさん
射撃チームの訓練、写真の合成、聖書を使った暗号の解読、狙撃場所の下見など、わずか90分程度だが見ごたえがある。(ちなみに「JFK」は188分、特別編終盤は206分!)
写真の合成
聖書を使った暗号解読
狙撃場所の下見
ヘラヘラ笑いながら、全く供述調書の記録がないと言いきる地元警察巡査部長の無能ぶり(あるいは故意)も恐ろしい。
オズワルドの受け答えの方がよっぽど知性的。
昔、テレビで見た時に最後の関係者の多数の不審死のナレーションが怖かったのを覚えている。
「大統領とオズワルドの死後3年間に重要証人18人が死んだ。--(中略)-ロンドン・サンデー・タイムズの専属の某保険計理人の統計では、暗殺を目撃したこれら全ての人々が67年2月までに死亡する確率は10京分の1と計算した。
心臓発作を起こしたバート・ランカスターが、ケネディ大統領が死亡したパークランド病院に運ばれて息を引き取る皮肉な結末も印象的。
隠れた名作
【鑑賞方法】配信(字幕)
【原題】EXECTIVE ACTION
カラー91分
【制作会社】ナショナル・ゼネラル・ピクチャアズ作品
【配給】ヘラルド
【監督】デヴィッド・ミラー
【脚本】ダルトン・トランボ
【原作】ドナルド・フリード マーク・レーン
【制作】エドワード・ルイス
【撮影】ロバート・ステッドマン
【音楽】ランディ・エデルマン
【編集】ジョージ・グレンヴィル
【出演】
バート・ランカスター:ジェームズ・ファーリントン
ロバート・ライアン:フォスター
ギルバート・グリーン:ポーリッツ
ウィル・ギア:ファーガソン
ジョン・アンダーソン:ハリディ
エド・ローター:チームAチーフ
ディック・ミラー:チームB狙撃手
ポール・カー:クリス