凄まじい暴力描写で有名なサム・ペキンパー
唯一の戦争映画にして後期の傑作

 

 

 

評価:★★★★★

 

ペキンパー監督にとっては「ワイルド・バンチ(69)」「砂漠の流れ者(70)」「わらの犬(71)」「ゲッタウエイ(72)」「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(73)」「ガルシアの首(74)」と毎年、傑作を連発していた1974年までの6年間に比べ、1975年の「キラー・エリート」以降は「コンボイ(78)」「バイオレント・サタデー(83)」と駄作が多くあまりいい仕事をしていない。

 

そんな駄作続きだった9年間の中で唯一の傑作。

 

 

 

主人公は鉄十字勲章受章の歴戦の勇士でありながら軍隊組織の序列外で仲間とともに戦うジェームズ・コバーン扮するシュタイナー曹長。

 

 

もう一人の主人公は鉄十字の勲章が欲しい見栄っ張りのマクシミリアン・シェル扮するシュトランスキー大尉で、戦場での男同士の行為についても部下にネチネチと同意を求める嫌な奴。

 


 


 

この2人の対立を軸に話が進んでいくが、この2人に絡むサブのキャラクターとして柔軟で部下に理解があるジェームズ・メイソン扮するブラント大佐と冷めている皮肉屋のデイヴィッド・ワーナー(制服の着こなしのだらしなさ!)のコンビもいい

 



 


 

そしてシュタイナー部隊の男たちの汚さが絶品。

  

 


 


 

最初のタイトルから秀逸。子供たちが歌う童謡とアーネスト・ゴールドのエモーショナルが音楽がバックに交互に流れる中、白黒の記録フィルムとスタッフ・キャストのクレジット。最後はカラーになり、やがて主人公であるジャームズ・コバーンの姿がインサートされる。

 

ここからは、スローと血糊とホコリの中でひたすら凄まじい戦闘場面が展開する。


 

途中、負傷したジェームズ・コバーンの野戦病院のエピソードは幻想と現実が入り混じって不思議な印象。

将校たちが野戦病院に慰問に来て負傷兵と握手しようとして両手が切断されていて握手が出来ないエピソードは面白かった。その後、ちゃっかり負傷兵用の食事の肉とワインだけ自分たちが持っていってしまう。この将校たちやシュトランスキーのような上官ばかりなら、ドイツは戦争に負けて当然だ。

 

最後。合い言葉の「デマルケーション(境界線)」と叫びながら、味方の銃弾に次々と倒れていくシュタイナー隊の描写が痛ましい。

 

 

味方を撃ったシュトランスキーの副官に弾を撃ち込む

 

 

ラストは、コバーンの高笑いの中、エンド・クレジットはやはり子供たちの歌声から再びアーネスト・ゴールドのエモーショナルな音楽。

  

 

 

ドイツ軍の軍服のデザインは素晴らしいが、唯一恰好悪いのは独特の形のヘルメット。なんか間抜けに見えるので主役級の俳優はかぶりたがらない。この映画でもコバーンも一回もかぶらない。

マクシミリアン・シェルは将校の軍帽は抜群に似合うが、やはりヘルメットは似合わず、最後の銃の使い方が判らない姿が余計に間抜けに見えて秀逸。

   

 

コバーンが演じるシュタイナーは、自分にとっては「鷲は舞い降りた」マイケル・ケインとならぶ格好いいドイツ軍人役。

 
 

マガジンの交換で空の弾倉を放り投げる場面でスローを使うセンスの良さ

 

瓶を上に上げるワインの飲み方も格好いい

  

 

 

 

銃撃戦のみならず空爆や戦車、砲撃シーンも大迫力

 


 

 

ラストは再びスライドショーだが笑顔の写真が多かったメインタイトルとは対照的に、エンドクレジットは悲壮感ただよう写真が多い

 

 

 

 

 

 

【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替)キングレコード

【原題】CROSS OF IRON

カラー133

 

【制作会社】ラピッド・フィルム=EMI

【配給】コピアポア・フィルム

 

【監督】サム・ペキンパー

【脚本】ジュリアス・J・エプスタイン ハーバート・アスモディ

【原作】ウィリー・ハインリッヒ

【制作】ウォルフ・C・ハルトウィッヒ

【撮影】ジョン・コキロン

【音楽】アーネスト・ゴールド

【編集】マイケル・エリス トニー・ローソン

【美術】ブライアン・エクランド・スノウ テッド・ハワース

 

【出演】

ジェームズ・コバーン:シュタイナー曹長

マクシミリアン・シェル:シュトランスキー大尉

センタ・バーガー:エヴァ

デヴィッド・ワーナー:キーゼル大尉

ジェームズ・メイソン:ブラント大佐