鈴木清順監督の独特の映像表現の原点
評価:★★★★☆
冒頭は白黒で警察が心中現場を調べている。死亡者の男の方は刑事。
テーブルの上のグラスに入った花だけが赤い。
宍戸錠は元刑事で昔の刑事仲間殺しの真犯人を探すために対立するやくざの組織の間を行ったり来たりしながら、次第に真相にせまろうとするが・・・。
清順節炸裂!
鈴木清順監督は1963年にこの「野獣の青春」と「探偵事務所23」、「関東無宿」という3本の傑作を撮って、この後は「肉体の門(1964)」、「刺青一代(1965)」「東京流れ者(1966)」、「けんかえれじい(1966)」、「殺しの烙印(1967)」と毎年のように傑作(当時は「わけのわからん映画」と言われていた)を連発することになる、
この作品でも横移動の撮影や独特の構図、そして素晴らしい色彩感覚が堪能できる。そして数々の独創的な美術セット
・クラブの壁一面のマジックミラー、ミラーの向こうでは店のオーナーたちが店の様子を見ている。店の音は入らない。床も透明になる。
・トモエマンションの内装も近代的で素晴らしい部屋の中に竹の生えた中庭があり、バーがある
・三光組の事務所は映画館のスクリーンの裏
・売春組織の連絡場所が喫茶店と同じ空間にあり、手前が売春組織の電話を受ける机で電話が赤と白のツートーン、奥の一段上がった所が喫茶店
・小林昭二の家の外がなぜか砂嵐
・郷えい治の家の中に吊るされているプラモデル
主演の宍戸錠にとっても代表作。
1960年前後の渡り鳥シリーズでの小林旭の敵役から、徐々に主役の作品が増え、1962年の「危いことなら銭になる」以降は翌1963年がこの「野獣の青春」、以後「探偵事務所23 くたばれ悪党ども(1963)」「肉体の門(1964)」「拳銃は俺のパスポート(1967)」「殺しの烙印(1967)」「縄張はもらった(1968)」と毎年のように傑作に出演している。
この作品では黒のスーツと黒のコートに身を包み、体のキレも最高の時期で、冒頭のチンピラをぶちのめしていくところ、敵の不動産屋に乗り込んで子分を叩きのめしてあっという間にバリケードを作ってしまうところ、終盤の宙吊りからの銃撃など、見せ場の連続。
渡し船に乗るジョー:超シュール
宙吊りからのアクション
脇役では、川地民夫と信欣三がいい。前半は重要な位置にいると思われた金子信雄は後半になるとただの酔っ払いになってしまった。鈴木瑞穂もちょいと出演。この頃の日活作品では渡辺美佐子が結構重要な役で出ている。
ちなみに終わりも花のパートカラー
EUREKAのMasters of CinemaのDVDで鑑賞
鈴木清順は海外でも人気があり、有名な名作ライブラリーのCriterion CollectionやArrow Videoなどにも複数の作品が収録されている。
【鑑賞方法】ブルーレイ―EUREKA
【原題】YOUTH OF THE BEAST
カラー92分
【制作会社・配給】日活
【監督】鈴木清順
【脚本】池田一朗 山崎忠昭
【原作】大藪春彦
【撮影】永塚一栄
【美術】横尾嘉良
【編集】鈴木晄
【音楽】奥村一
【出演】
宍戸錠:水野錠次
木島一郎:竹下公一
渡辺美佐子:竹下くみ子
鈴木瑞穂:広川刑事
小林昭二:野本達夫
川地民夫:野本秀夫
江角英明:三波五郎
金子信雄:小沢惣一
上野山功一:久野正男
信欣三:小野寺信介
郷えい治:武智茂