まるでコロナウィルスの現実を
予想していたような映画

 

 

 評価:★★★★☆

 

2011年の作品だからコロナウィルスの登場の10年前、パンデミックの経過からワクチンの開発や接種まで本当にこの映画の通りで考証の正確さが証明された形になった。まさに先見の明があったとしか言いようがない。

 

 

同じウィルス感染を扱った「アウトブレイク(1995)」が後半にヘリコプターの空中アクションまで入れて娯楽映画に大きくシフトしてしまったのと比較するとドキュメンタリータッチの静かな展開で、この作品の方がリアリティがある。

 

感染源の究明とワクチン開発に追われるWHO(世界保健機関)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)、ネットによる流布、そして一般市民の不安やパニックを平行して描いている。

 

 

冒頭から次々と香港経由で感染者が発症し世界中に感染が拡大していくスピーディーな展開。

 

アメリカ本土での発端者の女性を演じるのはグウィネス・パルトロー。彼女は苦しみながら冒頭10分で死んでしまうが、何故か夫のマット・デイモンは発症しない。グウィネス・パルトローは悶絶する表情や解剖される場面では頭の皮をはがされてしまうなど、凄まじい形相のジャケット写真も含めてあまりいいところない役だが最初の発端者として重要で、彼女のようなビッグスターにこの役を演じてもらう必要があったのだろう。  

 

映画はDay2から始まる

 

苦悶の表情

 

濃厚接触者である夫のマット・デイモン 何故か発症しない

  
 

CDCではローレンス・フィッシュバーンが指揮を執り、ケイト・ウィンスレットが現地に派遣される。

ここでケイト・ウィンスレットが現地の役人に説明する接触感染のリスクやウィルスの再生産率など、今では当たり前にテレビのワイドショーでも議論されている内容が扱われている。しかし現地の役人は感染状況の把握や適切な対応よりも予算の出どころを心配している。(役人のお偉いさんが無能なのはどこの国でも共通か)

その後、ケイト・ウィンスレット自身が感染してしまうが、あいにく看護師組合のストライキなどもあって適切な治療を受けられないまま彼女も死亡してしまう。

 

CDC側の責任者ローレンス・フィッシュバーン

 

ウィルスの再生産率について説明するケイト・ウィンスレット

 

重要事項がサッパリ理解できない役人たち

 

最前線に立ち感染して亡くなるウィンスレッド


 


 

CDCの本部ではグウィネス・パルトローの検体からワクチン開発が始まる。ワクチン開発の場面でも急を要する場合の人体への有害事象や効果などの治験をどうするか、接種の優先順位をどう決定するか、などここでもまさに今のコロナウィルスで問題になっている事項が次から次と出てくる。

 

初めてワクチン効果が確認された猿を見つめる
 

ワクチン接種の順序は誕生日別の抽選

 

一方でまだ一般民間人には情報が伝わっていない状況で自分の家族のみ疎開させたりWHOのドクターを誘拐監禁してワクチンの優先順位をあげさせようとしたりする事態も起こる。

 

そしてジュード・ロウが扮するネットジャーナリストがレンギョウという薬が効くという根拠の薄いデマを流し、それによって買いだめに走りパニックになる人々がいる。


感染したふりをしてレンギョウが効いたと嘘をいい大儲け

 

自分は完全防備


 

今回のコロナ騒動でも、こともあろうに大手薬局チェーンの会長が自身のワクチン接種を優先させたり、大阪府知事のイソジン発言、インターネットのデマによるトイレットペーパーの買いだめなどが現実に起こってしまった。

さらに都市は封鎖され道路はゴミの山、無人のスポーツクラブ、食料配布の奪い合い、薬局・スーパーの破壊強奪などが起こっているが今回のコロナウィルスでは幸いにここまでのひどい混乱は起きなかった。

 

ゴミだらけの市街地

 

無人のスポーツクラブ

 

スーパーの略奪

 

レンギョウを求めて薬局でも略奪が起きる

 

 
 

 

WHOではマリオン・コティヤールが中心になって発症経路の追跡がはじまり、濃厚接触者から逆に感染経路を追っていき、ついにグウィネス・パルトローが感染源であることを突き止める。

今回のコロナウィルスでのWHOの対応では後手後手で初期に武漢の徹底調査を行わず、その後も専門家とは思えない右往左往の状態で、この映画で描かれているWHOとは大違いだった。WHOはコロナウィルスに関して今や全く存在感がない。

 

感染源を突き止めるため香港に向かったマリオン・コティヤール

  
 

 

要所要所に出てくる感染者が触った手すりやスイッチなど部分のアップも不安を掻き立てる。原題のコンテイジョンは伝染を意味する。


 

ラストがDay 1なのもいい。ここで発端者グウィネス・パルトローへの感染原因が明らかになる。

Day1

 

 

「マッシュ」のエリオット・グールド、や「トランボ」のブライアン・クランストン、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェニファー・イーリーなど脇役も豪華。

エリオット・グールド

 

ブライアン・クランストン

 

ジェニファー・イーリー

 

 

ブルーレイ吹替で鑑賞。

特典の「解説:ウィルス感染の仕組み」はコロナ渦で散々言われてきたことばかりで、制作者にあらためて先見の明があったことに感心する。

 


 

【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替):ワーナー

【原題】CONTAGION

カラー106


【制作会社・配給】ワーナー・ブラザーズ映画

 

【監督】スティーヴン・ソダーバーグ

【脚本】スコット・Z・バーンズ

【制作】マイケル・シャンバーグ、ステイシー・シェア、グレゴリー・ジェイコブズ

【撮影】ピーター・アンドリュース

【美術】ハワード・カミングス

【衣装】ルイーズ・フログリー

【編集】スティーヴン・ミリオン

【音楽】クリフ・マルティネス

【出演】

マリオン・コティヤール:ドクター・レオノーラ・オランテス

マット・デイモン:ミッチ・エムホフ

ローレンス・フィッシュバーン:エリス・チーヴァー博士

ジュード・ロウ:アラン・クラムウィディ

グウィネス・パルトロー:ベス・エムホフ

ケイト・ウィンスレット:ドクター・エリン・ミアーズ

ブライアン・クランストン:ライル・ハガティ海軍少将

ジェニファー・イーリー:ドクター・アリー・ヘクストール

サナ・レイサン:オーブリー・チーヴァー

エリオット・グールド:イアン・サスマン博士