殺しのドレス(1980)アメリカ | おやじの映画館【ネタバレあり】

おやじの映画館【ネタバレあり】

観た映画の感想を書いています。
基本的にネタバレありです。
評価は★5大傑作、★4傑作、★3佳作、★2標準作、★1駄作です

 

 

オタクの高校生とチャーミングなコールガールのコンビが最高

 

 

評価:★★★★☆

 

ヒッチコック崇拝者として有名なデ・パルマ監督。

この映画でも、冒頭のシャワーシーンはそのまま「サイコ」だし、途中の主役の交代や最後の謎解きを分析医がするところなど映画全体の構成も「サイコ」風、そしてアンジー・ディキンソンが美術館で絵を眺めている姿は「めまい」を連想させる。

 

 

 

<ストーリー>

性的な欲求不満を持つケイト・ミラー(アンジー・ディキンソン)は、精神科医のロバート・エリオット(マイケル・ケイン)とのカウンセリングの帰りに寄った美術館で知り合った見知らぬ男との情事を楽しんだが、帰りのエレベーター内で惨殺されてしまう。

殺害現場を偶然、目撃したコールガールのリズ(ナンシー・アレン)とケイトの息子(キース・ゴードン)は協力して犯人捜しをするが、リズに身にも危険が及ぶようになる。


 


 

この頃のデ・パルマは新作が公開されるごとに“ヒッチコックの悪しき模倣者”のような批判も多く受けていたが、分割スクリーンやスローの使い方などデ・パルマ独自の映像表現の粘っこさはある意味ヒッチコックを上回り、徹底的に映像で見せる表現力は素晴らしいと思う。

 


 

あのセリフがほとんどない美術館のシーン。

他人の姿(男性が女性の尻を触っているカップル、東洋系の家族、)、日常の買い物リスト、女性とゴリラの絵、男が隣に座った時の期待感と去っていった時の失望感、そして始まる追いかけっことアンジー・ディキンソンの心情の変化が十分に伝わる。

 


絵を見ているケイト、左奥にアベックがいる


アベックの男性が女性のお尻を触り、女性が男性の手をよけている


見知らぬ男性が隣に座る


ケイトが落とした手袋


片手だけ手袋で美術館を後にするケイト


アリッ?何か映ってる


こっちにおいで~

 

 

あるいは、情事が終わった後にアンジー・ディキンソンが全裸から脱いでいった順と逆に服を着ながら寝室から廊下を通って机まで歩いていくワンカット撮影。

 


 

そして、その後の惨劇


 

ホームの緩やかなカーブと柱の影を利用した地下鉄のシーンの緊迫感も印象に残る。


 


 

 

随所に出てくる鏡のシーン

エレベーター内の鏡

 


鏡を見てニヤリ

 

 

後半の分割スクリーンのシーンでは、最初に精神科医エリオットと、右の金髪の犯人らしき人物が映り、その後にエリオットとリズが同じテレビを見ているシーンが続くため、左右が同時進行であることを印象付けるという上手い使い方。(つまり、エリオットと“この場面の金髪女”は同じ時刻に別の場所に存在しているので同一人物ではない。エリオットは犯人ではないのではないかというミスディレクション)

 

エリオット(左)と金髪女(右)


エリオット(左)とリズ(右)は同じテレビ番組を見ている(時間が同時進行)

 

 

映画の序盤の主役は中年になってもセックスそのものに取りつかれたような一歩間違うと安いAVの淫乱熟女になりかねない微妙な役を演じたアンジー・ディキンソン。(ただし冒頭のシャワーシーンのきれいなバストや下腹部のアップは明らかにボディダブル)

 

 

そして、この当時、もっとも出演作品を選ばないスター俳優のマイケル・ケイン。「狙撃者(1971)」「探偵<スルース>(1972)」「王になろうとした男(1975)」「鷲は舞いおりた(1976)」と傑作続きの後、「スウォーム(1977)」「アシャンティ(1978)」「ポセイドン・アドベンチャー2(1979)」と駄作続きだった激動の1970年代を経て、本作の後も「ジョーズ 復讐篇(1987)」の撮影のためにアカデミー賞を欠席するというプロフェッショナルな姿に誰もが感動した。

 

しかし、何といってもこの映画で魅力的だったのは、オタク高校生のキース・ゴードンとチャーミングなコールガールのナンシー・アレンのコンビ。

一般に高校生と言えば性への好奇心が最も旺盛な年齢であるが、オタクのゴードン君はあまり性的なものに関心がない、かたや日常的に職業としてセックスに励むアレン嬢。

普通は「青い体験」風に童貞卒業エピソードを入れてしまいそうになるが、このエロ要素満載の映画の中において、最後までドギツイ話はするがプラトニックな関係なのがいい。

 


機械で埋め尽くされたオタク少年の部屋



この状況でも行為にいたらないのはオカシイ

 

 

ピノ・ドナッジオ音楽も良かった。

 

公開当時、劇場で鑑賞した時は、あのラストで観客全員がビクッとなっていた。


 

 

【鑑賞方法】ブルーレイ(吹替):Happinet

【原題】DRESSED TO KILL

カラー 105

【制作会社】ジョージ・リットー・プロ

【配給】日本ヘラルド

 

【監督】ブライアン・デ・パルマ

【脚本】ブライアン・デ・パルマ

【制作】ジョージ・リットー

【撮影】ラルフ・ボード

【衣装】アン・ロス

【編集】ジェラルド・B・グリーンバーグ

【音楽】ピノ・ドナッジオ

【出演】

マイケル・ケイン:ロバート・エリオット

ナンシー・アレン:リズ・ブレイク

アンジー・ディキンソン:ケイト・ミラー

キース・ゴードン:ピーター・ミラー

デニス・フランツ:マリノ刑事

デヴィッド・マーグリーズ:Dr.レヴィ

ケン・ベイカー:ウォーレン・ロックマン

スザンナ・クレム:ベティ・ルース

ブランドン・マガート:クリーブランド・サム