ゼロの焦点
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- ゼロの焦点―長編推理小説/松本 清張
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
監督: 野村芳太郎
製作: 保住一之助
原作: 松本清張
脚本: 橋本忍
山田洋次
撮影: 川又昂
美術: 宇野耕司
音楽: 芥川也寸志
出演: 久我美子
高千穂ひづる
有馬稲子
南原宏治
西村晃
加藤嘉
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
松本清張原作、野村芳太郎監督が贈る快心の長編ミステリー。
憲一は広告会社に勤めていたが、社用のために金沢へ旅立つ。
しかし、それが憲一の姿を見た最後になってしまう。妻の禎子は真実を探るために手を尽くすのだが…。
★★★★★★★☆☆☆
ただでさえ難解なサスペンスなのに、
食事をしながら気軽に見ていたので途中で・・
汁椀を落としてしまいました(爆)
「そうきたか??」まさによそ見しながら見られないです。
でもその「そうきた」がわかるとあとはもうわかりやすいんですが・・
よくできているので見終わってからまた見直したい映画です。
原作がよい。
というのも作者の松本清張本人が特典映像で言っていました。
自分の作品で一番よいと。
私は松本清張の作品が大好きなのですが、
実際に本は読んだことがないのですよね。
未読だけれど読まなくてもいいと思っているほどです。
映画化はどれも水準が高く楽しめて泣けます。
が・・それを文章にすれば思いっきり暗いだろう。
そして後味も映像だから余韻に浸れる。
文章というものは個々の頭の中でトラウマになるかもしれないくらい、
人間の中に入ってくるのです。
松本清張の原作がすばらしいから映像化できるのですが、
あくまでも映画=映像はリアルな作り話です。
それを文章で読むとくどくないかなと・・
いつかは読みたいのですがちょっと勇気がいります。
さて、松本清張といえば、
「砂の器」「天城越え」「鬼畜」と泣かせてもらいました。
この作品はどうでしょうか?
泣けるという人情映画でもありませんし、
面白いサスペンスというのでもありません。
ただ・・
つくりはすごいなぁと感心しますね。
この時代に他の作品はどうだったのかわかりませんが、
つくりは、
ヒッチコックの「めまい」を思い出しました。
どっちが先だろうか??
勘のいい人ならわかると思うけれど、
「ああそうきたか」というのはこのつくり。
この映画が1961年作なので同じくらいの年代の邦画洋画と比べてみてください。
結婚式をあげる主人公の女性。
その後新郎は消え死体確認をしに行くんですが、
どうも別に同じ場所で同じように死んだ人がいる。
しかしそれがどうしてつながるのか、
それがわかるまでにはその時代背景にヒントがありました。
この冒頭に式をあげ夫の出張から帰らない事件までが早い。
途中からもう、これはヒッチコックの「めまい」だ。
そう思って見ていましたよ(苦笑)
受付嬢のすりかわりや同じ風景や同じ写真・・
これって「サスペリア2?」とまた途中で面白くなって・・
見た方にはわかると思うけれど、
サスペリア2の展開や小道具が似てるんですよ。
もしかしたら清張の原作かこの映画に触発された洋画の人もいてたり・・
あと・・「パルプフィクション」にも似てたなぁ・・
こうたとえたら違うかもしれないけれどそのくらい「そうきたか」です。
脚本をいじるとか前後を変えるとかいうのではないけれども、
見ながら実に不思議な感覚になります。
誰が主人公で誰に共感すればいいのかはわかりませんが、
まずはストリーテラーということで飛び降りた夫の妻。
彼女を中心に考えて見ていきます。
しかし途中からそうではないそれだけではないとわかります。
その真犯人の過去や動機がわかりだすと、
犯人の方に共感さえしてしまいます。
これが本だとめちゃ暗いだろうなぁ・・
「天国と地獄」の後半を思い出しましたし、
一番似た世界だなぁと思ったのが「飢餓海峡」これです。
飢餓海峡を見たことのある人なら共感できるかも。
この時代のなりあがりの果て、
当たり前のように地位をつかみぬくぬくと生きている人。
清算される現実と過去。
いわゆる「帳消し」「落とし前」というのはまた違うかもしれないけど、
これ・・やはり映画では短いですね。
もちろん映画だから説明不足だからスピードもあり面白く、
そのどんでん返しも娯楽として見られるのですが。
内容は確かに暗くて救いようがない。
けれど構成が面白いし、
サスペンスで明るい殺人なんてほうが不気味だ。
殺人に理由がなく明るいなら猟奇的でありまんまホラーですし。
救いようのない結末に特有のこの野村監督の効果音。
そんな、派手な・・とひきつつも、
このくらい緩急があったほうがよいかも。
ちょっとあの音楽使いは特撮映画のノリですが(苦笑)
「天国と地獄」もそんな音使いありましたし、
そういう時代なのかもしれませんね。
なんにせよ野村監督と松本清張の組み合わせは好き。
過去を語らせる絵作りがうまいですね。
DVD特典を見ると、
その時代解釈や作者の言葉、
そして原作がヒットしたために自殺の名所となってしまった場所・・
松本清張は言います。
この話はあくまで小説であり架空のこと。
自殺の名所となってしまい碑まで建てられましたが、
これ以上死なないでほしい。
あくまでも小説は架空の話・・
ということで映画でもリアルなのに、
やっぱり清張の文章はリアルで生々しいのだろうと想像。
ホラーは好きなのにこの人の原作にはいまだ手をつけられない・・