【映画】どん底 4kレストア版 | おきらく映画ファンクラブ

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どん底(1936・仏・93分)

監督:ジャン・ルノワール

原作:マキシム・ゴーリキー

主演:ジャン・ギャバン

 

人生のどん底から抜け出していく男と

どん底に落ちてゆく男の友情を

安宿に暮らす住人達との群像劇で描く

 

ロシアを代表する文学者

ゴーリキーの戯曲に

新たなエピソードを加えて

映画化されています。

監督は印象派の巨匠

ピエール・オーギュストールノワールの

息子でありフランスを代表する監督です。

「大いなる幻影」の監督といえば

ピンとくる人もいるかと思います。

 

今回4Kレストア版として

修復されていますから

モノクロですけど

映像がクリアで美しいです。

 

なぜ泥棒と男爵という

身分も育ちも違う2人が

友情を育むことになるのか?

後に2人が違う道を歩むように

なるのはなぜか?

そういう基本的な疑問も

軽やかに鮮やかに

提示してくれるのが

ルノワール流です。

 

基が舞台の戯曲で

ほぼ木賃宿(安宿)の中で

物語は進みます。

 

しかし、個性豊かな住人達と

巧みなセリフ回しで

クライマックスへ誘導も見事です。

人物配置の構図が絵画的なのは

ルノワールのDNAかも知れませんね。

 

ジャン・ギャバンが

泥棒なんですが

かっこいいのなんのって。

若いフランスの男優さんて

なんて素敵なんでしょうね。

おっと、話がそれそうだ。

映画の物語の話題に戻して…

 

「どん底」な環境から

どうやって彼(泥棒)は抜け出すのか?

物語は悲劇的な事件で

状況が一変します。

彼は自分を信じてくれる人と

共に新しい世界へ飛び出します。

「誰かのために」が

変わるきっかけなんですね。

そして友人となった元男爵と

伴侶となる愛する女性を得て

自信を取り戻します。

彼は女性に「愛している」ではなく

「信じてくれ」と言いました。

彼に必要だったのは

「信頼」と「自信」だったのです。

 

一方、どん底に堕ちていく元男爵は

不幸なのかといえば

そうでもないように私は思えました。

高い身分や苦労なく手に入る大金は

彼を孤独なギャンブル依存症にしましたが

木賃宿の住人達と触れ合うことで

心の平穏を得ているように見えました。

泥棒とも心を赦し互いを認めあう。

元男爵も泥棒と友情を結んだことで

家や財産、過去の栄華の全てを失っても

生き抜く自信が生まれたと思います。

 

タイトルは厳しいけど

観終えた後、何か救われたような

気分になる作品です。

 

ゴーリキーの「どん底」は

日本の巨匠・黒澤明監督も

舞台を江戸時代に置き換えて

映画化しています。

私は、この映画も大好きです。

日本版の方は2時間ちょっとあって

長いかな?と思うかもしれませんが

飽きさせない力のある脚本が素晴らしいです。

日本版とフランス版を

見比べてみるのもいいかもしれませんね。

興味のある方は挑戦してみてください。