牙狼<GARO> -DIVINE FLAME-【ネタバレ有り】 | 映画の夢手箱

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 映画の鑑賞記録です。基本的にネタバレ有り。

 公開初日の5月21日、幸い仕事が休みだったので家族といっしょに鑑賞。


 最近、アニメ映画を劇場で観るという機会がなかなかないのですが、本作は動画サイトでドラマをずっと追いかけてきていたこともあり、かなりの期待を持ってスケジュール帳に公開日を書き込み、心待ちにしておりました。


 期待は充分に報いられたと言えましょう!


 主人公レオン(浪川大輔)の成長ぶりに、微笑んだり涙をこぼしたりと、無我夢中の時間を過ごすことができました。



 本作は、牙狼シリーズという、大人をターゲットとした特撮アクションドラマ及び映画から派生したアニメーション作品です。


 牙狼シリーズについては、過去に何回か記事を書いておりますので、興味のある方はそちらもご一読くださいましね。


http://ameblo.jp/eiga-yumetebako/entry-11736435921.html


 アニメーションだから、実写では容易に撮影できないことも、比較的安価に映像化できてしまう。


 例えば、中世ヨーロッパ風の架空世界を舞台に、日本人ではない主要キャラクターたちが登場して、ドッグファイトや水中戦を繰り広げるなんてことも。


 しかしながら、もともとは冴島鋼牙(小西遼生)という一人の黄金騎士を主軸に据えて始まった特撮アクション。


 本作の林祐一郎監督の演出からは、この点を踏まえての、古くから付いてきているファンへの配慮を感じました。


 即ち、動き。


 アニメーションのキャラクターに、特撮アクション作品の役者のような動きをさせているのです。


 わたしは、本作以前に、ドラマとして放映されているときからこれを感じていました。


 特撮作品をよく鑑賞される方にならすぐわかって頂けると思いますが、特撮のアクションにはお馴染みの動きというものがあるのです。


 例えば、剣を構えるときの所作や、屋根の上を走って高いところから飛び降りるときのアングルやスピード、まるで路上を走るかのように建物の壁を走るシーンや、壁を蹴って身体を捻り敵にアタック、吹き飛ばされて受け身を取ってからの反撃など。


 実写であれば、これらは時に役者をワイヤーで吊ってワイヤー・アクションで撮影したり、スタントマンを使ったり、CGなどを加えて加工したりしているのだと思います。


 アニメは、画を起こしてしまいさえすれば、ある意味、どのような動きも自在に撮れるのですが、敢えて特撮アクションのような動き方をさせているところに製作陣のこだわりを感じ、好ましく思います。



 本作の脚本を小林靖子が手掛けているというのも、鑑賞の大きな理由の一つでした。


 好みは人それぞれと思いますが、わたしにとってみると、「小林靖子作品に外れなし」という全勝状態で今日に至っています。


 彼女の脚本にはいつもいくつかのサプライズが仕込まれていて驚かされますが、他にもいくつか共通項があると思います。


 *主人公には並々ならぬ試練が与えられる。


 *芯のしっかりした女性(年齢の意味ではなく「大人」の女性)が登場する。


 *序盤から伏線が張られ、すべてスッキリと回収する。


 *悪役に悲劇的な、哀しいストーリーがある(よって、完全に憎みきれない場合が多い)。


 *主人公サイドだろうと容赦ない、死ぬときは死ぬ。


 *全体的に、昔の時代劇の雰囲気や粋がある。


 本作でも、この「小林節」が素敵に炸裂していました!



 それから、主人公の声を当てている浪川大輔。


 もう、これね…、浪川さんね。


 現在の我が国の声優界のなかで、わたしが最も気に入っている男声の持ち主なのね。


 わたしはいつか、役者や声優の「声」についてひとつブログを書き起こそうかと思っているくらい、「声」にこだわりがあるのですけれども!


 浪川さんの声には色気があるね。


 台詞を読むときはもちろん、台詞ではない「フッ…。」という息遣いや、「ん、んっ?」という疑問符の声や、「クッ…!」なんて呻き声にすら魅力が籠もっているのね。


 うまく言えませんが、主人公なんだけど、何かちょっと「負けてる」の。


 いい具合に弱いのね。


 しかし、ここぞというときに、腹の底から気迫を込めて盛り返してくるわけ!


 本作の終盤の、


「つないでいかなくちゃ、ならないんだぁ…っ!」


 っていう渾身の叫びとか、最たるものですよ。


 本当に上手だよね!


 浪川さんが声を当てていると、一度、敵からボッコボコにしてもらいたくなるよね。


 再起不能なくらい打ちのめされたところで、そこから、不屈の精神で睨みあげて立ち上がってきて打ち勝ってほしいし、実際、そうするの。


 何か、わたしは以前にもこんなようなことを主張していたな…。


 そう、「マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースとか!


 彼も、一度は血まみれになるくらいボコられて、そこから折れずに反撃してくるところが最大の魅力よねー!
 
 いけないわ、何だかわたしが「アブない人」みたいだわ!


 しかも、このままでは普段は浪川さんなんて言わずに、


「浪川がさー!」


 って、浪川トークを延々としていることがバレてしまうわ!


 しかも、作品についてよりも浪川についていっぱい書いてしまっているじゃないの!


 恐るべし浪川マジック!


 書き足りないが、この辺で浪川については終わりにしておこう…。



 本作では準主役、と言うより、価値としてはレオンと並ぶもう1人の主役とも言えるアルフォンソ王子(野村勝人)もきちんと描いてありました。


 このキャラクターは、金髪碧眼の典型的な「白馬の王子様」に見えるんだけど、行動を見ていると実はマッチョな体育会系よね。


 ドラマ放映のときから、その点には気づいていました。


 だから、本作でもエマ(朴路美)に断りもなく、ロベルト(富田美憂)を助けようと、


「ロベルトォォォォォォォー!」


 とか何とか叫びながら魔戒馬召喚して、ふっとい水柱をゴゴゴゴゴーッと立てて湖上を爆走し、建物の壁までぶち抜いて現場に捨て身で飛び込んでいく姿に、


「そうそう、このくらい後先考えなしなのがアルフォンソ!」


 と、手を叩きたくなりました。


 根性で何とかなると信じている節があるよね!


 序盤の、レオンとの夫婦漫才(?)も良かったなぁー!


 ロベルトは3歳なのによくやっている、これ以上厳しくする必要はないというアルフォンソと、最愛の者を護れなかったという自身の辛い思いから、ロベルトには同じ思いをさせたくないというレオン。


 ついにレオンが、


「俺の弟なんだから口を出すな!」


 と言うと、アルフォンソも、


「私の従弟でもある!」


 と言い返す。


 様子を見ていたロベルトは空気をよく読むタイプらしく、自分のために喧嘩が起こっているのかと思って、


「ごめんなさい!」


 と泣き出してしまう。


 序盤で3人で過ごす温かな時間を見せるとともに、これは本作におけるレオンの成長ぶりを伝えるための重要な前振りでもありました。


 一時は右腕を失い、黄金騎士の鎧も召喚できなくなって別次元に吹き飛ばされ、絶体絶命の危機から使徒ホラーを倒すという使命を果たすレオン。


 これほどの経験をした後、終盤でレオンはロベルトに、「鍛錬ではなく、魚釣りをしよう。」と優しく微笑むのです。


 最愛の者を護りきれず死なせてしまったのだけれども、その体験は自分に思いという力を与えてくれたのだと悟ったがゆえの、この内面の変化。


 レオンは、ますます魅力的な男に成長しました。



 それにしても、自分なりの死生観をしっかりと持つということがいかに大事なことか、本作を鑑賞して改めて考えさせられました。


 ダリオ(萩原聖人)はバゼリア王家に仕える魔戒騎士だったようですが、サラ姫(小宮有紗)がホラーに襲われた際に駆けつけるのが遅れ、このために絶世の美女だったサラは顔面に大きな損傷を受けてしまいます。


 加えて、5年前のヴァリアンテ事件。


 これはドラマ版で語られたストーリーで、人界に魔界のゲートが開き、夥しい数のホラー(魔界の化け物)が溢れだしたというものですが、本作の回想シーンを見るに、サラたちの国も悲劇に巻き込まれ、多くの人死にが出た模様。


 城に火を放ってダリオさえ遠ざけようとするサラに、「私が見ることであなたを苦しめるのなら、目など要らない。」と言ってダリオは自らの両眼を刀で抉る。


 ちょっと「春琴抄」みたいな展開ですね。


 ダリオは盲目になりながらもサラの身の回りの世話をするが、ある日、サラはダリオに礼を述べて湖に身を投げてしまう。


 しかし、湖中でサラを受け止めたのは、使徒ホラー。


 サラはホラー化してしまいます。


 ダリオはサラを護れなかったことを悔いる余り、死者復活の禁忌の術を成就させようと他の魔戒騎士を手にかけ、レオンやヘルマン(堀内賢雄)の命まで狙い、ロベルトを人柱にしようとします。


 ダリオは、


「あなたがロベルトを思う気持ちと、私のサラ様への思いに何の違いがあると言うのか。」


 との論法で説得を試み、


「あなたも最愛の者を護れなかった経験を持っている、私といっしょだ。」


 と突っ込まれると、レオンは痛いところを突かれてウッと揺らいでしまう。


 一方、さすがに親父(=ヘルマン)は、ロベルトのために肉体どころか魂まで危険に晒して一時的に生者の世界に復活してきているだけあって肝が据わっている。


「全然違うわ! 俺はロベルトのために他の誰かを犠牲にしようとは思わん!」


 と、一蹴。


 それに対して「言葉が通じないようですね…。」と冷笑するダリオは、本当に頭オカシイ感じです。



 今までも感じていたことですが、「ホラー化した人を斬ってあげることは慈悲なんだなぁ。」と、改めて強く感じました。


 サラに憑依したホラーは、顔が十字に割れたり、触手が伸びたり、およそ人から程遠い、恐ろしい化け物。


 騎士がそれを討とうと攻撃するたび、サラの姿をしたものが悲鳴を上げ、苦痛に身をよじる。


 もしこれがわたしの愛する人の姿だとしたら、とても見ていられない。


 最悪の化け物が、わたしの愛しい人の名を名乗り、愛しい人に酷似した姿で陰惨な殺人を繰り返すなど、到底、許すことはできない。


 愛する人の名誉のためにも、供養のためにも、そのホラーを討滅したいと願うことでしょう。


 ダリオは、両眼を自分で抉っていなければ、サラのホラー化は防げたのではないか?


 防げなかったとしても、ホラー化したその瞬間に斬り捨ててあげていた方が、よほどサラ本人のためになっていたのではないか?


 そう思えてなりません。


 死者復活の儀式をするくらいだから、霊魂の存在は確信していたようですが、魂が不滅だとは思わなかったのですね。


 結局、ダリオの思いは愛などではない。


 愛しい人を護れなかったという自分の悔いを引きずっているだけです。


 愛は多くの者をつなげて癒すが、ダリオの執着とエゴは何も生み出さないどころか、周囲の者を不幸にする。


 今はせめて、黄金騎士に討たれて己が過ちに気づくことができたでしょうか。


 生まれ変わる前に、ぜひ猛省してほしいものですね!



 レオンが別次元に行ったときに見たララ(逢葉まどか)の追憶は、愛と、そこから沸き起こる優しい強い力に満ちていました。


 あそこでララを出すなんて反則だよね…、泣かずにはいられませんでした!


 劇場の他の箇所からも啜り泣きの声が聞こえ、それを聞くとさらに、さらに涙が…!


 レオン、強く生きるんだよ…!



 ラスト、一言も言葉を発さずに、そっと一行から離れて違う枝道に入っていくエマはとても粋でした。


 一昔前の時代劇みたいな演出だね。カッコいい。



 そう言えば、冒頭に登場したアルフォンソの婚約者との後日譚はあるのかしらん。


 それから、人柱がなぜロベルトでなくてはならなかったのかの説明は作中に出てこなかったけど、実父が魔界に行っているという特殊な事情の子供だったから有益だったのかな?


 いくつかの点が鑑賞後も気になり、早くも「続編プリーズ!」とお代わりを要求しているわたしでありました!8D


 

【公式ホームページ】
http://garo-divineflame.jp/


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