「ネバーランド」
評価:×
ジョニー・デップが好きで、また一応アカデミー作品賞にノミネートされているので気になり、かつ株主優待券が使えたので、見に行ったのだった。この文から明らかなように、あまり気乗りしなかったのだが、その予想がずばり当たってしまった。
確かに作品の出来としては悪くない。ある作家が、父親を亡くしたある一家の子供たちと触れ合っていくことで、作家は「ピーターパン」を書き、傷ついていた子供たちの心は癒されていくというストーリーである。手堅くまとめられており、だれている場面などもない。
だが同時に、どの場面も無難であるに過ぎず、私にとって気に入った場面や好きな場面は皆無だった。それゆえ悪い作品ではないので、フェアではない気もするが、やはり私としては低い評価を下さざるを得ない。
ジョニー・デップはこの作品でも良いのだけれど、普通とは少し異なる人に対して、その人の世界にすっと入って、交流できるという人物設定は、これまでにデップが演じてきた役柄と変わりない。そして「妹の恋人」や「アリゾナ・ドリーム」の方が良かったと思う。なぜなら「妹の恋人」も「アリゾナ・ドリーム」も、デップがちょっと変わった人に付き合って、一緒になってちょっと変わった行為を行っているという微笑ましい場面があったからだ。それこそがこのような系統の作品の醍醐味である。この作品ではその点が弱いため、上記のような評価となってしまう。
まとめると、この作品は、これまでのデップのイメージに乗っかっているだけであり、監督やプロデューサーはやや怠慢なのではないか。
(2005年2月上旬 新宿スカラ座にて)
ジョニー・デップが好きで、また一応アカデミー作品賞にノミネートされているので気になり、かつ株主優待券が使えたので、見に行ったのだった。この文から明らかなように、あまり気乗りしなかったのだが、その予想がずばり当たってしまった。
確かに作品の出来としては悪くない。ある作家が、父親を亡くしたある一家の子供たちと触れ合っていくことで、作家は「ピーターパン」を書き、傷ついていた子供たちの心は癒されていくというストーリーである。手堅くまとめられており、だれている場面などもない。
だが同時に、どの場面も無難であるに過ぎず、私にとって気に入った場面や好きな場面は皆無だった。それゆえ悪い作品ではないので、フェアではない気もするが、やはり私としては低い評価を下さざるを得ない。
ジョニー・デップはこの作品でも良いのだけれど、普通とは少し異なる人に対して、その人の世界にすっと入って、交流できるという人物設定は、これまでにデップが演じてきた役柄と変わりない。そして「妹の恋人」や「アリゾナ・ドリーム」の方が良かったと思う。なぜなら「妹の恋人」も「アリゾナ・ドリーム」も、デップがちょっと変わった人に付き合って、一緒になってちょっと変わった行為を行っているという微笑ましい場面があったからだ。それこそがこのような系統の作品の醍醐味である。この作品ではその点が弱いため、上記のような評価となってしまう。
まとめると、この作品は、これまでのデップのイメージに乗っかっているだけであり、監督やプロデューサーはやや怠慢なのではないか。
(2005年2月上旬 新宿スカラ座にて)
1週間お休み
何だか私以外の人がこのブログを見てくれた形跡があり、とても嬉しいです。
が、8日に用が入ってしまい、せっかくブログ書きの調子が乗ってきたところなのですが、更新お休みすることにします。先週、「オールド・ボーイ」「オランダの光」と見たのですが、いかに「オールド・ボーイ」が不愉快で、腹が立ったかなどは、9日以降に。
が、8日に用が入ってしまい、せっかくブログ書きの調子が乗ってきたところなのですが、更新お休みすることにします。先週、「オールド・ボーイ」「オランダの光」と見たのですが、いかに「オールド・ボーイ」が不愉快で、腹が立ったかなどは、9日以降に。
春夏秋冬そして春
評価:○
ある男の子の成長を春夏秋冬の順に追っていくというストーリー、そして山深い湖の真ん中に浮かんだ小さな寺という物語の舞台、この2つで映画好きなら誰しも見たくなる作品なのではないだろうか。四季を描けるのは映画ならではだからだ。
映像が非常に美しい。同じ舞台設定の「魚と寝る女」と比べても、みずみずしく濃い緑が美しい。また湖が山奥にあり山々に囲まれているので、神秘的な雰囲気を醸し出している。
それに加えて嬉しいのは、その寺には男の子と老僧が暮らしており、「春」では老僧が男の子を叱り、寓話・教訓話のようなものが展開される点である。「春」の寓話が「冬」につながってくるのだが、春夏秋冬、それぞれ異なる寓話でも良かったような気もする。
しかしこの作品がユニークなのは、風景の美しさ、寓話に留まらず、演歌的要素もあることだ。「冬」のエピソードで、単に歌が流れるだけでなく、日本で言えば演歌的な世界観に合致した男の姿が出てくる。そのためこれだけ美しい作品にも関わらず、珍妙な作品を見たという印象も残った。
その他の点では、とぼけた老僧の存在も好ましく、猫の話など非常にコミカルで可笑しかった。また「夏」で、監督の女性へのあこがれ、それと並存する恐れ・悪意などが感じられ、そのため「悪い男」など見たくなった。
以上のように、映像の美しさ、寓話、激しい情念、ユーモア、思春期の男女の微妙な関係など、様々な要素が描かれた作品であり、単に映像の美しさプラス寓話で終わっていない点が、完成度は下げているとは言え、キム・ギドク監督の独自性であると言えよう。
(2004年12月24日 BUNKAMURAル・シネマにて)
ある男の子の成長を春夏秋冬の順に追っていくというストーリー、そして山深い湖の真ん中に浮かんだ小さな寺という物語の舞台、この2つで映画好きなら誰しも見たくなる作品なのではないだろうか。四季を描けるのは映画ならではだからだ。
映像が非常に美しい。同じ舞台設定の「魚と寝る女」と比べても、みずみずしく濃い緑が美しい。また湖が山奥にあり山々に囲まれているので、神秘的な雰囲気を醸し出している。
それに加えて嬉しいのは、その寺には男の子と老僧が暮らしており、「春」では老僧が男の子を叱り、寓話・教訓話のようなものが展開される点である。「春」の寓話が「冬」につながってくるのだが、春夏秋冬、それぞれ異なる寓話でも良かったような気もする。
しかしこの作品がユニークなのは、風景の美しさ、寓話に留まらず、演歌的要素もあることだ。「冬」のエピソードで、単に歌が流れるだけでなく、日本で言えば演歌的な世界観に合致した男の姿が出てくる。そのためこれだけ美しい作品にも関わらず、珍妙な作品を見たという印象も残った。
その他の点では、とぼけた老僧の存在も好ましく、猫の話など非常にコミカルで可笑しかった。また「夏」で、監督の女性へのあこがれ、それと並存する恐れ・悪意などが感じられ、そのため「悪い男」など見たくなった。
以上のように、映像の美しさ、寓話、激しい情念、ユーモア、思春期の男女の微妙な関係など、様々な要素が描かれた作品であり、単に映像の美しさプラス寓話で終わっていない点が、完成度は下げているとは言え、キム・ギドク監督の独自性であると言えよう。
(2004年12月24日 BUNKAMURAル・シネマにて)
ここまでの記事について
5日連続で書いてきたので、ようやく今年に入ってから見た6本の感想、及び年末に見た2本の感想を書くことができました。書いていると、すごく良かった作品でなくても、そこそこの長さになってしまいました。
明日明後日は、結局まだ見ていない「オールド・ボーイ」と、「オランダの光」を見に行く予定です。家にいないので明日明後日は日記は書きませんが、帰ってきてこの2本の感想を書いたら、去年見た映画のリストと簡単な感想を書きます。年末に見たのを除くと17本です。そして順次そのように93年から現在まで見た映画を振り返っていきたいと思います。
でもそれが終わらないうちに、2月上旬はイオセリアーニ特集を見に行くので、それの感想書きに追われそうです。
それでは、明々後日にまた書きます。その時にはコメントもトラックバックもなくていいから、誰か私以外の人が訪ねてきた形跡があるといいなと願っています。他の方のブログを熱心に見ていないので、それはおこがましい願いなんですが。
明日明後日は、結局まだ見ていない「オールド・ボーイ」と、「オランダの光」を見に行く予定です。家にいないので明日明後日は日記は書きませんが、帰ってきてこの2本の感想を書いたら、去年見た映画のリストと簡単な感想を書きます。年末に見たのを除くと17本です。そして順次そのように93年から現在まで見た映画を振り返っていきたいと思います。
でもそれが終わらないうちに、2月上旬はイオセリアーニ特集を見に行くので、それの感想書きに追われそうです。
それでは、明々後日にまた書きます。その時にはコメントもトラックバックもなくていいから、誰か私以外の人が訪ねてきた形跡があるといいなと願っています。他の方のブログを熱心に見ていないので、それはおこがましい願いなんですが。
「戦争のはじめかた」
評価:×
実話を基にし、米軍内部が腐敗していることを暴き出しているため、9・11後全米で5回公開が延期されたという、いわくつきの作品である。ベルリンの壁崩壊直前、冷戦下の西ドイツ駐在の米軍を舞台にしたブラック・コメディで、出世ばかり気にする上官、麻薬の密売・精製に勤しむ兵士たちなどが登場する。
以下、ネタバレ。
さんざん腐敗ぶりが描かれた後に、最後にニーチェの言葉「平和な時、戦争は自ら戦争をする」が引用されて終わる。この言葉はその後の世界を予言していると受け取れなくもない。つまりあれから15年経った世界は、冷戦が終わったのだから平和になっていても良かったはずなのに、むしろ不安定になり、戦争やテロが続発しているからである。
だがもしそのような意図で監督は、ニーチェの言葉を引用し、またこの作品を作ったのであるとすれば、私は、冷戦下の状況から現在を見ること、あるいは反対に現代の状況において冷戦下の軍のありさまを取り上げることに何の意味があるのかと問いたい。あの頃と現代では全くパラダイムが異なってしまっている。大国と大国の間の戦争と、大国と小国の戦争、あるいはテロリズムは同列には扱えないはずで、もはや冷戦下と現代では戦争/平和という言葉の意味すらずれてきていることだろう。
それゆえ、とりたててこの作品で冷戦と現代の不安的な世界との因果関係が論じられているわけでもないので、単純に冷戦下の米軍を取り上げることによって、現代との比較を促していると見なせるこの作品は、根本的に批判せざるを得ない。
しかしこの映画で気づかされたことだが、15年前のベルリンの壁崩壊がとても遠く見え、むしろベトナム戦争の方が身近に感じられさえする。 時代の変化を思わざるを得ない。
(12月下旬シネカノン有楽町にて)
実話を基にし、米軍内部が腐敗していることを暴き出しているため、9・11後全米で5回公開が延期されたという、いわくつきの作品である。ベルリンの壁崩壊直前、冷戦下の西ドイツ駐在の米軍を舞台にしたブラック・コメディで、出世ばかり気にする上官、麻薬の密売・精製に勤しむ兵士たちなどが登場する。
以下、ネタバレ。
さんざん腐敗ぶりが描かれた後に、最後にニーチェの言葉「平和な時、戦争は自ら戦争をする」が引用されて終わる。この言葉はその後の世界を予言していると受け取れなくもない。つまりあれから15年経った世界は、冷戦が終わったのだから平和になっていても良かったはずなのに、むしろ不安定になり、戦争やテロが続発しているからである。
だがもしそのような意図で監督は、ニーチェの言葉を引用し、またこの作品を作ったのであるとすれば、私は、冷戦下の状況から現在を見ること、あるいは反対に現代の状況において冷戦下の軍のありさまを取り上げることに何の意味があるのかと問いたい。あの頃と現代では全くパラダイムが異なってしまっている。大国と大国の間の戦争と、大国と小国の戦争、あるいはテロリズムは同列には扱えないはずで、もはや冷戦下と現代では戦争/平和という言葉の意味すらずれてきていることだろう。
それゆえ、とりたててこの作品で冷戦と現代の不安的な世界との因果関係が論じられているわけでもないので、単純に冷戦下の米軍を取り上げることによって、現代との比較を促していると見なせるこの作品は、根本的に批判せざるを得ない。
しかしこの映画で気づかされたことだが、15年前のベルリンの壁崩壊がとても遠く見え、むしろベトナム戦争の方が身近に感じられさえする。 時代の変化を思わざるを得ない。
(12月下旬シネカノン有楽町にて)
「 モーターサイクル・ダイアリーズ 」
評価:△
地味な作品ながら、恵比寿で長期公開されており、ヤフーのユーザーレビューや各映画雑誌でも高い評価を受けている。だが私自身は、嫌いではないが、そこまで賞賛されるほどの作品とは思わなかった。
キューバの英雄ゲバラが若い頃した南米縦断旅行の映画化である。各地で人々との出会いがある旅行の過程をひたすら描いているのだが、あっさりしている。様々なエピソードが語られるが、すべて深入りしない。英雄の若き日々であるにも関わらず劇的に描かない、それがこの作品の良さなのだろうと思いながらも、ゲバラである必要はあるのか、単なる若者のバックパッカーの旅行を扱うのとどこが違うのかという気がしなくもなかった。
旅行が淡々と描かれながらもあまり飽きは感じなかったので、つまらない作品ではないが、やはり2時間は長いか、1時間半ぐらいが良かったのでは。
(1月上旬恵比寿ガーデンシネマにて)
地味な作品ながら、恵比寿で長期公開されており、ヤフーのユーザーレビューや各映画雑誌でも高い評価を受けている。だが私自身は、嫌いではないが、そこまで賞賛されるほどの作品とは思わなかった。
キューバの英雄ゲバラが若い頃した南米縦断旅行の映画化である。各地で人々との出会いがある旅行の過程をひたすら描いているのだが、あっさりしている。様々なエピソードが語られるが、すべて深入りしない。英雄の若き日々であるにも関わらず劇的に描かない、それがこの作品の良さなのだろうと思いながらも、ゲバラである必要はあるのか、単なる若者のバックパッカーの旅行を扱うのとどこが違うのかという気がしなくもなかった。
旅行が淡々と描かれながらもあまり飽きは感じなかったので、つまらない作品ではないが、やはり2時間は長いか、1時間半ぐらいが良かったのでは。
(1月上旬恵比寿ガーデンシネマにて)
「悪い男」

評価:△
「春夏秋冬そして春」が良かったので、見た。賛否両論あった作品らしいが、それがよく分かる。ストーリーは簡単で、ある無口なヤクザが、一目惚れした女子学生をだまして売春宿で働かせるようにし、その女が売春するのを見守るというものだ。以前に予告編を見たが、あまりに陳腐な筋なので、見るのを止めたのだった。結論としては、やはり私も主人公のヤクザに都合のいいストーリー展開についていけなかった。だが見ている間、陳腐さや退屈は感じられなかった点が、この監督の才能なのかもしれない。
印象的だったのは、全く言葉を発しない無口なヤクザの目、ヤクザがマジックミラー越しに女の売春を見つめる場面、女が諦めの境地に至った時つけたカツラ、ラストの締めくくり方などである。
だが繰り返しになるが、女がヤクザを許し受け入れる気になる点がどうにもついていけない。これは「バッファロー'66」と同様の感想だ。
(1月18日池袋新文芸座にて)
「魚と寝る女」

評価:△
年末に見たキム・ギドク監督の「春夏秋冬そして春」がなかなか良かったので、見ることにした。一言で言うと、「春夏秋冬」のための習作という印象を受けた。
あらすじ:湖に、釣りをするためのいくつかの小屋がポツリポツリと浮かんでいる。女はそれらの管理をし、入れ替わり釣りにやってくる男たちに、売春を含めたサービスをしている。女はその中の1人と関係が深くなっていく。
「春夏秋冬」も湖の中心に小さな寺があって、僧と男の子が住んでいる話なので、湖に小屋が浮かんでいる設定は同じである。だが「春夏秋冬」がどの場面を取っても美しいのに対して、この作品では監督が狙っている構図は分かるのだが、様々な場面が今ひとつ決まりきらず、薄汚れた感じが残る。ストーリーも何かを暗示しようとしながら、明確なものになっていない。
湖に浮かんだ釣り小屋を管理しサービスする女という設定といい、人間が魚めいたことをする話といい、発想は豊かで、この監督が何かを持っていることをよく示している。より洗練された形でそれを示しているのが「春夏秋冬」と言えるだろう。今後も注目したい。
(1月18日池袋新文芸座にて)
「風の丘を越えて/西便制(ソピョンジェ)」

評価:△
93年に公開され高く評価されていたのを覚えている。だがその時は見なかった。あらすじは、韓国の唄の伝統芸能パンソリの名人である義父と旅をしながら、姉と弟がパンソリの修行をしていく、貧しさのあまり弟は途中で逃げてしまうが、大人になってから弟は2人の行方を捜すというものだ。
どことなくストーリーの進め方が泥臭い。各場面での3人の気持ちが浮き彫りになっていない。例えば、姉と弟(血はつながっていない)の間に、兄弟として育てられながらも微妙な恋愛感情が育っていたことが示されていたとしたら、もっと最後の場面など良かったのではないか。
私は帰り道で気づいたのだが、父は娘の唄に恨が混ざるために、娘を盲目にさせたと語っていたが、それ以前に娘は唄わなくなっていたのだから、視覚の世界がなくなれば、聴覚の世界に向かうだろうという意図もあったはずだ。父のすさまじい唄への執念だが、このあたりもっと明確に示されていても良かっただろう。
(1月20日池袋新文芸座にて)
「祝祭」

評価:△
一言でまとめると、韓国版お葬式。著名な小説家の母親が田舎で死んだので、その葬式のために様々な人々が集まってくる。韓国のお葬式の手順が示されながら、その間に様々なエピソードがさしはさまれている。
婆さんが死ぬまでの日々の回想、行方知らずだった小説家の姪の話、葬式で暴れる人々などの話が扱われるが、どれも深入りはしない。だから映画全体があっさりした印象を受ける。人の死を扱っているのだから、もっと凄みが出てもいいのではないかとも思え、まあ、物足らないと言えば、物足らない。
我が家も介護問題を抱えているので、その点で興味深かったのは、痴呆症の婆さんの介護をめぐって、どの人も少しずつ悪く、少しずつ良く描かれていたこと。つまり小説家は、自分が介護することはなく、金を送るだけだった。小説家の姉は、婆さんの介護をしたが、徘徊に困って婆さんを閉じ込めたり、弟が送った婆さんのための金を別のことに使ったこともあった。それゆえ小説家の書いた、婆さんが年老いていく童話が時々挿入されているが、これは現実逃避となってしまう際どい所で、映画全体の祈りのようになっている。
(1月20日池袋新文芸座にて)
