あらすじ
※レビュー部分はネタバレあり

 戦争に明け暮れた近代ユーゴスラビアを背景に、戦争に翻弄される男女3人の数奇な人生を描く。

 ナチス侵攻下でパルチザンとして活動するマルコは自分の所属する抵抗組織に友人のクロを加入させる。マルコはその抵抗組織の主要メンバーとして頭角を現し、ナチス撤退後には次第に表社会でも政治家として台頭していく。

 一方で、マルコはナチス支配で迫害を恐れるクロ、マルコの弟を含む抵抗組織の全員を丸めこんで巨大な地下室に退避させていた。
 ナチス支配が終わっても、マルコは彼らにナチス支配の終焉を知らせようとせず、抵抗運動のためと称して、地下で武器の製造を続けさせていたのだ。

 ナチス支配後、新たに大統領に就任したチトー大統領の元、マルコはその側近として権力をもつようになっていた。そして、地下に幽閉した抵抗組織に密造させた武器を転売して、巨大な利益をあげていたのであった。                              

 しかし、強権をふるってユーゴを統治したチトー大統領の死により、再びユーゴスラビアは混乱に陥っていくのだった。                

マルコとクロの両者が恋焦がれる女優ナタリアを絡めながら、ナチス支配からユーゴスラビア紛争までを背景にマルコとクロの変転する運命を描いていく。

レビュー
※以下、ネタバレあり

 パルチザンを義賊として扱うこともなく、その盗賊・ごろつきとしての実体を描いていたり、記録映画に本作の登場人物を紛れ込ませたり、全体を通してユーモラスな表現が見られる。

 戦争映画ではあるが、全編を通してファンタジスティックな演出が多用され、明るい雰囲気すらあるのが面白い。戦闘場面はほとんどない。繰り返し使用されるユーゴスラビア民族音楽が印象的である。クストリッツァ監督は本作が2作目のパルム・ドール受賞。

★ユーゴスラビアの歴史

 ナチスの支配下では共産党組織がパルチザン活動を行っていた。そして終戦後は共産党がユーゴスラビアで支配政党となり、チトー大統領が就任。チトー大統領はそのカリスマ性で社会主義独裁体制を敷き、ユーゴスラビアにつかの間の平和をもたらした人物。社会主義体制下でありながらソ連とは独立の地位を保ちつつ、制限的に野党の存在を認め、言論の自由も一定の範囲で許した。不安定ながらも、内戦を回避したが、その死後は長い紛争の歴史となった。


【映画データ】
1995年 フランス・ドイツ・ハンガリー
監督 エミール・クストリッツァ
出演 ミキ・マイノロヴィッチ、ラザル・リストフスキー
カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞