なんと実話!


『小さな独裁者』
第二次世界大戦末期。ドイツの敗色が濃厚となった、1945年4月。
脱走兵のヘロルトは、田舎道に乗り捨てられた車の中から、空軍大尉の軍服を発見。
ボロボロの服を脱ぎ捨て、その軍服に袖を通すと、たまたま通りかかった兵士から、本物の大尉と勘違いされてしまう。
気を良くしたヘロルトは、道中で出会う兵士たちを言葉巧みに騙し、仲間を増やしていく。
増長するヘロルトは、自分がヒトラーの密命を受けた親衛隊員だと語り、ついには他人の命を奪うまでに暴走し‥‥。

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監督・脚本はロベルト・シュヴェンケ。
なんと実話が基となっております。

状況が状況とはいえ
人という生き物の、なんと欲深いことか。

最初は命からがら逃げてきた脱走兵だったのに。
いつしか人の命を握る権力者に。

嘘を隠すためには、さらに大きな嘘が必要で。
その嘘が通ってしまった時
そこで引き下がるのか
調子に乗ってさらにその上にあぐらをかくのか。
ヘロルトは完全に後者。

面白かったのは、まわりの反応で。
鵜呑みにして信じる者。
疑いつつも言えない者。
信じていないけど利用する者。

形は違えど、結果としてヘロルトを担ぎ上げることになるという。
全ての物事が、「タイミング良く」悪い方向に進んだ良い例ですね。
悪いんだか良いんだか。悪いんですけど。

これは時代のせいかもしれないけれども
ヘロルトという人間の本質でもあって。
しかしこの残酷な出来事を引き起こしたのは
ナチスドイツの恐怖政治の弊害でもあるのです。

これが実話という恐ろしさ。
しかもヘロルトは20歳前後だったと言いますから。

通常の感覚を麻痺させる戦争の恐ろしさと
人間の業の深さを改めて思い知らされる作品でした。


☆個人的見どころ
 ・ヘロルトの段階を踏みつつの増長
 ・確認の混乱
 ・その後のヘロルト

(来年2月8日公開予定)