在日魂!


『焼肉ドラゴン』
1970年、高度経済成長期の日本。万国博覧会開催で盛り上がる大阪のとある町。
龍吉(キム・サンホ)と英順(イ・ジョンウン)の夫婦は、三人の娘と一人の息子を育てながら、下町で焼肉屋を営んでいた。
戦争で左腕と故郷を失くした龍吉だが、人情味のある人柄から、店にはいつも人が集まっていた。
次女の梨花(井上真央)は哲男(大泉洋)という男と結婚するが、短気で仕事が続かない哲男とはケンカが耐えなかった。
ある日、長女の静花(真木よう子)の結婚話が進み始めると、酔った哲男が難癖をつけだし‥‥。

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監督は舞台や映画の脚本を多く手掛けている鄭義信さん。
数々の賞を獲得した、自身の舞台の映画化だそうです。

なんと凄絶な家族の物語でしょうか。
それも恐ろしいことに、凄絶ではあるけれど、決して特別でもないのです。

高度成長期の日本の激流の中、在日コリアンという、当時は生き辛かったであろう生い立ちを背負い
必死に生きる人たちのリアルがここにありました。
時代的に、これもまた一つの「Always」ですね。

この一家のように、踏まれて虐げられても、日本で生きるしかなかった家族は、数えきれないほどいたでしょう。
時代を知らない僕なんかが、一概に言うことはできないですが、そこには少なからず戦争の弊害もあり。

それでも、現状に腹は立てども腐ることはなく。
時に家族で大喧嘩しながらも、絆は太く強く。
だからといって、決して美談にまとめられているわけでもなく。
汚い話や悲しい話も描かれていて。
その泥くささもまた、この映画の魅力で。

正直、100は理解できないですよ。
本当の芯のところは。
それでも、自分がこの境遇として生まれていたとしたら。
果たしてこれだけのパワーが出せただろうか?

役者さんたちの熱演が担った部分も大きく。
大泉洋さんや真木よう子さんは、期待通りに素晴らしくて。

期待以上だったのは井上真央さんですね。
今までの役柄にないイメージで
気が強く、関西弁でがなり立てる姿に圧倒されました。

昭和の時代の、在日コリアンの人たちを描いた映画は、これまでにもたくさんありました。
そこにはいつも、差別との戦いが付き物で。
それが良い悪いではなくですよ。

この映画は、舞台のほとんどをこの店中心に描いていて。
「差別とかもちろんムカつくけれども、とにかく今日を、明日を強く生きよう」
そんな力がみなぎっている映画でした。


☆個人的見どころ
 ・入り乱れる人間関係
 ・龍吉父さんの語り
 ・かめのこたわしの人