兄と弟、姉と妹。


『犬猿』
印刷会社で営業をしている和成(窪田正孝)が恐れる、乱暴者の兄・卓司(新井浩文)が出所して来た。
卓司は、和成に有無を言わさず同居をはじめ、コツコツ貯めていた貯金まで勝手に使われてしまう。
一方、由利亜(江上敬子)と真子(筧美和子)の姉妹は、倒れた父に変わって、家業の印刷工場。切り盛りしていた。
由利亜は社長としてバリバリ仕切っているが、芸能活動をやりながら適当に事務をする真子にイライラする毎日。
そんな由利亜は、工場に出入りする和成に好意を寄せていたが、それを知った真子が見せつけるように和成に接近し‥‥。

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「銀の匙」「ヒメアノ~ル」などの、吉田恵輔監督です。

脚本の妙、そしてキャストの妙ですね。
4人の配役とバランスが、絶妙に良かったです。
脚本がキャストを生かし、キャストが脚本を生かし。
面白かった~。

特に新井浩文さん。
この人のヤバい役は、本気のヤバさに見えて本当に怖い!
気弱ながら兄にやり返してやろうと狙う、弟役の窪田正孝さんも好演で。

姉妹のバランスも絶妙。
頭がよくて気が利いて、家事もできるが見ためおばちゃんの姉をニッチェの江上ちゃん。
童顔巨乳の男殺しなビジュアルを持ちながら、頭わるわるの妹役・筧美和子さん。
妹はビジュアルで劣る姉をどこか見下していて
できの悪い妹をいつもボロカス言う姉は、実はルックスの良い妹には勝てないかもと思っていて。

同性の兄弟・姉妹って、多かれ少なかれ比べられながら育つもので。
「お兄ちゃんはこうだった」
「妹はこうなのに」
的な。

それが、卓司と和成、由利亜と真子のように、真逆のタイプならなおさら。
男の女の、うらやむところが違うというのも、またリアル。

これがまた不思議なもんで。
さんざん嫌っている部分が、実は羨ましかったり
普段ボロカス言ってんのに、他人に言われたら腹が立ったり。

「兄弟(姉妹)あるある」
ともいえる話をふんだんに盛り込みながら
ただのあるある映画で終わらず。
クライマックスでは、2組の兄弟・姉妹に、本当の仲を試されるような試練が。
その時、どんな行動を取るのか?

ラストもニヤリと笑わされて。
決して派手ではないけれども、印象に残る1本でした。


☆個人的見どころ
 ・兄弟・姉妹の妙
 ・メリーゴーランド
 ・マッサージチェアと座椅子