嫌な富豪と訃報記者と。


『あなたの旅立ち、綴ります』
富豪の老女ハリエットは、何不自由ない暮らしをしているが、どこか孤独だった。
ある日、新聞の訃報記事欄を見たハリエットは、自分の訃報記事の文面を前もって確認しておこうと画策。
かつて自身の会社が大口のスポンサーをしていた新聞社を訪れ、訃報記事担当のアン(アマンダ・セイフライド)を紹介してもらう。
上司の命令で渋々引き受けたアンは、ハリエットの近親者に話を聞きに回るが、悪評ばかり。
できあがった当たり障りのない訃報を読んで、これではだめだとハリエットは行動を起こす‥‥。

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「隣人は静かに笑う」「U23D」などの、マーク・ペリントン監督です。

偏屈な年寄りが、人生の終焉を前にして歩みを振り返り
自らの愚かな部分に気付き、反省と悔恨を抱いて‥‥
的な映画は、ここ数年特に増えた気がしますね。
「最高の人生の見つけ方」とか「アンコール!」とか、すごく面白かったですし。

でもこの映画のばあさんは、過去を振り返って嘆くどころか
やりたい放題が加速するという。笑
結局、人間なんてそう簡単に変われるものではないですから。

高慢で皮肉屋で、でも金だけはあるという、タチの悪いばあさん・ハリエット。
すごく嫌なババアなんですけど、結局間違ってないんですよね。
生きる上での人生哲学が。
成功者でもありますから。

ただ、ものすごく優しさに欠ける(良く言えば不器用な)性格なので
ついハッキリ言い過ぎてしまい、相手を傷つけてしまうことも少なからず。
そのせいで誤解されたり、疎まれたり嫌われたり。

アンも途中で嫌気がさすんですけど
そこで良い働きをしていたのが、施設にいた黒人の小生意気な少女ブレンダ(アンジュエル・リー)。
この子がまたかわいいんすよ。
おませさんで。

ブレンダが絶妙な緩衝材になって、ハリエットとアンは再接近。
ハリエットは、全員が全員、自分みたいな人間ではないと気付き。
アンは、正直なハリエットの良いところを認めることにより
自分が心の隅に追いやっていた、心の中のもやもやと向き合うことにするのです。

詳しく書きませんけど、娘との再会のシーンはかなりパンチがきいてましたよ。
普通は‥‥なのに。
この映画が、そしてハリエットが、おやじ系統の映画と一線を画していることを表す、良いシーンでした。

映画の中であれ、性格の悪いやつは好きになれないんですけど
ハリエットは、数少ない愛すべきクソババアでした。

名女優シャーリー・マクレーン。
さすがです。


☆個人的見どころ
 ・愛すべきクソババア
 ・娘との再会
 ・いきなりのキス