実在の日系人の話。


『エルネスト もう一人のゲバラ』
キューバのハバナ大学に留学してきた、日系二世のボリビア人・フレディ前村(オダギリジョー)。
医師になることを夢見て、毎日勉学に励んでいたところ、キューバ危機に直面。
ある日、革命軍のチェ・ゲバラに会ったフレディは、彼のカリスマ性に強く惹き付けられる。
やがて自らも革命軍に志願し、ゲバラの部隊に配属されたフレディ。
戦士名としてゲバラのファーストネーム「エルネスト」を授けられ、戦地へと身を投じることに‥‥。

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監督は「大鹿村騒動記」「ジョーのあした」など、数多くの作品を手掛ける阪本順治さん。
実在した日系人・フレディ前村さんが物語のモデルとなっております。

内戦や革命を経験したことのない僕なんかにとっては
彼らの怒りや絶望は、想像もできないのですが。
祖国を想う気持ち、平穏を願う気持ちは、我々平和慣れしてる人間より、数倍強いのではないかと。

その中の一人が、フレディ。
戦禍や貧困にあえぐ人たちのため、医学を学び。
必要とあらば銃を持ち。
遊びたい、恋をしたいなど、自身の欲に蓋をして
祖国のために、短い生涯を燃やし尽くしたのです。
彼に悔いはないとしても、過酷な人生ですよ。

なのですが、「もう一人のゲバラ」と言うサブタイトルが、ハードルを上げ過ぎてしまった気がします。
さもキューバ革命の裏には、「実はゲバラ並みの働きをした日本人(日系人)がいた」と言うような触れ込みなんですが。

見終わってみれば、フレディさんはボリビア生まれのボリビア育ち。
移民二世ではあるのですが、特に日本に強く想いを馳せるエピソードなども出てこず。
革命軍のたくさんの兵士の中に、日系人がいた。というくらいで。

フレディさんの国を想う気持ち、憂う気持ちの強さや
その行動力と、後進に与えた影響などは、揺るぎないもので。
観ていて胸が熱くなる部分は、大いにあったのですが。
宣伝のためとはいえ、無理に日本と結びつけ、大きな話にした感が否めなかったです。

冒頭で、チェ・ゲバラが自らの意思で時間を割いて、広島を訪れるシーンがあったのですが。
そこがすごく印象的でしたね。
「なぜきみたちは怒らないのか?」
「(原爆慰霊碑の文言を聞いて)この文には主語がない」と。
彼の根底にある意志の強さ・アメリカへの怒りが、垣間見えるエピソードでした。

なんやかんや言いましたが、全編現地の言葉で挑んだオダギリジョーさんの熱演は素晴らしかったです。
フレディ前村さんもそうですが
祖国のために志を高くもちつつ、命を燃やす若者たちの物語は、胸が痛くなりますね。


☆個人的見どころ
 ・祖国への想い
 ・オダジョーさんの熱演
 ・ゲバラの広島訪問