佐村河内守ドキュメンタリー。
 


『FAKE』

「交響曲第1番”HIROSHIMA”」や、ゲーム「鬼武者」の音楽を担当し、聴覚障害を抱え、「現代のベートーベン」と呼ばれた作曲家・佐村河内守。

2014年、彼のゴーストライターであった新垣隆氏の告発により、彼が作曲していないこと、本当は聴力があるということが報道される。

世間は騒然となり、佐村河内守は稀代の大嘘つきとされ、一転、新垣氏は時の人に。

ドキュメンタリー監督の森達也氏は、佐村河内守に取材を申し込み、彼もそれを受けることに‥‥。

 

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「A」「A2」などのドキュメンタリー監督・森達也さんの作品です。

ドキュメンタリー映画としては、今年一番の話題作と言っていいんじゃないですかね?

 

佐村河内さんと新垣さんのあの騒動は、日本に住む人なら誰もが知るニュースに。

しかし、佐村河内さんはあの謝罪会見以降、人前に姿を現さず。

一方、新垣さんはメディアに引っ張りだこで、バラエティ番組からファッション雑誌にまで取り上げられる時の人に。

 

僕はこの映画を観るのが遅くて、まわりで先に観た人たちに聞いたら

「笑える映画」だと。

確かに、そういう部分はたくさんありましたよ。

佐村河内さん宅のテーブルに、新垣さんがチョイ悪風に表紙を飾ったファッション誌が置いてあったら、面白いじゃないですか。

 

でも、それ以上に恐ろしいなと。

一度穴に落ちたら骨までしゃぶりつくすような報道のあり方と

興味のあることは、たとえその出所が不確定だとしても、少しでも新しい情報を求め、信じる一部の人たち。

陥ってしまった人は、仮に間違いを訂正しても、何も聞き入れてもらえない状態に。

 

本当に恐ろしいですね。

この映画を観る限り、佐村河内さんは、「音」はわずかに聞こえて来ても、「言葉」を認識するのは困難みたいです。

でも、世間一般の人は、今更そんなことを聴いても、認識を改めないでしょうね。

「聞こえていた方が面白いから」「新垣さんが聞こえると言っていたから」

なにより、「もう彼に興味がないから」。

 

告発記事を書いて賞を受賞した神山典士氏ですら、もうこの件には関わっていないようで。

この映画の取材には応じなかったそうです。

それには事情があるのかもですけどね。

 

映されている佐村河内さんを観て思ったことは

この人は今でも「作曲した」と信じていること。

罪に問われているのは、「作曲していなかったこと」ではなく

「共作だと言わなかったこと」だと思っていて、そこに揺るぎがないこと。

 

ちょっと小保方さんに通じるものがあるのかなと。

あの人は今も、「STAP細胞はある」と、本気で信じていると思うんです。

 

でも共通して言えることは、世間にその証拠を示せなかったこと。

「STAP細胞」「作曲能力」示せなかったんです。

示せなかったけど、自分の功績がゼロではないと、今も思っているのです。きっと。

示せないものは信じられないですよね。僕も信じられません。

 

もう一人のキーマン、新垣隆さん。

この人が、騒動をさらに大きなものにしたキーマンなんじゃないかなと。

音楽的才能のことは、僕はよく分からないんですけど。

多分ですが、ものすごくサービス精神が旺盛なんだと思うんです。

「これをやったらみんなが喜ぶんじゃないかな」

と思ったことを察知する嗅覚があって、注目を浴びる自分も嫌いではなくて。

本能的にそっちの方に行動にうつしちゃう。みたいな。

 

だから、騒動以降、ファッション雑誌でチョイ悪スーツを来て

バラエティ番組でクワガタを鼻に挟み

それと同じような感覚で、「あの人、聞こえてますよ」と。

サービス精神で言っちゃったんじゃないかなと。

だって、その方が面白いんですもん。

あくまで僕の予想ですよ。

 

そしてこの映画で重要なのは、支えてくれる奥さんの存在。

は佐村河内さんだけのドキュメンタリーかと思っていたのですが

自業自得とはいえ、一時は日本で最大級の逆風を受けた佐村河内さんを、飛ばされまいと支え続けた彼女。

なんでしょうね。「強さ」とか「夫婦愛」とかだけでは、表しきれないような強い絆を感じました。

この人がいて良かったな。と、なんだかすごくそう思いました。

 

これを観て、佐村河内さんを擁護するとか、さらに嫌うとか。個人的な感情はないですけど

テレビやメディアが推測でしか報じない部分の現実を、観ることができた気します。

 

今も調べれば各地の映画館で上映してますので、興味のある方はぜひ。

 

 

☆個人的見どころ

 ・新垣さんのテレビ出演を見つめる佐村河内守

 ・奥さんの存在

 ・ラスト