瀬戸と内海がしゃべるだけ。


『セトウツミ』
放課後にいつも河原に座っている、瀬戸想(池松壮亮)と内海小吉(菅田将暉)の2人。
瀬戸はネクラなガリベンタイプ、内海はチャラいヤンキー系と正反対だが、妙にウマが合った。
いつもくだらないことばかり言っている2人だが、時には真面目に語り合うことも。
そんな内海には、恋心を抱いている樫村さん(中条あやみ)という同級生がいた。
しかし樫村さんは、瀬戸のことが気になっていて‥‥。

---------------

此元和津也さんの人気マンガの実写映画化です。
監督は「まほろ駅前」シリーズの大森立嗣さん。

なんだこの不思議な映画は。
もちろんちょいちょい登場人物が出てきますが、ほぼ全編、瀬戸と内海が話しているだけ。

なのに

めっちゃ面白いんですよ。いやマジで。


これは漫才ですね。
それも、とても良くできた。

僕ごときが漫才を語るなんて気恥ずかしいんですけど
よく言われる話ですが、見知らぬ2人が適当なことをしゃべってて、それが何だか妙に面白い!っていうのが理想の漫才やと、僕も思ってて。

居酒屋で、酔ってるサラリーマンにシラフで突っ込む仲間の言葉が、妙におかしかったり
スーパーの前でしゃべってるおばちゃん同士の会話が、どうでも良すぎて面白かったり
電車でしゃべってる女子高生の中身とテンションのギャップに、ついクスッとしてしまったり。
そんなことの延長だと思うんです。漫才。

池松さんの演じる内海と
菅田さんの演じる瀬戸。
これがまあ見事で。

「言いそう」なんですよね。
瀬戸と内海の発する言葉が。

2人とも学校にいたようなタイプで。
勉強はできるけど、理屈っぽくて他人を見下してるような内海。
ヤンキーっぽいけどヘタレで、明るいバカの瀬戸。

この2人の会話が、本当に「言いそう」で。
なおかつ、ツッコミとボケとして、見事に成立してるんです。
大袈裟でなく、感動するほどに。

それでまた、2人の関西弁も完璧。
ネイティブかと思うほどに。
だからこそ、樫村さんの関西弁の拙さが、ちょっと目立ってしまったのが残念でしたが。

残念ながら原作は未読なのですが、がぜん興味が湧いてきましたよ。
此元さんは、芸人とかの経験がおありなんだろうか?
養成所の頃のコンビ名とか、名字をくっつけただけって、ありがちですし。
「セトウツミ」なんて、ちょっと漫才を意識してるのかと思って。

そして、その原作を、きっちりテンポ良く映像化して見せた監督さんの手腕も素敵。
会話劇だからこそ、難しかったでしょうに。

河原で時間を潰すだけの青春があってもええやないか」
その言葉が、負け惜しみに聞こえない素敵な映画でした。


☆個人的見どころ
 ・菅田さんの瀬戸と、池松さんの内海
 ・神妙な面持ち
 ・ライス