是枝監督最新作。


『海よりもまだ深く』
15年前に1度だけ文学賞を受賞したことがある、小説家の良多(阿部寛)。
今は本業では食べて行けず、取材活動と言う名目で、探偵事務所で働いていた。
良多は離婚した元嫁の響子(真木よう子)に未練タラタラで、新しい彼氏とのデートも尾行する有り様。
ギャンブルも大好きで、金にだらしなく、月5万の養育費の支払いも数ヶ月滞っている。
そのせいで、月に一度の、一人息子の真悟に会う時も、響子に渋られ‥‥。

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「海街diary」などの是枝裕和監督です。
上記以外にも、樹木希林さんや小林聡美さん、リリー・フランキーさん、池松壮亮さんなど、素敵なメンバーが出演されております。

これはもう、永遠に続くことなんでしょうか。
夢を追う男と、現実を見る女との隔たり。

若い頃はそれで良かったのかもしれないけれども
子供を授けり、自分も年を取ってくると、いろんな現実が目の当たりに。
子供の養育や、親の介護、自分の老後。
年を取るごとに、出費はかさむばかり。

「10年後どうすんのよ」と女
「10年後までには、なんとか」と男
(劇中のセリフではないですよ)

真っ当に働いている男性ならば、何の問題もないんでしょうけど。
良多は小説家を目指し、過去には受賞も。
そういうのが、一番タチ悪いんですよね。笑
すっぱり諦められない、足を洗いづらいというか。
僕も含め、まわりにいっぱいいますねー。まいったなこりゃ。

それでも、真剣に小説と向き合っていれば、まだ何かが変わるかもしれないのですが
良多は過去の栄光をいつまでも背負い
プライドだけは一人前で、ダラダラと日々を過ごすのです。

また阿部寛さんが上手なんですよ。
人は悪くないけど、生き方が上手くない良多を好演しておられました。

そして真木よう子さんも。
良多が憎いわけではない。
嫌いになったわけでもない。
でも、もう一緒にいることはできない。
その微妙な心情を、すごく繊細に演じてらっしゃいました。

また、次に選んだ彼氏がリアルで。
クセがあって鼻につくとこもあるけど、経済力はあるっていう。リアル!

そして、何と言っても樹木希林さんが素晴らしいんです。
昔から演技派の樹木さんですが
ここ数作は神がかって凄いです。

不器用な息子が、嫁や孫に迷惑をかけていると知りながら
それでも寄りを戻させたい母としての心情に、思わずこちらももらい泣きですよ。
なんであんなにナチュラルに、笑って泣けて、お話しできるんだろう。

皆さんのお芝居に見惚れてしまいましたが
贅沢言うと、ストーリー的にもう1つグッと来るものが欲しかったというのが、正直にところです。

いや~、それにしても、阿部寛さんと樹木希林さんの会話は、本当の親子のようやったなあ。


☆個人的見どころ
 ・親と子
 ・押入れの通帳
 ・樹木希林さん