エンケンさん!


『木屋町DARUMA』
かつては京都・木屋町の裏社会を束ねていた勝浦(遠藤憲一)は5年前、子分であるサトシの失態の責任を取り、四肢を失う。
今は兄弟分の古沢(木村祐一)に遣わされた坂本(三浦誠己)に、日々の面倒を見てもらっていた。
そんな勝浦の今の仕事は、借金の取り立て屋。
ある日も坂本に連れられ、ある家の取り立てに。
するとそこは、勝浦が四肢を失う原因となったチンピラ・サトシの身内の家で、坂本はある事実を知ってしまう‥‥。

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過激過ぎると物議を呼んだ丸野裕行さんの同名小説を、俳優でもある榊英雄さんが映画化です。

同期の元芸人で、今は俳優をやっている三浦誠己から連絡が来て、この映画を観て欲しいと。
こんなこと言ったことがない男だったので、新宿で昼~夕方くらいの映画しか観ない僕が、渋谷で夜しかやってなかったこの映画を観てまいりました。(恩着せがましい)

いや~、めちゃくちゃ攻めてましたね。
表現と規制に対して。
テレビじゃ絶対放送できないです。
四肢のない、闇金の取り立て屋。
ソープに沈められる女子高生。
年金詐欺、近親相姦、覚醒剤中毒‥‥
無理ですやん!笑

設定だけではなく、話の中身もまあ過激。
正直、目を背けたくなるようなシーンも少なくなくて。

でも、ただ過激なだけじゃないんですよね。
法が厳しくなる中、無茶な仕事にも手を出し
シマだ金だと、現実的な争いばかりになる暴力団の中で
四肢を失っても自分の筋を曲げない、昔かたぎの任侠精神を持つ勝浦と。

その勝浦を一番近くで世話しながらも、彼の腹のうちが理解できない坂本。
その坂本には過去があり、ヤクザをやりながらもヤクザの仕事が受け入れられない理由が‥‥。
その2人の探り合い・ぶつかり合いに、いつしか夢中で見入っておりました。

ストーリーもそうですが、なにより、遠藤憲一さんの芝居の迫力に圧倒されましたね。
もののけのような薄気味悪さと
任侠に生きる男の眼光の鋭さと。
これを同時に表現できる役者さんが、日本に何人いるでしょうか。

それに対する坂本を演じる三浦も、遠藤さんに引っ張られるように熱い芝居で。
見応えありましたよ。2人のやりとり。

あと、組織内で幅をきかせてきた金内役の木下ほうかさんがまた凄くて。
柔らかな口調なのに凄味があり。
ああいう人が一番怖いんですよね。

他にも、珍しくやられっぱなしの役だった寺島進さんや
かわら割りのCMで人気急上昇の、武田梨奈さんの体を張った演技など。
演者さんたちから、(もちろんスタッフさんからも)すごく熱を感じる映画でした。

キャストさんの名前だけ見たら、もっと上映館が多くてもよさそうなんですけどね。
難しいんやろうなあ。内容的に。

まだ各所で上映は続いているようです。
きっと万人に受け入れられる映画ではないですが
映画好きの人は、ぜひ足を運んでみてくださいな。
観た人と、この映画の話をしたくなりますよ。


☆個人的見どころ
 ・迫力のエンケンさんと、負けてない三浦
 ・木下ほうかさんめっちゃ怖い
 ・衝撃のラスト