『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
1981年のニューヨーク。
移民のアベルと妻のアナが、一旗揚げようと全財産をつぎ込んで設立した石油会社は、順調に業績を伸ばしていた。
激しい競争の中、クリーンなビジネスが信条の会社だったが、やがてガソリンを運ぶトラックごと強奪される事件が頻発。
さらには、脱税疑惑で検察から狙われたり、家族に被害を及ぼすような脅迫が。
悪い噂が広まったせいで、銀行からの融資が取りやめになったため、アベルは会社を存続させるために奔走するが‥‥。
---------------
「オール・イズ・ロスト」のJ・C・チャンダー監督です。
恐らくですけど、昔の燃料ビジネスなどは、ギャングとのつながりは当たり前で。
利益が大きい分だけ、リスクも大きいわけですから。
いかに地元に根付き、危険を避けてビジネスを成功させるかが重要だったんですね。
例えそれが、ギャングの力を借りることになろうとも。
そこで、ギャングとのつながりなしに、クリーンなビジネスで業績を伸ばし出したアベルの会社。
業績が良い上に移民とくれば、地元の古参の業者が面白いはずもなく。
誰からとは分からない嫌がらせが始まるのです。
肝なのは、それだけ嫌がらせを受けても、決してアベルがダーティな手法を取りたがらないということ。
恐らく、自分が移民という立場を理解していて。
少しでもほころびを見せれば、右から左からいろんなヤツが、会社を潰しに来るのです。
自由の国を謳いつつも、新参には冷たいアメリカの本質を理解していたのですね。
だからって、アベルが正義の味方のような男かというと、そうではなく。
逆に、ビジネスに関しては合理主義でクール過ぎるほど。
従業員の安全よりも、会社の体裁を気にする、冷酷な一面も。
そこで出てくるのが、妻・アナの存在。
アナはアベルよりも、ある意味でたくましく。
自分たちを守るためには、法に縛られててはダメだという考えで、時にアベルを混乱させるのです。
どちらが正しいとも一概に言えない2人のやり取りに、いろいろと考えさせられました。
さて、会社のピンチを乗り越えて、さらにランクアップさせることができるのか。
それとも、大きな負債を背負って、一家を路頭に迷わせることになるのでしょうか。
金持ちも貧乏人も、生きるために必死な時代だったんですね。
見応えがありました。
☆個人的見どころ
・どうなる会社
・たくましい嫁
・散髪屋で
(10月1日公開予定)