『この国の空』
太平洋戦争の終わりが近づく東京で、19才の里子(二階堂ふみ)は母(工藤夕貴)と暮らしていた。
空襲に怯える日々に加え、横浜から焼け出されて来た母の姉(富田靖子)とも暮らすことになり、ますます生活は困窮。
その家の横には、体が少し弱いため徴兵を免れ、妻と子を疎開させて一人で暮らしをしている市毛(長谷川博己)が。
女手がないため、いつしか市毛の身の回りの世話を任されるようになった里子。
そうするうち、いつしか里子の中に、潜んでいた女性の本能が芽生えだし‥‥。
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「大鹿村騒動記」「さよなら歌舞伎町」などの脚本を手がけた荒井晴彦さんが、「身も心も」以来、17年ぶりにメガホンを取ったそうですよ。
主演は二階堂ふみさん。そして、長谷川博己さん。
戦時中のしかも終戦間際ですから。
国民は倹約と質素な暮らしを強いられ。
ほんのちょっとしたことでも、不謹慎だ非国民だと言われてしまうような。
つまりもう、国も国民も、疲弊が限界に来ていた時代で。
里子が徐々に市毛を意識し、性の対象として観るようになっていく過程の描写が繊細で。
唇や指先を、つい目で追ってしまうような。
でも、戦時中という押し込められるような空気の中、自分の感情を殺そうと戦う里子。
そして、それを見透かすような母の一言。
ただ、そこまでたどり着くまでが長くて。
その当時の時代背景を見せてくれていたんでしょうけど、ちょっと僕には丁寧すぎるように感じました。
予告編などを見て、既婚者の男と、未婚の若い女性との、禁じられた愛の話なのだろうとは思っていたのですが。
なかなか進展がないというか、そこまでに至らないというか。
僕が早くエロいとこを見たかったんだろうか。笑
とは言え、母と姉(叔母)の度重なるやりとりは、肉親と言えども優しくできない、戦時中の空気を濃く感じられましたけど。
生きるのに必死だったのは、戦地の兵隊さんだけじゃなかったのだ。
きっと、里子と市毛のような言えない関係は、いろんなところで実際にあったんでしょうね。
なにもかも押さえつけられた時代ですから。
どこかで何かしらで発散しないと。
そういった空気が伝わってくる映画でした。
ラストのセリフは印象的でしたけど
もう1歩踏み込んだところを見たかったです。
なんかこう、2人が抗えずに溺れて行くようなところを。
☆個人的見どころ
・里子と市毛の距離感
・母vs姉
・トマト!