戦争を終わらせるために。


『日本のいちばん長い日』
1945年7月。太平洋戦争末期。
連合国側にポツダム宣言受諾を言い渡された日本。
受け入れれば降伏、拒否すれば本土決戦だが、そうなったところで敗戦は濃厚だった。
連日連夜の閣議でも結論は出ず、ついに8月、広島と長崎に新型原子爆弾が投下されてしまう。
昭和天皇や鈴木貫太郎首相、阿南陸軍大臣は、これ以上の被害拡大を抑えるべく、戦争終結の方法を模索するが‥‥。

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半藤一利さんのノンフィクション小説を、「クライマーズ・ハイ」や、「我が母の記」などの原田眞人監督が映画化です。


あの戦争を終わらせることが、こんなに大変だったなんて。

僕が社会で習ったのは

東京をはじめ、大都市は軒並み空襲で焼け野原にされて

広島と長崎に原爆を落とされ

8月15日に終戦。

それだけだったのに。


もう戦う余力がなく、それこそ満場一致くらいの感じで終戦を受け入れたのかと思いきや

まだまだ戦う心が折れていない人間が、たくさんいて。

そりゃあそうですよね。

若い人なんて特に、命を賭して戦えと教育されてきたんですから。


この戦争がここまで泥沼化してしまった一因として、陸軍と海軍の意地の張り合いがあったようで。

お互いが負けじと無理をしてしまったために、そのしわ寄せが国民に来てしまい。

それでも、若き兵隊たちは、上司を信じ、国を信じて、大国アメリカと戦う姿勢を崩さず。

止めなければならない大人の中にも、まわりが見えなくなっていて、信じられない命令をくだす人がいて。

でも、戦争ってそういうことなんでしょうね。


戦争を終わらせようと判断した昭和天皇。

そのために任命された鈴木貫太郎首相と、阿南陸軍大臣。

あの混乱の時代に、冷静に情勢を見ることができた人たちがいなかったらと思うと、ゾッとしますね。


阿南陸軍大臣役の役所広司さんや

鈴木貫太郎首相役の山崎努さんの、深みのあるお芝居はもちろん素晴らしかったんですが

昭和天皇役の本木雅弘さんの存在感が凄くて。

穏やかで優しくて、品があるけれども、どこか親しみやすくて。

きっと、本当にこんな方だったんだろうなと、すごく納得できました。


そして、降伏に反対する若き陸軍将校役の松坂桃李さん。

自分の身を挺して、最後まで徹底的に戦おうとする姿勢も、国を想ってのこと。

若さが先走る熱い将校役を、体いっぱいに熱演しておられました。


ポツダム宣言受諾決定から15日の玉音放送まで
たったの数日が、ここまで険しい道のりだったとは知りませんでした。

争わなくていい人同士が争い、散らなくていい命が散り。


そんな大きな流れの中でも、宮内庁の人たちや、ラジオ局の人たち

要人の妻や家族など、細かな人間ドラマも描かれていて。

2時間を超える作品でしたが、見応えがあってあっという間でした。


これがほんの70年前に、実際にあった話なんて。

若い人たちには、特に観てもらいたい映画です。


☆個人的見どころ
 ・戦争を終わらせるということ
 ・本木さんの昭和天皇
 ・ 阿南の妻の物語