抱きしめられなさい。


『きみはいい子』
新米教師の岡野(高良健吾)は、小4のクラスを担任しているが、頼りない彼は子供たちから少しなめられている。
雅美(尾野真千子)は、夫が単身赴任中なため、3才の娘と暮らしているが、ついカッとなると暴力をふるってしまう。
一人暮らしの老人あきこ(喜多道枝)は、少し痴呆の症状が表れだしていて‥‥。

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中脇初枝さんの小説を基に作った映画だそうです。
監督は、「そこのみにて光り輝く」などの呉美保監督。

物語は大きく3つのパートに別れてまして。
新米教師岡野が、学校で子供や同僚の教師、PTAを相手に翻弄される話。
雅美が、外面はいいけど、子供を虐待してしまう話。
痴呆気味の老人と、自閉症の少年の話。
それらは全て、同じ町で起こっている出来事で。

なんというか、冒頭からずっと不快な映画で。
いや、映画自体がじゃないですよ。そういうストーリーなんですけど。
もちろん、子供を直接傷つけないようにしているにしろ、延々と幼児虐待シーンを見せられたり。
先生のことをなめくさった、生意気なガキどもが好き放題に暴れまわったり。
統率力のまったくない、若手教師がオロオロしていたり。
子供の粗相を学校のせいにする親が現れたり。
そんな親に何も言えず、問題を起こさないのが一番だと信じている学年主任のばばあがいたり。

なんだこれは、と思って観ていました。
小学校を扱う最近のドラマもだいたいそうですけど
本当に今の学校って、こんなんなのか?と。
自分の中の常識では考えられないことが、まかり通り過ぎていて。

もちろん、そのままで終わるわけはなく。
そもそも、生まれた時から悪い人間なんていないんだよ、という映画で。
性善説と言うんですかね。
それはすごく伝わってきたんです。

生意気なクソガキでも、純朴な子供の顔を見せる瞬間は必ずあるし。
虐待する親が、心の底から我が子を憎んでいるかといえば、そうではないし。
それは分かるんですけど。
でも結局、ほとんど何も解決してないように思えたのです。僕は。

虐待をしていた雅美は、自分を責めながらも、きっとこの後も虐待を続けるだろうし。
岡野先生は、きっとこれからも児童になめられるだろうし。
なにより、母親のクズ彼氏に虐待されている少年のくだりは、一番酷いなと思いました。
唯一、痴呆の老女と、自閉症の子供の触れ合いには、温かい気持ちになりましたが。

序盤から嫌なものを見せておいて、最後に印象がバーンと逆転するパターンであって欲しかったんですけど
僕の中では、ほぼ挽回できないまま終わってしまったように見えてしまいました。

学校で、生徒・先生・親御さんたちが一緒に見て
この後どうする、どうなる、どうすればよい、などを話し合うには、良い教材かもですね。


☆個人的見どころ
 ・宿題発表
 ・学級超崩壊
 ・明るいおばちゃんな池脇千鶴さん