『あん』
小さなどら焼き屋の、不愛想な雇われ店長・千太郎(永瀬正敏)。
ある日、徳江(樹木希林)という老女が現れ、ただ同然の給料でいいから働かせてくれと懇願する。
最初は断った千太郎だが、徳江の作ったあんのおいしさに驚き、働いてもらうことに。
おいしくなったどら焼きは評判になり、店は瞬く間に大繁盛。
ところが、徳江はある秘密を抱えていて‥‥。
---------------
「殯(もがり)の森」などの、河瀬直美監督です。
原作はあの金髪先生・ドリアン助川さん。
すごいです。樹木希林さん。
どら焼き屋で働けると決まった時の、あの喜び方。
年頃の少女が、想いを寄せる男子から告白された時のような
その心からあふれ出る、純粋な喜びに、涙がこぼれそうになってしまいました。
そして、いろんなことがあった人生を恨むことなく
花に、空に、人に、この世に感謝し、無邪気なほど愛する姿に
こぼれる寸前だった涙が、ついにポロポロとこぼれてしまいました。
そして、千太郎役の永瀬正敏さん。
彼にもある過去があり。
訳あってどら焼き屋の雇われ店長になった男が
徳江と出会い、なかば捨てかけていた人生を再び見直す姿を、憂いたっぷりに演じてらっしゃいました。
さらに、どら焼き屋の常連の女子中学生ワカナを、内田伽羅さんが好演してらっしゃって。
それぞれ辛い事情を抱えながらも、出会ったことにより、人生の転機に。
その辺りの心情が、四季の移り変わりとともに、繊細に描かれておりました。
正直、観ていられないくなるような酷いシーン(映画的にではなく、世間の世知辛さ的に)もあり
こんな世の中を悲観しまくりたくなるような気持ちにもなったのですが
徳江の純真さに浄化され
ラストの千太郎を観て、もう一度前を向くことができました。
静かな映画でしたが、じっくりと、深くまで引き込まれて行く作品でしたね。
いや~、本当に樹木希林さん凄い。
☆個人的見どころ
・吉井徳江
・嫌な女・浅田美代子さん(もちろんお芝居ですよ)
・どら焼きと牛乳最強