桜田門外の変。その後。
『柘榴坂の仇討』
彦根藩士で、大老・井伊直弼に仕える志村金吾(中井貴一)。
ある日の登城の途中、井伊が暗殺される事件が発生。
目の前にいながら大老を救えなかった金吾は、切腹も許されず、犯人捜しと仇討ちを命ぜられた。
それから十数年経ち、明治の世になっても、金吾の犯人捜しは終わらず。
だがついに、最後の犯人・佐藤十兵衛(阿部寛)を見つけるが、奇しくもその日、政府が仇討ち禁止令を発する‥‥。
---------------
浅田次郎さんの短編小説が原作だそうです。
監督は「沈まぬ太陽」の若松節朗さん。
なんとまあ、骨太で重厚な日本映画でしょうか。
息が詰まりそうでしたよ。
明治になると共に、侍の時代が終わりを告げ。
切腹・仇討ちなどが、時代遅れのものとなっていっても
金吾の武士道は、犯人を見つけるまで、主君の仇を打つまで終わらず。
江戸の時代、武士が責任を取るといえば切腹だったのですが。
金吾はそれすら認められず。
「生き延びた!」じゃあないんですよね。
「生かされ続ける方が恥」なんですね。感覚的に。
しかし、上司の命令は絶対の時代。
金吾は雨の日も雪の日も、地面をはいずるように犯人を捜すのです。何年も何年も。
そして終われる身の十兵衛は。
時代の流れに従い、大老・井伊直弼暗殺に加担するが
自分の中に思う部分があり。
暗殺時の仲間は全員、自首したり、捕まったり、自害したり。
十兵衛は、いつか来る何かを待つように、身元を隠し、名を変えて生き続けているのです。
その二人がついに出会うのは、奇しくも仇討ち禁止令が出た日。
事件から十数年の月日は、二人にとってあまりに長く。
そこから先の、物語の緊張感たるや、もう。
十数年の想いが溢れだした二人が、どんな行動を取るのか。
一挙手一投足どころか、息遣い、瞬き一つまで見入ってしまいました。
そしてこの物語にはもう一つ。
金吾の妻・セツ(広末涼子)の物語もあって。
この時代、武士の妻は、夫と一蓮托生。
夫の武士道が終わらぬ限り、武士の妻として黙って夫を支え続ける姿にグッと来ましたよ。
他にも、中村吉右衛門さんや藤竜也さん、高嶋政宏さんなど、実力派の役者さん揃いで。
本当に見応えのある映画でした。
号泣はしませんでしたが、何度もうるうるしてしまいましたよ。
さて、時代の流れに翻弄された二人の侍。
明治の世に再び相まみえ、どうなってしまうのでしょうか。
☆個人的見どころ
・柘榴坂で
・妻・セツの覚悟
・長屋のお嬢ちゃんとおかん
(9月20日公開予定)