『太秦ライムライト』
京都・太秦にある日映撮影所に所属する香美山清一(福本清三)は、斬られ役一筋50年の大ベテラン。
しかし、時代の波に飲まれ、かつて隆盛を誇った時代劇も激減し、香美山の仕事も次第になくなっていく。
ある日、伊賀さつき(山本千尋)という新人女優が、香美山に殺陣の稽古をつけて欲しいと頼んできた。
香美山に鍛えられたさつきは、やがてチャンスを掴み、東京で売れっ子女優に。
時を同じくして、仕事が減り、体力にも限界を感じていた香美山は、引退を決意していた‥‥。
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「斬られ役一筋50年」
「5万回斬られた男」
福本清三さんの初主演映画です。
良い映画でしたよ。本当に。
心に染み入るような作品でした。
香美山は、まさに福本さんを投影したような役で。
日本映画、そして時代劇の黄金期を知り
大部屋俳優として、その屋台骨を支え続け
自分の老いと共に、時代劇がすたれ、若い世代と新しい時代がやって来るという。
何事もそうあるべきですけど。だからといって、寂しくないわけはないのですが。
ただその、世代交代のストーリーを追うだけではなく
福本さんのお人柄と、芝居、そして殺陣にかける情熱が、端々からにじみ出てまして。
僕ごときが言うのは、本当に生意気なのですが
黙ってる顔がアップになっているだけなのに、観れてしまうのですよね。
「絵が持つ」
って、こういうことを言うのでしょうか。
日常の、腰が低く、寡黙で朴訥とした雰囲気と
衣装に着替え、刀を構えた時の迫力。そのギャップ。
斬られ役一筋50年の、福本清三さんの魅力を、存分に体感することができました。
松方弘樹さんや、本田博太郎さん、小林稔侍さんなど、脇を固める俳優陣も豪華!
余談ですが、うちの事務所の重鎮・ブッチャーブラザーズのお二人は、元・太秦の大部屋俳優で。
福本さんとも面識があるそうなのですが。
そのリッキーさんいわく
「大部屋の先輩には、いつも愚痴や嫌味ばかり言われていたが、福本さんだけは優しく、どんな小さな役でも真剣だった」と。
いかなる状況においても、真摯に仕事に向き合う姿勢が、その後に繋がって行ったのですね。
大きい意味でいえば、僕も同じ世界の端の端にいさせていただいておりますから。
少なからず、刺激をいただける作品でございました。
「一生懸命やっていれば、どこかで誰かが見ていてくれる」
それを体現された福本さん。
心から尊敬いたします。
いつかお会いして、いろんなお話をお伺いしてみたいです。
☆個人的見どころ
・役者・福本清三
・ド迫力の松方弘樹さん
・見事な斬られっぷり