ある特攻隊員の生涯。


『永遠の0』

司法試験に落ち続けている健太郎(三浦春馬)は、祖母の葬儀で、ある事実を知る。

血の繋がった祖父だと思っていたのは、実は祖母の再婚相手だったこと。

そして実の祖父は、太平洋戦争で特攻隊員として出撃し戦死した、宮部久蔵(岡田准一)という零戦パイロットだったことを。

健太郎と姉の慶子は、そんな祖父のことが気にかかり、かつての戦友たちを訪ねて歩く。

そこで知った祖父は当時、天才的な操縦技術を持ちながらも、「海軍一の臆病者」と呼ばれる男だった‥‥。



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百田尚樹さんのベストセラー小説の映画化です。

監督は、「Always 三丁目の夕日」など、VFX映像に定評のある山崎貴さん。



戦争当時、たくさんの若者が、戦場で命を散らしました。

中には、妻のいる人、子のいる人、まだ20才になってなかった人も。

日本人は、あの戦争のことを知らなさすぎなのです。

学校でちゃんと教えてくれないから。

ちょっと調べてみたら、驚くようなことばかりですよ。



「死にたくない」

という普通の言葉を口にするのにも、大変な勇気が必要だった時代があったのですね。

お国のために命を捧げることが、美徳とされ。

死ぬ覚悟がない人間は、「非国民」と呼ばれ、ひどい扱いを受けてしまう。

そんな時代に、「死にたくない。生きて帰りたい」と堂々と口にし、部下にも「簡単に死ぬな」と説いた宮部。

「海軍一の臆病者」と言われた宮部は、同時に、海軍一の勇気を持った男でもあったのです。


震えましたねえ。胸が。


戦況が悪くなるにつれ、どんどん異常化して行く日本。

その中でも、比較的冷静な思考を持っていた宮部なのに、どんどん狂わされていくのが、のしかかるように伝わってきました。

岡田准一さん、熱演でした。素晴らしいです。

もちろん、まわりの役者さんたちも凄かったですよ。



健太郎が検証して行く現代のシーンと、宮部が生きる戦時中のシーンを交互に見せるパターンなのですが。

とても良い映画だったのですけど、僕は、現代に戻って検証して行くパートで、毎回なんだか少し冷めてしまって。

きっと、戦場のシーンの重さと臨場感が並じゃなかったもので。

グググッ!っと引き込まれているのに、何度もふぁっと手を離されるように感じたのかも。

できることなら、宮部のパートを一気に見せてくれるとか、何かしらして欲しかったっすなあ。

もちろんこれは、僕の好みの話ですよ。



特攻隊なんて、誰がどう考えても異常な作戦です。

なぜそれが採用され、決行されたのか。

そして、なぜそんなキチガイじみた作戦に、志願する若者がいたのか。

社会の教科書に載っている、ほんのわずかな一文だけでは伝わらないことが、この映画には詰まっていましたよ。



死にたかった若者なんて、一人だっているわけがありません。

それが愛する人のためだと思ったから、命を散らしたのです。

もちろん、精神的脅迫に近い状況もあったでしょう。

でも、両親のため兄弟のため、妻のため子のため、最後には覚悟を決めて飛び立ったのです。

念のため言っておきますけど、僕はその作戦自体を賛美するつもりは、微塵もないですよ。



宮部久蔵という男の生き方によって、その時代の人々の哀しみと、純粋さを知ることができました。

「もし手がなくなっても、足がなくなっても、必ず戻ってきます。もし死んでも、戻ってきます」

愛する人にそんな言葉を伝えられる男が、現代に何人いるだろうか。





☆個人的見どころ

 ・岡田さんの熱演

 ・迫力映像

 ・今の祖父は誰?