背番号42の秘密。



『42 世界を変えた男』

1947年。アメリカにまだ、人種差別が色濃く残っていた時代。

ブルックリン・ドジャーズのGMであるリッキー(ハリソン・フォード)は、周囲の反対を押し切り、メジャーリーグで初めて、黒人選手のジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)と契約。

しかし、異端の存在であるジャッキーは、敵チームはもちろん、マスコミ、観客、チームメイトからも誹謗中傷を受ける。

それを、妻やリッキーに支えられ、自制心を貫き通し、黙々と自分のプレーを続けるジャッキー。

そんな彼のひたむきな姿が、次第に人々の心を変えて行き‥‥。


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メジャーリーグ初の黒人選手となった、ジャッキー・ロビンソンの半生を描いた作品です。

厳密に言うと、1800年代にも黒人選手がいたそうなのですが。

1890年代に、いったん有色人種排除の方向性が決まりまして、その後、という話だそうで。


監督は、「L.A.コンフィデンシャル」の脚本家としても有名な、ブライアン・ヘルゲランド。

ジャッキー役は、チャドウィック・ボーズマン。

リッキー役は、ハリソン・フォード。

インディ・ジョーンズでもハン・ソロでも、クールな大人の男を演じていたハリソン兄さんですが、今回、役作りに徹底したそうで。

うさんくさいが、芯の通ったGMを怪演しております。ここ、何気に見どころ。笑


当時、黒人選手は黒人選手だけで、「ニグロリーグ」という野球組織があり、そこでプレーしていたそうで。

そこには才能のある選手がたくさん在籍していて。

でも、誰もそこからメジャーリーグに黒人選手をスカウトしようなんて、思いもしない時代で。


単に、2つの対立するリーグがあったという話ではないですから。

そこには、黒人差別という大きな障害が。

僕みたいな日本で育った日本人には、宗教での争いと黒人差別は、本当の意味での根深さは理解できないんじゃないかと、僕は思ってます。


その壁を打ち破ろうとしたのが、ドジャーズのGMリッキー。

もちろん、彼の一存だけでは、それは実現しません。

彼の意図を汲み取り、実行できる、強い心を持った男が必要なのです。

そして白羽の矢がたったのが、ジャッキー・ロビンソン。

彼は、グランドでのブーイングだけでなく、チームメイトからの冷たい扱いや、野球ファンからのプライベートでの嫌がらせにも耐えなければならないのです。

しかも耐えながら、他の選手より良い成績を残さなければならないのです。


ジャッキーは、グラウンド内外でいろんな差別を受けます。

時には、命の危険を感じることも。

映画って誇張して表現するものですけど。

現実には、もっと酷い目にあってたんじゃないですかね。

だって、嫌がらせは24時間あるわけですから。

「いつどんなことをされるか分からない」

っていう精神状態は、常人では耐えられないでしょう。

それが、365日以上続くわけですから。

普通の人なら、野球どころではない状況ですよ。


それを支えたのが、最愛の妻であり。

チームメイトや他球団からの、差別がらみのクレームを、強い意志で跳ね返したリッキーなのです。


歴史を変えた人物の話って、しびれます。

そういう人は、必ずしも無敵の超人なわけでなく。

我々と同様、弱い部分があり、心が折れそうにもなるのです。

しかしそこにはいつも、その人物を陰で支える人物が存在して。

こういう、ジャッキーみたいな人って、神様に選ばれてるんじゃないかと、僕は思うのです。

「ほい、一仕事して来い」

って言われて、世に送り出されたんじゃないかなと。

「お前ら、フォローしたって」

って言われて、妻やリッキーも送り出されて。


人種の壁を取り払った美談みたいにしてますけど、アメリカの恥ずべき歴史でもありますからね。

そもそも、その人種差別みたいなおぞましいシステムを作ったのは、誰やねんってことですから。

そういうのを、これまた堂々と映画にして美談にするのも、アメリカ映画の凄いところで。

嫌味ではないですよ。

そういう図太さと開き直りって、映画には必要なんやなと思って。


そして背番号42は、メジャーリーグ全球団で永久欠番となりました。

さらに今では、ジャッキーがメジャーリーグデビューした4月15日を

「ジャッキー・ロビンソンデー」

として、全選手・監督・コーチが「背番号42」を背負って、試合を戦うのです。


ほんわかとは知っていましたが、こうやってちゃんと知ることができてよかったです。

しびれる映画でした。



☆個人的見どころ

 ・強い心

 ・妻の支え

 ・怪演!ハリソン・フォード


(11月1日公開)