あの名作のリメイクですよ。


『許されざる者』

1880年。徳川幕府から明治政府に政権が移り、開拓が進む北海道の僻地で、2人の子供とひっそり貧しく暮らす十兵衛(渡辺謙)。

そこに突然現れた金吾(柄本明)は、十兵衛の以前の姿を知っていた。

彼はかつて、幕府側として維新の志士を斬り続けた、悪名高き「人斬り十兵衛」だったのだ。

金吾は彼の腕を見込んで、女郎を切り刻んだ開拓民にかかっている懸賞金を狙おうと持ちかける。

十兵衛は、ひもじい思いをしている子供たちのため、捨てたはずの刀を再び手に取り‥‥。


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クリント・イーストウッドが監督と主演を務め、アカデミー賞の4部門に輝いた「許されざる者」。

その名作を、これでもかと言うくらい日本の名優を集め。

「フラガール」や「悪人」の、李相日監督がメガホンを取ってリメイクです。


いや~、もう。

どのシーンを切り取っても、一分の隙もなく、力強い作品でした。

全編に溢れる緊張感と、こちらの肌にも伝わってきそうな、過酷な環境。

そして、痛そうなシーンの数々。本当に痛そう!


かつて人を斬って斬って斬りまくり。

幕府側が敗れて、北海道の地に逃れ。

そこまで来た追っ手もまた斬りまくり。

容赦なく躊躇なく斬りまくり。


しかし、この地で出会った一人の女性と、その間に授かった子供たち。

その存在の尊さが、彼を戦いから遠ざけ。

二度と人を斬らないことを誓わせるのです。


そんな中、妻は亡くなってしまい。

まだ開拓の進まない痩せた土地では、農作物も思うように育たず。

生活は困窮を極め、子供たちはひもじい思いを。

そこに現れた、古い知人の金吾が持ちかけてきた儲け話。

だがそのためには、十兵衛が亡き妻に誓った、もう人を斬らないという誓いを破らなければならず‥‥。


江戸から明治に移る混乱期。

幕府から政府へ。

着物から洋服へ。

刀から銃へ。

日本の長い歴史の中でも、最も混沌としていた時代の一つが背景にあり。

その急激な流れに翻弄される人、素早く対応する人、それぞれで。


北海道も、まだまだ開拓が進まず、アイヌの人たちも多く住んでいて。

そこには、本土を追われたならず者も少なくなく。

混乱に加え、新政府の目の届きにくい状況で、警察署長がある種の独裁者のように。

まるで日本に似た架空の国が舞台のようにも思えたのですが、確かにこういう時代があったのでしょうね。


当時の北海道の、過酷な生活が伝わってくるような、細やかに作られたセットと衣装。

渡辺謙さん、柄本明さんに、佐藤浩市さんに加え、國村準さんや近藤芳正さんなど、日本を代表するベテラン俳優陣。

さらには、柳楽優弥さんや忽那汐里さんなどの、若手勢の熱演も素晴らしかったです。


そして十兵衛の想いと苦悩。

十兵衛だけではなく、未開の、混乱の地で、それぞれがそれぞれの想いを胸に、懸命に生きていたのです。

正義や悪という物差しを無視して、行動せねば生きて行けない環境だったです。

その環境に流される中で、十兵衛は何を思い、どういう行動を取るのでしょうか。


冒頭から最後の1シーンまで、目が離せない映画でございました。



☆個人的見どころ

 ・混乱期の蝦夷地

 ・警察署長vs侍

 ・そして十兵衛は‥‥


(9月13日公開)