ジブリ!



『風立ちぬ』

関東大震災や世界恐慌で、不況の真っ只中にあった頃の日本。

学生の堀越二郎は、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。

やがて彼は、飛行機の設計技師として就職。ドイツなどにも視察に行き、見聞を広める。

そして、休暇で軽井沢を訪れた時、関東大震災時に出会った菜穂子と再会し、二人は恋に。

しかし菜穂子は、結核を患っており‥‥。


---------------


ジブリの新作です。

宮崎駿監督。2008年のポニョ以来ですって。


震災があり、大不況があり、戦争があり。

今も大変な時代かもしれませんが、それよりももっともっと大変な時代で。


そんな中、とにかく美しい飛行機を作ることが夢だった二郎。

彼は夢中になるとまわりが見えなくなったりもするが、まわりの人間にも優しく、困っている人は放っておかない好青年。

そして震災の時に出会ったのが菜穂子。

二郎は当たり前のように、ただ人助けをしただけだったが、その時の姿を、菜穂子は忘れず。

数年後、劇的に再会した二人は、やがて恋に。


またその2人の恋っぷりがいいんですよね。恋っぷり?

再会し、燃え上がるように恋心に火が付くが、決してまわりが見えなくなっているわけではなく。

通すべき筋は、きちんと通す。

なかなかできませんで。特に最近の若い衆は。


そして、二郎の優しさ。菜穂子の気遣い。

二郎の強さ。菜穂子の健気さ。

涙が出そうになりましたよ。

いや、ちょっと出ました。


とにかくもう、絵がきれいというか丁寧というか。

水の1滴、服のシワ1本までに命が吹き込まれているようでした。

今どきのCG多用アニメにはない、暖かさがありましたね。

あ、CGアニメも好きですよ、僕。


あと、音も。

なんというか、地震の時などは、地から唸ってくるような音が。

エンジン音は、全ての風を巻き込むかのような音が。

その一つ一つに、めちゃくちゃ迫力がありました。


二郎役の声優が、庵野秀明さん。

あの、エヴァンゲリオンを作った庵野さんです。

過去にチョイ出演はあったそうですが、ほぼ素人さんも同然。

それがどんなもんかと思いきや、最初は違和感ありまくりで。

まわりの人たちは、上手なのに一人素人丸出しの棒読みなので、気になってイライラして。


ところが

途中から、御本人もお慣れになってきたのか(順録りだと勝手に推測)、すごくナチュラルになってきまして。

素朴で真っ直ぐな好青年・二郎の人柄と、その訥々としたセリフまわしが、とてもマッチしているように思えてきました。

それが序盤からそう思えたら‥‥ねえ‥‥。


今ではあまり見られないような、古き良き日本の理想の夫婦像でした。

男は家族の、妻のために働き多くを語らず。

女は家で夫の帰りを待ち、静かに支え続ける。

そして二人は‥‥。

ただ、皆さんがお持ちのジブリのファンタジー感は、ほぼ無かったです。

ファンタジーっぽい二郎の空想は出てきますけど、そこはオマケ程度で。

それが肩透かしに感じる方も、いらっしゃるかもですよ。


それにしても二郎さん。

戦闘機を作っていると分かっていたとはいえ

あれだけ美しさにこだわり、魂を込めた零戦が、戦争の道具として大活躍したことを、純朴な二郎さんはどう感じていたんでしょうね‥‥。


そして、ラストに流れるユーミンの歌「ひこうき雲」。
この映画のために作ったかのようでした。

物語とエンド曲がこんなにもマッチするのは、年に何本も観られないですよ。

美しいっすなあ。

☆個人的見どころ

 ・結婚式

 ・絵と音

 ・声優庵野