奇妙な実話‥‥。


『コンプライアンス 服従の心理』

アメリカのとあるファーストフード店では、忙しい金曜日なのに朝からトラブル続きで、店長の中年女性・サンドラはイライラしていた。

昼頃、警察官を名乗る男から一本の電話が。

レジ係のバイトの少女に、客の金を盗んだ容疑がかかっているというのだ。

疑われたベッキーは、当然容疑を否定するが、店長はどうすればいいのか狼狽えるばかり。

しかし、大事になるのを恐れる彼女は、ついには電話の指示通り、ベッキーの身体検査を始め‥‥。


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アメリカでは有名な、実際にあった事件が基になった映画です。

恐らく大きな誇張もないでしょうし、半ドキュメンタリーな感じですね。


きっと、日本では起こりえない事件かなと。

映画に出てくるようなアメリカの会社では

「はい、お前クビね」

みたいに、あっという間に仕事を失ったりするシーンがしばしばあるわけで。

きっと、ちょっとのミスというか、

「上司の気にくわないことをすると、突然解雇されて職を失ってしまう」

という恐れが、こういう事件に繋がったのかなと。


店長のサンドラは、婚約者がいるけど未婚のおばさんで、そこにコンプレックスを抱えていたり。

でも、店長であることが自分のステイタスであると思っているので、この地位を失いたくないという気持ちは大きく、本部から嫌われたくない気持ちも強く。

従業員たちは、そんな店長を裏で小バカにしながらも、やはり彼女に嫌われると職を失ってしまうので、表向きは御機嫌を取りつつ。


ベッキーは19才のバイトの女の子。

しかし、この不況の御時世、バイトといえど職を失うと次がすぐ見つかるか分からない。

なので、何かおかしいと思っても店長には逆らえず‥‥


‥‥と思いながら観ていても、どうしても違和感がぬぐえませんでしたね。いろいろと。

いろいろと、というか店長が。

とにかくもう、バカすぎるんですよ。店長。


電話で警察だと言われて信じるのはいいとしても。

「携帯を取り上げろ」「服を脱がせて調べろ」

までも、まあまあいいとしても。

「下着も全部脱がせろ」

「乳首の色とカタチは?」

いやいや!おかしいおかしい!


「それ必要ですか?」

と疑問に思いつつも

「詳細な情報が必要です」

と言われて信じるバカ店長。なんだこの店。

従業員たちも、店長がおかしいと思いながら、やはり逆らえず。


確かに、犯人の話術は上手かったですよ。

服を脱がすにしても、店長がそれを避けようとする発言を一つずつ潰し、そうせざるを得ないように導き。

さらに、指示通り動いたら褒め称え、ちょっと権威を持っているかのように錯覚させ、バカ店長を手玉に取るのです。


「そんなアホな」と思う反面。

確かに、自分が若い時にその場にいたら、なす術もなく流されていたかもです。

ベッキーも若いわけですし。

とは言え、まわりに他の大人が何人もいたわけですしね。

異を唱える従業員もいましたし。

それが、こんなにもあっさりと犯人の思うように‥‥なんだかなあ。

でも実話なんか‥‥う~ん。


なんて言いつつも、最後まで事件の行く末を、食い入るように観てしまったのも確かです。

世にも奇妙な事件ですからね。

犯人が自分の思う方向にどう持っていくのか。

その手慣れたやり口に、犯罪なのに関心してしまいましたよ。


ただ、実際の事件なのですから。

「そのド変態犯人がどうなったか」

「店長の責任問題は」

「ベッキーが起こした裁判はどうなったか」

など、その後の顛末が、僕としては絶対に知りたいところだったので、なかったのがとても残念でした。



☆個人的見どころ

 ・犯人のド変態っぷり

 ・店長のバカっぷり

 ・店長の婚約者のバカっぷり