藤沢周平「隠し剣」シリーズの傑作が映画化。
「必死剣鳥刺し」
江戸の時代。
東北の海坂藩の物頭・兼見三佐ェ門(豊川悦司)は、藩主の愛妾・連子を城中で刺し殺した。
愛する妻・睦江を病で亡くした兼見にとって、庶民を苦しめる悪政の元凶である連子刺殺は、死に場所を求めた武士の意地だった。
しかし、意外にも寛大な処分が下され、1年の謹慎の後、再び藩主に仕えることが許される。
腑に落ちない想いを抱きつつ城内で働く兼見だったが、実はそこには、中老の津田の、剣の達人である兼見の腕を、藩のために利用しようとする企みがあった‥‥。
なんというか、切ないっす‥‥。
侍として、藩に尽くして生きる兼見が、過酷な運命に翻弄されていく姿に胸が熱くなりました。
美しく穏やかな日本の風景と、血なまぐさい陰謀と斬り合い。
そんなギャップがこの作品の魅力につながっているのかと思いましたが。
切れ長で涼やかな目のトヨエツさんは、侍役にピッタリですね。
最終的に敵役になる吉川晃司さんも同じく。
剣の達人という設定の2人の対決は、迫力たっぷりでした。
お2人とも背が高く、剣を構える姿も本当にカッコよくて。
1センチの間合いを測り対峙する姿は、まさにK-1の名勝負・ホースト対フィリョを思わせるような緊張感。
場内で斬り合う姿も、意外に新鮮でしたし。
普通、もっと広いところでおりゃ~ってやりますもんね。
最近、斬っても血の一滴も飛ばない時代劇ばかり観ていたので、これでもかと血の吹き出るこの映画は、逆に気持ち良かったですよ。
あ、僕はスプラッター嫌いですけどね。
リアリティのある表現の一つとして。はい。
そしてラストの兼見の鬼気迫る姿。
「必死剣鳥刺し」。しかと見させていただきました。
なんかチャンバラシーンのことばかり書いてしまいましたが、そういうシーンは少ないですよ。
他は、その時代に生きる人々が、質素ながら背筋を正して生きている姿がリアルに描かれておりました。
僕がグッときたのは、池脇千鶴さん演じる、兼見に想いを寄せる亡き妻の姪・里尾の姿。
想いを口には出さずとも献身的に兼見に尽くす健気な姿を見て、改めて婚活を急がねばと思わされてしまいました。
あんな嫁おったらええな~。
そんな里尾の想いもあって、ラストはかなり切なかったです。
それも一つの終わり方なんでしょうけど。
一つの時代劇作品としては見応え十分でしたが、個人的には正直者がバカを見るような、そういう物語はあまり好きではないのです。
☆こんな人におすすめ
・リアル時代劇映画好き
・藤沢周平小説ファン
・トヨエツさんの入浴シーンが見たい!