みなさん、さようなら | 愛すべき映画たちのメソッド☆

愛すべき映画たちのメソッド☆

映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「女って、自分しか判らない魅力に弱いんだよ・・・。」

久保寺健彦の小説を『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』『ゴールデンスランバー』『ポテチ』の中村義洋監督&濱田岳主演コンビで映画化。

共演は瑛太の弟である永山絢斗、倉科カナ、波瑠、田中圭、『アヒルと鴨~』の大塚寧々。

《団地》自体の光と闇を背景に、団地の歴史的魅力満載で描かれる《ある一人の男》の青春。

生まれ育った団地から出ずに生きる一人の男の孤独、友情、恋愛、葛藤、成長がコメディタッチで丁寧に描かれている。

濱田は主人公の中学生から20代までの十数年間を見事に演じきる。

80年代に団地で生まれたごく普通の少年は、小学校の卒業とともに「団地から一歩も出ずに生きる」と宣言する。

中学にも高校にも大学にも通わず、団地内のパトロールを《勝手に》日課にして日々を過ごす。

そんな中、時代の変遷とともに多くの同級生が団地を去り、男はだんだんと取り残されていく・・・。

老朽化の進む《団地》と《一人の男》が共に時代に取り残されていき、笑いの絶えなかった日々が少しずつ思い出に変わっていく。

切なさと同時に、男の成長物語がオーバーラップし、青春の《痛さ》と《儚さ》が胸にしみる。

大好きな『フィッシュストーリー』と同じく《どんなに些細な事でも人生の何かの役に立つ》という魂も感じられ、とても勇気づけられるストーリー。

なぜ彼は団地から外の世界に一歩も出ないと決めたのか。

そして、外の世界へ旅立つ日はやってくるのか。

人生には乗り越えなければいけない《壁》が何度も何度も立ちはだかる。

『フォレスト・ガンプ』や『シザーハンズ』や『トゥルーマン・ショー』を彷彿とさせる奇抜な設定と、前半では想像もしていなかった後半の展開に、とても驚いたし心を打たれた。

日に日に孤独になっていく主人公の心情とリンクし《共感》以上の感情が沸き上がるクライマックスの展開は、心から涙が溢れて止まらない。

物語が終わっても《その後》を想像するだけで眠れなくなるし、きっと団地の住民は思い出の中で生き続けるだろう。

また会う日まで・・・「みなさん、さようなら。」

そして・・・「こんにちは、自分。」

「正義なき力は、暴力に過ぎず。力なき正義は、無能なり。」


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