
一つの場面を複数の人物の視点で違う角度から何度も見せる羅生門スタイル。
タランティーノが『パルプフィクション』や『ジャッキーブラウン』でもやってみせたこの手法を、ジャパニーズホラーに取り入れたのがこの作品。
時間軸を前後させ、時空の歪みも織り交ぜた構成が清水崇監督はとても巧い。
特に、ある女性がマンションの角部屋の一室で体験する心底恐ろしい場面は、夢に出る程のトラウマになる。
他の場面でも、窓付きエレベーターで各階に霊が立っていたり、家の天井から霊が覗いていたり、テレビ中継に霊が写っていたり、深夜のドライブ中に運転席の足元から霊が現れたり、フロントガラスに無数の手形が残っていたり・・・。
都市伝説の数々を映像化した様な恐怖の連続花火。
この作品の成功がきっかけで清水監督がハリウッドに呼ばれ、アメリカ版としてセルフリメイクした『THE JUON/呪怨』を制作し、全世界で絶賛された。
日本の監督や役者がハリウッドへ進出する突破口を開いたという意味でも、日本映画史に残る重要な作品。
数ある清水監督の作品の中でも、今作は非常に完成度が高くとても怖い。
劇場公開当時、今作のレイトショーを一人で観に行った時の恐怖は今も忘れられない。
人もまばらな深夜の映画館のロビー。
静かに広がる大きなスクリーン。
静まり返った劇場のほぼ中央の席に座る。
ゆっくりと照明が消え、今まさに映画が始まろうとしたその時、ふと「いつもと違う何か」を感じた。
恐る恐る振り返りながら、薄明かりの劇場全体を見回し、ある事に気が付いた。
観客が、私一人だったのだ・・・。
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