ハイフロンティアの太陽系に踏み出して1VPを得るまで ボードゲーム アドベントカレンダー2022
この記事はボドゲ紹介 アドベントカレンダー2022の8日目です。 昨日の担当は「わっ!」たるさんでした。テンポの良さで飽きずに最後まで一気に読めちゃう素敵な記事でしたね……!
その2もあります(1日目を僕が担当しています、ヨカッタラミテネ!)
最新の記事も「わっ!」たるさんが担当されています。昨日記事の続きとなっていますので要チェックですぞ!!!
地球を探検するには遅過ぎて、宇宙を探検するには早すぎる時代に生まれてしまった僕たちだけど、ボードゲームで一足早く太陽系に歩み出すことができます。 そう、ハイフロンティアならば……!
てなわけでご紹介したいHIGH FRONTIER 4 allです。
ルール改定を重ねながら第4版、息の長いゲームです。BGGのレーティングは8.5、1100人が評価しての結果ですのでギークは大満足のようですね……!
ハイフロンティアは12年を一周期として、ゲーム全体で48年の間にどれだけ宇宙への進出を果たせるか競い合います。
メインボードは太陽系が描かれており…
地球から始まり……
数多の惑星や小惑星から……
果ては冥王星とその周辺の天体まで、エラい情報量です……!
BGGでの評価の割に日本ではあまりその名を聞きませんよね。
何しろ日本語版が出ていないのと、あまりにルールが重すぎるのに原因がある様に思います。
(言語依存は殆どありません、初期の個別能力くらい?)
まぁ翻訳したルールブックが全部で297ページあればそりゃね……
ハイフロンティアの基本セットには3つのルールが存在し、
手軽に楽しめるファミリールール相当のスペースダイアモンド、
最もメインとなるコアルールことハイフロンティア、
コアルールを理解する手助けとなるチュートリアルなレーストゥグローリー
とに分かれています。
内容は非常に煩雑で複雑なんですが、ハイフロンティアがボードゲームとしてより、シミュレーションとしての毛色が強いところにあると思います。
作者のフィル・エクルントさんは航空宇宙工学を修めたロケット技術者の経歴をお持ちです。工学や惑星科学の情報がシステムに反映されています……!
ゲームの為のフレーバーではなく、フレーバーの為のゲームとでも言いましょうか。
フレーバーである現実の宇宙開発に寄り沿っている為、ルールには筋が通っており、確認は必要だけど、処理や判定の言いたい事はわかるゲームになっています。そしてそれがタノシイ……
過酷で複雑な盤上の宇宙開発では、どうやったら勝利点を取れるのか、んもぐっちゃぐちゃに嚙み砕いて説明していきます。
自分の手番では、実際に宇宙船を航行させたり、宇宙船部品の「特許」を使用する為の競り、そして競り落とすための金策(水集め)などを行います。
プレイヤー間で競り落した特許カードは、そのまま宇宙船を構成する要素として使用します。
とりあえずスラスター(推進力をもたらす機材)だけあれば宇宙に飛び出せるのですが、実際にはスラスターにエネルギーを供給するリアクター(動力炉)やジェネレーター(発電機)、それらから発生する熱を処理するラジエーター(熱冷却器)などを組み合わせてサポートチェーンを構築しないと宇宙船として機能しません。
目的の天体にたどり着いた後、開発可能か探査するためのロボノーツ(遠隔採掘装置)や資源を精製するリファイナリー(鉱石精製装置)も特許の使用権を手に入れて搭載する必要がありますね。
恐ろしい事にこれらのカードはユニークでそれぞれ能力が異なり、フレーバーの内容は実現の可能性がある技術が集められています。ゲーム上参照しなければいけないのはアイコンと数字で、イラストや説明はほぼフレーバーです。
ゲームの目標である太陽系の開拓は、特許を基にした宇宙船の部品をLEO(=地球低周回軌道)に打ち上げてから始まります。(これも手番のアクションで行います)
LEOは、大気と真空空間の境界線、地球から宇宙への玄関口です。
地球の重力は、星間飛行を行う巨大な宇宙船の組み立てには大きな障害となってしまうのです。
大気の抵抗で第一宇宙速度(天体の重力を受けても円軌道で相対距離を維持できる速度)を失わず、地球に墜落しない限界高度に近い周回軌道とでも言いましょうか……。地球の重力圏で地球に引き寄せられない為には超高速で移動し続けなければなりません。
またこのゲームで通貨であり燃料として用いられる"水"は地球上でこそありふれていますが、宇宙空間では貴重な資源となっています。
地球の低周回軌道上に浮かぶ巨大な星間飛行ロケットに飲ませる為の水を、重力の井戸の底から汲み上げるコストは膨大で、鑑みると宇宙にある水は地球上で精錬された金の価値に匹敵するんですとか。
金を燃やして星間飛行してると思うと気が遠くなるな…
ちなみにハイフロンティアでの水の1単位(1金)は40トンと想定されていますが、月に向かったアポロ11号の総重量が45トンくらいです。
(もちろん打ち上げに使用したサターンVロケットを加えると総重量は跳ね上がるけど)
ゲームの終盤、木星や土星を目指すロケットは燃料だけで10単位だとか平気で積むので、どれだけ巨大かなんとなく想像できるんではないでしょうか。
少し余談ですがゲーム全体の1/3くらいは金策してます。あまりに金策ばかりしててルールを間違えたか心配になりましたが、他所でも金策ばかりしていた話を聞いたのでそんなもんなんでしょう。
ハウスルールを追加して金策しやすくしている所もあるようですね。まじで無限にお金(水)集めてる。
話を戻して、ハイフロンティアでは宇宙船の重量管理がひじょーーーーーーうに重要で、個人ボードも宇宙船の重量管理のためのトラックが大きな割合を占めています。
宇宙船の重量は、燃料を含まない機材だけの重量であるDRY WEIGHT(乾重量)と、燃料を搭載した分だけ増した重量であるWET WEIGHT(湿重量)で表されます。
宇宙空間を航行する際、湿重量が大きいほど推進力の効率が落ちて大量の燃料が必要になりますが、航行によって燃料が消費される(タンクが空になっていき乾重量に近づくほど)と推進力の効率が上がりスムーズに目的地を目指すことができます。
もちろん燃料が空になれば大半の宇宙船が航行不能になるので、道中の推進力の変化を考慮に入れて宇宙船の重量と搭載する燃料の量を決定しなければなりません。 これをLEOや天体に建設した工場でずっとコネコネします。
スラスターのサプライチェーン、ロボノーツやリファイナリーの重量、目標天体までの必要推進力と燃料とそれらの重量バランス………!
(長くなるので省きましたが、太陽活動によって生じる放射線によって機材が損壊し航行不能になる可能性がありますので、それに備えたプランBも構築してね。)
そしてハイフロンティアのマップでは、多数の円状に描かれたルートを乗り継ぐ形で移動します。 直線で移動した方が最短距離を取れていいんじゃないかと思われるかもしれませんが、この円は太陽系内の天体による重力の作用を表しているのですが……
太陽系の惑星は全て太陽の重力に囚われており、僕たちの宇宙船は惑星の重力に囚われます。(月が地球の周りをくるくる周り、地球が太陽の周りをくるくる回るように)
目には見えないが非常に大きな力ですので、天体の重力に逆らって直線に移動するよりも、いっそそれらの重力の作用を利用した方が、重力を振り払って直線で移動するよりはるかに楽に移動できます。
目標の天体もやみくもに選べば良いと言うことはありません。
火星などの大きな惑星に加え、着陸して開発可能な小惑星は主要な構成物質によって6種類に分けられています。 この6種類はゲーム終了時のボーナス点に影響を与え、ゲーム中も工場を建設した後の生産物に関係があります。
実際に辿りつく能力が宇宙船にあるのか、たどり着いた後開発を行ってどうするのか、計画が必要です……!
目標の天体に無事辿り着いたら、開発可能か探査を行います。
探査によって資源の存在を確認できたら、所有権利の主張を行うことができます。 (探査した場所のプレイヤーカラーのディスクを置きます)
これによって、ついに地球外の資源に手を伸ばすことができます。そしてこのディスクには1VPが付いています!!!
今度はリファイナリーを持ち込んで工場の建設を行い(キューブの配置)、宇宙飛行士を入植させることでコロニー化することも可能です。(ドームの配置)
そして工場では、土砂から水を抽出したり宇宙船の部品や機材を生産することができます。
競り落としたのが「部品カード」ではなく「特許カード」なのがポイントでして、裏側の黒い面は先ほどの白い面の完全上位互換となっており、地球外の工場でのみ生産可能です。
無重力と大気の無い真空環境では、地球の重力と気圧の中では不可能だった生産方法で機械を作り出すことができます。
例えば原子や分子単位で素材を編み上げることも宇宙では可能だろうと考えられています。
ナノ単位で管理された素材は、より強度が上がり、より性能を高めることができるのです……!
そして新しい宇宙船を組み立てることでさらに遠くの天体を目指すことができます……!
拡大を繰り返して48年経過したらゲームが終了、点数の獲得方法はざっと下記の通りです。
マップ上のロケット
権利トークン
宇宙工場キューブ
コロニードーム
ここまでは全部1個1点、さっき画像で示したやーつですね。
さらに……
各惑星圏に最初に有人航行を行い天体に辿り着くと貰えるグローリーチット。(宇宙飛行士が地球に生還できると得点が上がります。)や、
工場の時価(開発した小惑星の種別事に得点が入り、単独で数が少ない程高得点が入る)
褒章トークン(説明は省くが点が貰えます!!!!)
ようはどれだけ宇宙に進出したか……ですね!
かなりの要素を端折りに端折って駆け抜けましたが、これがハイフロンティアの基本です。
ここまで読んだ方は多少なりともハイフロンティアに興味がある方だと思いますので書いておくのですが、もし機会があればチュートリアルを飛ばさず一度プレイした方がよいですね……
仮にコアルールを1から10まで真面目に説明すると2時間近くかかるのですが、チュートリアルを挟むと1時間半と30分に分割できます。
2時間説明された内容全部踏まえてゲームするよりも、大枠の内容を踏まえたうえで30分のインストを受けた方がはるかに理解度もあがり事故や失敗も避けられるでしょう……!
チュートリアルゲーム自体は2時間くらいで終わったと思います。重ゲーやんけ。
まぁどうせゲーム中もずっとルールブックとお友達だし、初回なら盤面よりルールブックみてる時間の方が長い可能性すらありますが……。
さて、最初に日本語版は出ていないと書きましたが、ありがたい事にOrigins研究会さんが個人輸入して日本語訳を提供の上頒布されています。(下記リンクです)
少なくとも基本ルールのコンポーネントに、ゲーム上必要な言語依存は殆どありませんので、言語の壁にぶち当たるストレスはありませんでした。
ふーんちょっと面白そうじゃん?と思われたらぜひお問い合わせを。面白いぞ……!
作者のフィル・エクルントさんは、このゲームの他に生命の起源、進化、原始人類の版図の拡大をテーマにしたBios三部作(ジェネシス、メガファウナ、オリジンス)を制作されているのですが、この三部作から連続してハイフロンティアまでを遊ぶ狂気のキャンペーンルールもあります。それもまぁ……いつか……!
ちなみにハイフロンティアは拡張が複数出ています。 僕は基本しか遊べていませんが拡張もめちゃめちゃやりたいので誰か遊んでください……!!!!
そんなわけでハイフロンティアのご紹介でした!!よくぞここまで読んでくださった!!もしかしてスクロールして飛ばしてきた????
明日の担当はボドゲ界のチャキチャキ姉さんことまよ.さんです。頭が良くて会話上手で美人のまよ.さんが書かれるのは「すきなやつ」
チラッと聞いたら、箱絵がまよ.さんが使ってる携帯っぽくて(見たことある人にしか伝わらない)これは確かに好きそう(?)
競りゲーだそうですよ!!!こうご期待!!!