「中卒」と「大卒」のどちらを採用するか? | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

「中卒」と「大卒」のどちらを採用するか?

以前に鵤公舎(いかるがこうしゃ)の

小川三夫先生の講演を聴く機会がありました。

奈良の法隆寺に修学旅行に行った時に、大工を志したそうです。



学生時代は記憶力が悪く中学の時の先生には「おがわてんにならず」と言われたそうです。



宮大工になる為に、奈良に出られたそうです。勿論、あてはなく、勢いで!



そこで最初に奈良県庁に行ったとのこと。



そこで法隆寺の西岡某さんを紹介されたとのことです。



法隆寺に行き、大工の方に

「西岡・・・・・さんはいらっしゃいますか?」


と尋ねたところ、西岡は3人いる。



「俺は西岡常一だ」との事でした。



宮大工になりたい気持ちを伝えると、

今は仕事がないと断られたそうです。



折角だからと、文部省にの推薦書を書いてもらい帰ったそうです。



しかし文部省は大工を養成する省ではないと言われたそうです。



奈良県庁では西岡さんのお父さんを紹介されたそうですが、

記憶力が悪かったお陰で、西岡常一棟梁との縁が出来たとユーモアを持って話されていました。



もし、フルネームで覚えていたら「親父は高齢だから弟子はとらない。」

と言われそれで終わっていたと想うとのことでした。



記憶力の悪さが運を開いた!と仰っておりました。



この西岡常一棟梁との出会いが直ぐに花開いた訳ではなく、

弟子入りするまで3年かかったそうです。



弟子入りを断られた後に、

長野県飯山の仏壇の屋根を造る仕事をして腕を磨いたそうです。



その後、図面引き等を行い、やっと弟子入りできたそうです。



しかし、弟子にするといわれた事は無く、

「納屋に上って掃除をしなさい」という言葉が弟子入りを認めてくれた言葉だと察したそうです。



納屋には道具箱があり、それを見せるという事は弟子入りを認めた事だと感じたそうです。



その後、独立し現在は多くのお弟子さんをとっているそうです。



お弟子さんの育成の心構え、

木を活かすという事が何事にも通じる話がありました。


いくつかご紹介します。


※中学卒業したての弟子入り志願者と六大学を出た志願者のどちらを弟子入りさせるか?


中学卒業したての子をとるそうです。



理由は六大学を出たての青年は

「中途半端な知識をもっている」「能力のある子は

辛いときに他を見てしまいがちになる」とのことです。



辛くなる時が必ずくる。

その時に割に合わない、他の方が向いている、友人はこうだ、等と

雑念を持ってしまいやすいからだそうです。



良くわかる気がします。



他の会社ではこうだった!

前はこうしてた!等と強く持ちすぎると合わない事があると思います。



確かに経験は大切ですがそこには「素直さ」が欠けてしまうことがあります。



小川さんは斧を研ぐように言われたら、止めろと言われるまで止めずに、師匠の言葉を信じて針になるくらいまで研ぐ子が成長すると仰っていました。



※木の個性を活かす


木の育った環境を考えた登用をする。



生育するときに西側の側面が外であれば、建築に活かすときに同じ方向で用いる。



そうしないと、急に日が当らなくなったり、日が当ったりすると木が傷んでしまう。




※木を植林しているときには抜き枝をする


木も片側だけに枝が偏ると、重心がずれて真っすぐ生育しない。


重心が真っすぐ上に伸び生育するように、抜き枝をし成長を見守る。



そうすることで良質な気になる。


これは人を育てることも一緒で、上司や親、教師は、部下、社員、生徒が

真っすぐ育つように抜き枝をしなくてはいけない



・昔は木の運搬に何カ月も要した


これは不便に感じるが木にとっては良い事。


運搬する間に乾燥し、木の癖が出て、実際に使える木になる。


木に魂が籠る。


昨日切ったような木を材質にするから、家を建てた後に木の癖が出て歪む。


何事も「寝かせる時間」が大切とのことです。


仕事も同様で、時が大切な事も多々あるな!と思いながら聞いていました。



・先走って教えない


教えない事も親切



・軽い限度で沢山、釘を打て


現代は釘打ち機で一発で釘を打つから何本も必要になり強度がない。


沢山打つことで釘に強度が生まれるとのこと。



社員に何かを伝えるときに一回で伝えようと思ってしまいます。


しかし、その社員の心に訴えるには時と場合を考え、何度も時間をかけて、伝えていく事も大切だと感じました。




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