介護職 人不足の悪循環 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

介護職 人不足の悪循環

◆「休めない」県内離職率19・3%

 高齢化を背景に需要が高まる介護職だが、離職率の高さが課題となっている。鳥取労働局と介護労働安定センター鳥取支部がまとめた県内の介護事業所の実態調査では、人手不足や不規則な労働時間、運営者側とのコミュニケーション不足に関わる不満が高いことがわかった。

 調査は、介護サービスに関わる県内48事業所と職員136人を対象に、2010年11月に郵送で実施した。

 調査結果によると、09年10月からの1年間で、県内の介護事業所を辞めた人の割合は19・3%で、全国平均の17・8%より高かった。さらに、県内の離職者のうち半数は勤めて1年未満だった。

 職員を対象にした労働条件調査では、賃金の低さへの不満に加え、「人手が足りない」「休憩が取りにくい」「有給休暇が取りにくい」「労働時間が不規則」など、労働時間に関する問題を挙げる人が多かった。また、運営者側からは「職員とのコミュニケーションが不足している」との回答も目立った。

 調査結果を裏付けるように、鳥取労働局が昨年、県内の社会福祉施設に対して実施した監督指導58件中、長時間労働など48件の違反があった。労働局の安達佳弘総務部長は「労働条件が守られていない不満が、離職につながっている部分がある」と指摘する。

 その一方で、介護の需要は増加傾向だ。県内の医療・福祉分野の求人は09年5294人、10年6896人、11年には7626人と急増。大手メーカーの規模縮小や建設業の倒産などにより、県内の雇用情勢が悪化するなか、介護は雇用の受け皿としての期待が高まっている。それだけに定着が課題だ。

 ただ、福祉分野は人と人の関係が重要で、機械的に勤務時間を管理することが難しい側面があることは確か。安達部長は「うまく回っている事業所は、運営者側の意識が高く、職員との意思疎通がしっかりとれている」と話す。

◆研修に手当 面接で意思疎通

 離職が少ない事業所はどのような工夫をしているのか。介護老人福祉施設「百寿苑(えん)」(琴浦町)は、年に2回、職員が個人目標を設定し、運営側と面接をする。職員には積極的に研修制度を利用してもらい、研修でも「時間外手当」を出す。資格を取ればパートから正職員への採用の道もあるという。入江祐子総務課長は「人件費の比率は高くなるが、結果的にはモチベーションや介護の質が上がる」と話す。

 特別養護老人ホーム「大山やすらぎの里」(大山町)も面接などで職場の声を聞き取るなど、運営者と職員側の意思疎通を大切にしている。夜勤の時間を短くしたり、休憩や休みがとれているかを管理職が確認したりと、職場から上がった意見が運営に生かされることも多いという。

 鳥取労働局は、今回の調査結果を踏まえ、介護事業所の運営者らを対象に、3月8日、倉吉市の倉吉未来中心で、労働基準関係法令や労災防止に関する説明を行う。

 また、悪質な労働基準法違反があった事業所の指定を取り消す改正介護保険法が4月に施行されるのに合わせ、介護労働安定センター鳥取支部も、4月から講習やセミナーなどを予定している。(才本淳子)
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