外国人介護士 もっと「門戸」を広げたい
日本で介護福祉の専門職として働き続けるためだが、3年前から行われている看護師試験の制度と同様に、不合格なら帰国しなければならない。
高齢化が加速度的に進み、介護や看護の現場では今後、人手不足がますます深刻になる。そこで働くために来日した、せっかくの人材である。
19日に行われる看護師国家試験とともに、3月下旬に合格者が発表されるが、有為な人材は追い返すのではなく、できるだけ多く日本に定着させたい。
協定に基づいて2008年度からインドネシア、09年度からはフィリピンから看護師・介護福祉士候補者が、これまでに延べ約1300人来日している。
しかし、日本語による試験が壁となって、これまで700人余りが受験した看護師試験の合格者は、19人しかいない。介護福祉士には3年の実務経験が課されるため、今回が初めての試験である。
候補者たちは、いずれも介護や看護の専門職として働きたいという意欲を持って、日本にやってきた若者である。その思いに応えるためにも、試験の在り方など制度見直しが必要だろう。
私たちの国は、試験に落とすために、かれらを受け入れているのではないはずだ。大半が合格できずに帰国するような状況が続けば、何のために受け入れたのか分からない。
介護や医療の現場で「労働力」として実習をさせたあと、難しい試験を課して不合格なら帰国を強いるというのでは、協定相手国から労働市場の閉鎖性を指摘されるだけではない。国際社会から「使い捨て」と非難されかねない。
そうならないためにも、政府は受け入れの制度と政策を大幅に見直す必要がある。具体的には、日本語が母国語でない外国人の候補者が、日本人受験者に比べて著しく不利にならないような資格試験に改めるべきだ。
候補者は自国では看護師や介護士の資格を持ち、多くは実務経験もある若者たちだ。専門知識を問う試験は英語などで行い、別途行う日本語能力を測る試験と併用してはどうだろうか。
政府は今年から、ベトナムからも候補者を受け入れるという。インドネシア、フィリピンに続き、相手国からの労働市場開放要求によるものではあろうが、日本の看護・介護分野の要員不足を補う側面もあることは否定できない。
15年後には介護や看護の担い手を数十万人単位で増やす必要があるという厚生労働省のデータもある。これを日本人だけで賄うのは難しい。
介護や看護の現場に、アジアの国々の人材を専門職として活用する姿勢は欠かせない。超高齢社会が迫っている日本の時代の要請でもある。