介護疲れから“うつ”に… | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

介護疲れから“うつ”に…

介護疲れから“うつ”に…高齢化社会に潜む“共倒れ”


「超高齢社会」の到来で、高齢者介護は誰にとっても“わがこと”になってきた。しかし、口でいうほど介護は簡単ではない。介護する側はもちろん、される側にとっても、深刻なストレスがのしかかる。

 東京近郊に住むYさん(55)は父親(82)との2人暮らし。日中は精密部品の工場で働き、夜は父親の世話をする毎日。

 父親は1年ほど前に転倒して脚を骨折。以来出かけることもなくなり、急速に痴呆が進んだ。

 父親思いのYさんは熱心に介護をしていた。好きな酒も控えめにして、夜は家で鬱々と過ごすことが多くなっていた。

 そんな彼が蒸発した。仕事帰りに、発作的に家出をしたのだ。最初はすぐに帰るつもりだったので、翌朝には工場に仮病の電話をした。しかし、2日、3日と過ぎるうちに、仕事も父親のこともどうでもよくなった。

 週に2回訪れる訪問介護のヘルパーが訪れたのは、Yさんが家出をした2日後。その間、父親は自分で冷蔵庫の中の物を食べて、水道の水で飢えをしのいでいた。オムツは汚れ、その異臭でヘルパーさんもすぐには部屋に入れなかったという。

 ヘルパーさんの手配で父親は入院したが、Yさんは中部地方のある町で無銭飲食をして警察の世話になるまでの2週間、行方をくらましたままだった。家出の理由は「ただ疲れたから」。所持金は数百円だった。

 「介護疲れのストレスから“うつ”になる人が増えている」と話すのは、東京・恵比寿にある在宅医療専門医院「えびす英クリニック」の松尾英男院長。Yさんのように「逃避」する人もいれば、知らず知らずのうちにイライラしたり、虐待やネグレクト(介護放棄)してしまう人もいるという。

 「一生懸命に頑張る性格の人が陥りやすい。『自分の家族の面倒は自分が見なければ』と強く思うあまり、手を抜けずに疲れきって、最後には“共倒れ”になってしまう」

 Yさんも「うつ」だった。仕事は休職となり、父親は介護施設に入った。

 「心療内科の敷居を高く感じる人もいるが、自分のうつ状態に気付かない人もいる。介護する側のストレス対策は喫緊の課題です」(松尾院長)

 長生きするのも大変な時代なのだ。(長田昭二)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120208/dms1202080859007-n1.htm