外国人介護士 門戸があまりに狭い | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

外国人介護士 門戸があまりに狭い

外国人介護士 門戸があまりに狭い


日本は、インドネシア、フィリピンとの経済連携協定(EPA)に基づき、2008年から介護福祉士と看護師の候補者を受け入れている。このうち介護士の候補者が1月末、初めての国家試験に挑んだ。

 先に始まっている看護師試験の合格率は低い。10年は1%、昨年も4%にとどまる。日本人を含めた受験者全体は92%。あまりに差が大きい。

 介護士試験は、日本人でも半数が落ちるほどの難関である。EPA枠からの合格は簡単ではない。

 候補者たちは、母国で看護師などの資格を備えている。高い実務能力と献身的な姿勢に、日本の介護、医療の現場での評価も高い。なのに合格できない。

 主な原因は、試験の日本語の壁が高すぎることだ。厚生労働省は試験の実施のあり方について、見直しを急いでほしい。

 協定では、候補者の在留期間は介護士が4年、看護師が3年。この間に試験に受かれば国内で働き続けることができる。

 ただし介護士試験には、3年以上の実務経験が要る。受験は原則、4年目に一発勝負。受からなければ帰国という厳しさだ。

 政府は昨年春、試験で成績がよかった人については、希望すれば在留期間を1年延ばすことを決めた。だが看護師候補者の場合、受験勉強疲れなどで、延長を望まず帰国する人が相次いでいる。新たに来日する人も減っている。

 受験の前に、十分に日本語の習得や国家試験の勉強をできる環境が保障されなくてはいけない。

 候補者たちは来日後、施設や病院で働きながら勉強を続けている。本人と受け入れ先の負担を減らす工夫が要る。在留期間の延長にも柔軟に対応すべきだ。

 厚労省は、試験問題の難しい表現を易しく言い換えたり、難解な漢字にふりがなをつけるなどの配慮をしている。中途半端では効果が半減する。すべての漢字にルビを振ってはどうか。

 2060年には、日本の人口が8600万人台に減り、高齢者が4割を占める―。先ごろこんな推計が出た。将来的に介護や看護の担い手が大量に不足する。

 政府はEPAに基づきベトナムからも候補者を受け入れる考えだ。間口だけ広げて定住のハードルを高くしたままでは、外国人労働者の使い捨てと疑われよう。

 志を抱いて日本に働きに来た人を、失望させ追い返すことにならぬよう、政府は受け入れの環境を整えることに力を注いでほしい。


http://www.shinmai.co.jp/news/20120205/KT120203ETI090015000.html