音楽で高齢者に元気を | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

音楽で高齢者に元気を

演奏グループ「藤建演奏」代表 藤野 正己さん 77 (鳥取市)


県東部や中部の高齢者介護施設やデイサービスセンターなどを回り、ボランティアのミニコンサートで利用者を楽しませる「藤建演奏」。藤野さんの十八番(おはこ)「ハーモニカ5丁吹き」のほか、アコーディオン、ギター、シンセサイザーなどの楽器を駆使し、「茶摘み」などの童謡や美空ひばりの「花笠道中」などの懐メロを披露するグループの活動の経緯や思いを聞いた。


活動のきっかけを教えてください

 

工務店を経営していた2005年、脳梗塞で自宅で倒れ、右半身が不自由になる後遺症を患いました。


仕事も辞めざるを得なくなりましたが「せめて歩けるように」と06年に退院した後、鳥取市内のデイサービスセンターに週3回、リハビリに通いました。そのセンターにボランティアで演奏に来ていたのが、グループでアコーディオンを担当する井上義輝さん(86)とギターを担当する村上兆慶(かずよし)さん(62)です。


2人に演奏の楽しさを教わったのですが、音楽には縁がなく楽譜も読めず、楽器は小学生の頃にハーモニカを吹いた程度。でも気分転換とリハビリの一環になると思い、指先に負担がからないハーモニカとアコーディオンを試してみたら病みつきになりました。


半年もしないうちに楽譜が読めるようになり演奏も日増しに上達。今ではシンセサイザーも弾けるようになり、レパートリーは200曲以上になりました。オリジナル曲の作詞や作曲もしています。


グループとして回っている施設は23か所に上るそうですね

 

デイサービスセンターに通っていて感じたのが、毎日同じことの繰り返しで刺激がないことでした。長時間机にふせたままの人や、会話をせずにふさぎこんでおられる人もいました。「演奏を通じて弱っている人を元気づけられたら」。そんな思いで07年に井上さん、村上さんと3人で活動をするようになりました。

 

最初は知り合いがいる病院など3か所を回る程度でしたが、移動に使った車に「歌おう! 助けよう! 心一筋! デイサービスボランティア車」と記したところ口コミで広まり、演奏依頼が増えていったのです。


メンバーも女性3人と男性1人が加わり、7人になりました。活動は月4回で、23施設を順に回っています。


演奏に合わせて私たちが歌うと聴く人も歌ってくれ、盛り上がりますね。


藤野さんは「ハーモニカ5丁吹き」が得意だそうですね

 

珍しいことをして聴く人を喜ばせたかったのです。


ハーモニカを両手に一つずつ持ち、襟と首の間に一つ、ズボンの前左右に二つはさみ、五つを音を切らさずに交互に吹きます。単純そうに見えますが、息継ぎが難しい。


ハーモニカの種類も曲によって使い分けます。初めて見る人は驚かれますよ。


演奏を聴いた人の反響が励みになるそうですね

 

「待ってるぞ」と言われたり、施設に通う日を振り替えてまで聴きに来てくれる人もいたりして、活動の原動力になります。私自身が今も週2回、デイサービスセンターでリハビリをしているのですが、一人でも多くの人の笑顔を見るために、「生涯現役」のつもりで演奏を続けていきたいですね。(聞き手・進元冴香(しんげんさやか))

 

【トークメモ】 岡山県真庭市出身。地元の高校を卒業し、山口県宇部市で刑務官を務めた後、21歳で帰郷。大工をしていた父親の勧めで大工に。鳥取市内の親戚の家の建て替えを手伝ったの機に同市に移住し、43歳の時に同市叶町に設立した工務店「藤野建築工業」が、グループの名前の由来になった。50歳の頃から米国製大型バイク「ハーレーダビッドソン」に乗り始め、山陰ハーレー会の県東部支部長も務める。演奏の申し込みは藤野さん(090・2296・4945)。

2011年8月29日 読売新聞)