メタボだと認知症になりやすい? | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

メタボだと認知症になりやすい?

各種研究結果でも危険因子の一つ


認知症の原因となる疾患は、アルツハイマー病と脳血管障害型の認知症が大きな割合を占めています。

 このうち、全体の約30%にのぼるとされる脳血管障害型の認知症については、東京都老人総合研究所(現・都健康長寿医療センター)がまとめた「認知症予防・支援マニュアル」も、「高血圧症」「高脂血症」「糖尿病」などの疾患と並び、「肥満」と「運動不足」が主要な危険因子として指摘しています。


脳血管障害型の認知症は、脳の血管が詰まったり出血したりして起きるため、これはある程度予想できるでしょう。

一方、認知症全体の約半分を占めるというアルツハイマー病についても、強い因果関係を疑わせるデータが報告されてきています。

 

フィンランドのクオピオ大学病院で69歳から78歳までの住民計959人を対象に実施した研究によると、内臓脂肪、脂質異常などのメタボリック症候群が認められた人で、同時にアルツハイマー病であると診断されたケースは7.2%にのぼりました。

 

一方、メタボリック症候群ではないものの、アルツハイマー病の症状を呈した人は2.8%にとどまりました。特に女性にこの傾向が強く、8.3%対1.9%の開きがあったということです。


米国などで、より大規模な研究結果が報告されていますが、多くが認知症の原因疾患を区別せずに実施しているのが現状です。

 

この研究で特筆されることは、データの収集に際して、脳血管障害などの認知症患者を研究対象からあらかじめ除外し、アルツハイマー病に焦点をしぼって調査したという点です。


研究結果は、2006年9月号の米神経学専門誌「ニューロロジー」に掲載されました。

 

それでは、いつから体重に注意したらいいのか――。


これについては今春、スウェーデンのカロリンス研究所から興味深い研究が報告されました。

 

「ニューロロジー」の2011年5月号に掲載された論文によると、調査対象者8534人の中年期(平均43.4歳)の身長・体重と、老年期(74.4歳)に入ってからの認知症の発症具合を比較したところ、中年期に過体重(肥満係数BMI25~30)だった人は、正常体重(BMI20~25)だった人の1.71倍、肥満(BMI30以上)だった人は同3.88倍の高率で認知症と診断されたということです。

 

心筋梗塞や脳梗塞ばかりでなく、認知症を予防するためにも、体重管理に早くから注意をする必要があるようです。

第一生命が公募した「サラリーマン川柳」に、「脳トレを やるなら先に 脂肪トレ」という優秀作があります。これはまた、最新の医学的な研究成果を言い当てた警句であるとも言えるでしょう。


(調査研究本部主任研究員 渡辺覚)

<ご参考リンク>
フィンランド・クオピオ大学病院の研究結果概要(英語)は、↓こちらからどうぞ
http://www.neurology.org/content/67/5/843.abstract

スウェーデン・カロリンス研究所の研究結果概要(英語)は、↓こちらからどうぞ
http://www.neurology.org/content/76/18/1568.abstract

読売新聞)