高齢者にも使いやすい電子マネー | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

高齢者にも使いやすい電子マネー

高齢者にも使いやすい電子マネー、地域密着型も登場


商店街でポイント 地元還元

 カードをかざすだけで買い物や電車賃などの支払いができる電子マネー。大都市圏を中心に利用者を伸ばしてきたが、最近は地域限定での発行が目立つ。

 商店街のポイントカード代わりになったり、売り上げの一部を地域に寄付したりと地元密着をうたう。

 長野県佐久市の岩村田本町商店街では、買い物客でにぎわう昼時や夕方になると「ワオーン」という犬の鳴き声に似た電子音が各店内に響く。電子マネーのワオンの利用を知らせる音声だ。

 同商店街は昨年7月、ワオンの発行元の流通大手イオン(千葉市)と提携し、「佐久っ子WAON(ワオン)カード」を発行した。通常のワオンはイオンなどでの買い物200円ごとに1ポイントたまるが、このカードは同商店街加盟店での買い物に限り、独自のポイントを上乗せする。

 同商店街の近くにイオンのショッピングセンターがある。同商店街振興組合理事の細川保英さん(55)は「イオンでも商店街でも使える佐久っ子カードは、両者の共存共栄を目指したものだ。独自ポイントのお得さで、イオンの客を商店街にも呼び込みたい」と話す。「ポイントがたまるので商店街でもスーパーでもワオンで買い物するようになった」と地元の女性客(50)。

 佐久っ子カードには、買い物以外の機能もある。同商店街内の学習塾では、塾内にある端末に子どもたちがカードをかざすと、親の携帯電話にメールが送られる。小学6年生の男児を通わせる40代の主婦は「メールで塾に着いたと確認でき、安心です」と話す。

 イオンは2008年以降、地域限定のワオンカードを相次ぎ発行している。同社広報は「地域貢献が小売店の使命の一つと考え、地域活性化策にカードを活用している」と話す。自治体と提携してカードを発行し、利用額の一部を地域振興に役立ててもらう仕組みもある。千葉県銚子市では、地元ワオンカードの利用により、1年で約210万円が同市の基金に寄付された。

 同様の取り組みは他の電子マネーにも広がる。エディを発行するビットワレット(東京)が今年6月に沖縄県で出したカードは、利用額の一部がプロサッカーチーム、FC琉球の活動支援に充てられる。

 自治体主導で電子マネーを活用する動きも出てきた。東京都杉並区は来年度前半、電子マネーを使った「電子地域通貨事業」を始める予定だ。

 スイカやエディ、ナナコなど既存の電子マネー機能付きカードに、区内の店で使える商品券や買い物ポイント、地域のボランティア活動などに払われる地域通貨などをためられるようにする。

 国立情報学研究所准教授の岡田仁志さんは「広範囲で使える電子マネーを組み合わせた地域カードは、利便性が高い。利用額の一部を寄付などで地域に還元する仕組みも、自分の買い物が地元のためになると、積極的に利用する意識につながる」と評価する。

かざすだけで瞬時に決済

 電子マネーは、キャッシュカードと同じ大きさのカード型が一般的。携帯電話に電子マネー機能を載せた「おサイフケータイ」もある。

 支払い時に、カードや携帯電話を自動改札機や店頭にある読み取り端末にかざすだけで瞬時に決済される。この早さが電子マネーの利点だ。野村総合研究所(東京)上級コンサルタントの安岡寛道さんは「現金のやりとりにまごついてしまう高齢者にも、電子マネーは使いやすい」と話す。

 利用するとポイントがたまる仕組みを導入する例が多く、たまったポイントはまた電子マネーとして使える。

 注意点もある。電子マネーは種々雑多で、それぞれ使える場所や支払い可能額の上限などが異なる。有効期限を過ぎると使えなくなるものもある。

 支払い形式は、事前に入金してから利用する「前払い式」と、使った金額が後日請求される「後払い式」の2種類に大別される。ワオンやエディ、スイカ、ナナコなどはいずれも前払い式だ。

 消費生活評論家の岩田昭男さんは「前払い式電子マネーを少し使っただけで、そのまま存在を忘れてしまう人も多い。どの電子マネーを使い、残高はいくらかということを認識しておいて」と話す。また、「前払い式の一部には、クレジットカードとの連携で自動的に入金する『オートチャージ』という機能がある。この場合、使いすぎに気付かないこともある」と注意する。

 多くの電子マネーは、所有者を登録できる。登録しておけば、カードを紛失した時など、そのカードを利用停止にすることができる。残高を引き継げる場合もあるので、発行会社などに連絡しよう。

 電子マネーの発行企業が経営破綻するリスクもある。その場合、「一定期間内に申し出れば返金されるが、未使用分の全額が戻る保証はない」と、電子マネーの発行企業などが加盟する日本資金決済業協会(東京)は指摘する。

 日本銀行によると、主要8種類の電子マネーの発行総数は、昨年6月で1億3715万枚(携帯電話含む)。国民1人に1枚が行き渡った形だ。

 8種類の電子マネーの決済総額も伸びており、野村総研の予測では、今年度中に2兆円、15年度には3兆円を超える見込みだ=表=。(田渕英治)

2011年7月19日 読売新聞)