理学療法士がリハビリに奮闘 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

理学療法士がリハビリに奮闘

避難生活長期化、体調不良増加 理学療法士がリハビリに奮闘


東日本大震災から4カ月がたった今も、1500人以上が避難所で暮らす岩手県大槌町。長期化する避難生活で体の不調を訴える高齢者が増え、リハビリの必要性が高まっている。町で唯一、デイケアを行う介護老人保健施設「ケアプラザおおつち」は今月に入り、ようやく震災前とほぼ同水準の稼働態勢に戻った。内陸部の仮設住宅への移転も進み、理学療法士らは福祉サービスの充実が、町の再興に欠かせないと考えている。(中村翔樹、写真も)

 ■腰やひざ悪化訴え

 ケアプラザの理学療法士、飯野沙矢佳さん(28)は震災前から担当する高齢女性の歩行訓練に寄り添っていた。女性は今も避難所生活。「体育館の床に寝ているので、ふとんを厚く敷いても固い」といい、元々弱かったひざや腰の状態が悪化していた。

 「ゆっくりでいいからね」「あそこまで行ったら少し休もう」

 施設が本格稼働を始めた5月初旬まではリハビリが中断されたこともあり、「頑張りたいという気持ちがあり過ぎて、セーブしないといけないこともある」と飯野さん。体調は順調に回復し、女性は「顔見知りの人に補助してもらえるのは気が楽」と笑った。

 通所リハビリサービスの利用者は亡くなったり、内陸部に引っ越したりして、震災前の120人から50人に減った。一方で、避難所や在宅避難者の健康状態を調査している町社会福祉協議会は「腰やひざの痛みを訴える人が多くなった実感がある」という。

 震災直後は理学療法士や作業療法士の資格を持ったボランティアにも頼っていたが、社福協は「避難所暮らしが長引くにつれ、ケアプラザの利用者が増える可能性は高い」とみている。

 ■ニーズ拾いきれず

 ケアプラザには医師・看護師11人が常駐し、点滴など簡易な治療設備もある。山間部の小鎚地区で震災被害はなく、直後から福祉避難所として、病傷者の受け入れに追われた。「野戦病院」(山崎元副施設長)と化し、当然、リハビリには手が回らなくなった。

 職員80人のうち40人の自宅が津波で被災し、引っ越しを余儀なくされ、離職した職員も多い。70人まで確保できたのは7月に入ってからで、それに合わせて開業日も週5日に戻った。

 ただ、震災前の利用者の所在はほぼ確認できたが、山崎副施設長は「内陸部に転居している人をバスで送迎するには、距離や安全面に問題がある」と話す。

 町と隣接する釜石市の鵜(うの)住(すま)居(い)地区に住む利用者を迎えに行く場合、高台にあるケアプラザから一度、津波被害を受けた沿岸部を通らないといけない。時間も震災前より余計にかかり、人手不足気味の状況では、足を伸ばしにくい。

 また、約2千棟の仮設住宅への入居も進むが、大半が交通の便が悪い内陸部にある。「利用したい方はいるのに、こちらの問題で迎えに行けない。ニーズはあるが、それを拾いきれないのがもどかしい」。山崎副施設長はこう打ち明ける。

 ■サテライト施設も

 高齢者の居住実態に合わせ、介護・福祉の拠点を移転させる必要がある。

 9日には、約300世帯分の仮設住宅がある和野地区に、1棟10室のグループホーム型の仮設住宅2棟と、介護士やソーシャルワーカーが勤務する高齢者サポートセンターができた。

 仮設住宅の各部屋にはナースコールが完備され、集会所や談話室もある。センターはスロープや手すりを付けたバリアフリーで、食事や入浴などのデイサービスが受けられる。運営する県建築住宅課は「震災弱者の方も安心して暮らせる環境ができた」と話す。

 ケアプラザのある小鎚地区は町内で最も多くの仮設住宅が建つ。施設から最寄りの仮設住宅までは1キロに満たない。リフト付きの専用ワゴン車3台、マイクロバス1台を使えば、利用者の送迎は十分可能だ。

 「仮設住宅の近くに、職員を常駐させたサテライト型のリハビリ施設を設置するという考え方もある。町で唯一のデイケア施設として、できることは何でもしたい」と山崎副施設長。

 今後、社福協など関係機関と相談し、よりきめ細かいリハビリサービスの提供を目指していく。自宅が流され、ケアプラザが借りる釜石市内のアパートから通勤する飯野さんは言う。

 「時間はかかっても、粘り強くリハビリをすれば、状態はきっと良くなる。そういう場所が身近にあることで、高齢者や高齢者を抱える家庭が町に戻ってくる決断ができればうれしい」

     ◇

 県立大槌病院(岩田千尋院長)の仮設診療所が大槌地区の非浸水地域に完成し、6月27日から診療を始めた。同病院は町唯一の総合病院で、3階建ての2階まで津波にのまれ、公民館で内科に限って診療を続けていたが、外科、整形外科、皮膚科、眼科の診療も再開された。

 今月13日には、津波で浸水した大槌北小学校校庭に仮設店舗を建設することを決め、入居する41事業者向けの説明会を開いた。広さ約7500平方メートルの敷地に、2階建てのプレハブ12棟を建設する。10月中旬の営業開始を目指す。

 入居するのは居酒屋や食堂などの飲食店のほか、食料、衣料、家電、理髪などの店舗。町は浸水地域を建設予定地から除外してきたが、交通の利便性の高さから小売業者の間で同小への建設を求める声が根強く、避難路の確保などを条件に方針転換した。


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