回想法 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

回想法

思い出を語り、お年寄りの生きる希望を取り戻そう―。そんな心理療法「回想法」の普及・実践に取り組むグループが、横浜にある。「死にたい」と漏らすお年寄りに笑顔が戻ったり、リハビリへの意欲が向上したりと、効果が表れているという。介護保険だけでは行き届かない「心のケア」に対応するインフォーマルサービスとしても、広がりが期待されている。

グループは「よこはま回想法倶楽部(くらぶ)」。


独立型の社会福祉士事務所を運営する佐々美弥子代表(63)が2007年に設立した。横浜市磯子区を中心に活動、会員は福祉や介護の専門職をはじめとする市民ら計約40人。

対象にするのは、施設や自宅で暮らす高齢者。


地図や写真、遊び道具など記憶を呼び起こす小道具を使いながら、幼少期から学生時代、結婚生活、働き盛りの時代―と、丁寧に思い出をたどっていく。


計8回で「現在」に至るのが基本コースだ。

話したがらないことを無理に聞き出すことはしない。その一方で、昔を懐かしんで「コーヒーが飲みたい」などと望めば次の訪問時に実現するなど、生活に希望を持てる工夫をする。


終了後には、語られた記憶をまとめた「思い出ブック」を作り、手渡している。

実践したメンバーは、効果を実感している。

こんな調査結果がある。2年前、横浜市港南区にある介護老人保健施設でリハビリに対する「自己効力感」の変化を調査したところ、複数で行う「グループ回想法」を受けた通所者7人のうち6人は「リハビリを続ければ、体は動くようになる」と前向きな意識が高まった。


一方、受けなかった通所者は8人中6人が意欲が低下したという。

一対一で行う「個人回想法」もある。重度の難聴で施設で暮らす80代の女性は、七夕の短冊に「早く死にたい」と書くほど生きる意欲を失っていた。だが若いころに打ち込んだ日本舞踊、夫との旅行などを振り返るうち、表情が豊かに。翌年の七夕には「そうめんを食べたい」と短冊にしたためたという。

介護を拒否していた重度の認知症者が介護を受け入れてくれるようになるなど、症状が改善したケースもあった。

佐々代表は「充実していたころの人生を振り返り、自分の存在意義を確認することで、生きる力を回復する」と回想法の効果を強調。


「既存のサービスでは賄えない心理的・社会的ニーズに応えられる」と、高齢者の状態に合わせ、介護サービス計画(ケアプラン)に介護保険以外の「インフォーマルサービス」として盛り込むことを提唱している。


日常のケアにも役立てることが目標だ。

同倶楽部はこうした実践に加え、担い手養成講座も開催。


今年は9月に横浜市保土ケ谷区で開く予定という。料金などの問い合わせは、事務局電話045(842)1797。

◆回想法 

過去の出来事を語ることで、脳を活性化させる心理療法。米国の精神科医、ロバート・バトラー氏が1963年に提唱し、高齢者の認知症の予防や進行抑制、介護予防に効果があるとして注目されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110530-00000028-kana-l14